法人税の計算方法|利益から所得を出す流れ

「決算書の利益に23.2%を掛ければ税額が出ると思っていました」。「税理士から出てきた納税額が、自分の計算と100万円近く違うんです」――法人税の計算について、この2つは本当によくいただくご相談です。

結論からお伝えすると、法人税は課税所得に税率を掛けて計算します。出発点は決算書の利益ですが、そこに加算と減算を重ねて所得を作り直す工程が入るため、利益に税率を掛けただけでは金額が合いません。中小法人であれば年800万円以下の部分は15%、それを超える部分は23.2%です。

税理士法人Light UPでは、法人税の計算でつまずく場所は税率ではなく所得を作るところだと考えています。税率は表を見れば分かりますが、何を加算して何を減算するかは会社ごとに違い、ここを外すと税額が数十万円単位でずれるためです。

この記事では、当期利益から課税所得を出すまでの4段階と、税率の当てはめ方、法人税に上乗せされる住民税・事業税まで含めた総額を、実際の数字を最後まで追って整理します。中小企業の申告を代行している立場から、自分で計算するときにつまずきやすい点もあわせてお伝えします。

法人税は「課税所得×税率」で計算する

結論: 法人税額は、課税所得に税率を掛けて計算します。課税所得とは決算書の当期利益そのものではなく、税法のルールで作り直した金額です。この2つを混同すると計算が合いません。

「利益=所得」と思われがちですが、実際は別のものです。決算書は会社の経営成績を株主や銀行に伝えるために作り、税務の所得は税金を公平に計算するために作ります。目的が違うので、同じ支出でも扱いが変わるのです。

会計の利益と税務の所得は一致せず、計算は4段階を踏む

e-Gov 法令検索で法人税法22条1項を引くと、所得の定義は「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする」と書かれています。収益・費用ではなく、益金・損金という別の言葉が使われている点に、両者が違うものだという前提が表れています。

たとえば交際費を1,000万円使った会社があるとします。決算書ではそのまま1,000万円の費用です。しかし資本金1億円以下の法人が損金にできるのは年800万円までなので、超えた200万円は損金になりません。この差額が「加算」として所得に戻ってくるわけです。

段階を分けると、①決算を締めて当期利益を出す ②加算・減算で課税所得を出す ③税率を掛けて法人税額を出す ④税額控除を引いて納付額を確定させる、という流れになります。

このうち手間の8割は②に集中します。税率を掛ける作業そのものは数分で終わるのです。

別表四と別表一が計算書になる

②を行う様式が別表四、③④を行う様式が別表一です。別表四は「所得の金額の計算に関する明細書」という名前のとおり、当期利益を起点に加算欄と減算欄を積み上げて所得金額にたどり着く一覧表になっています。

別表四は、決算書に貼る税務用の付箋のようなものです。決算書そのものは書き換えず、「この費用は税務では認めません」「この収益は数えません」という付箋を積み重ねて、最後に所得という別の数字を出す。決算書と申告書が別々に存在するのは、このためです。

申告書を見たときに、どこで何をしているか分からなくなったら、まず別表四の一番上(当期利益)と一番下(所得金額)を見比べてみてください。その差額が調整の合計です。

段階1:決算を締めて当期利益を確定させる

結論: 法人税の計算は、決算整理を終えた当期利益から始まります。減価償却・棚卸・未払計上といった決算整理が残っていると、所得の計算に入っても数字が動き続けるため、先に決算を締め切ることが前提になります。

ここでひとつ、実務でよく混乱が起きる点があります。別表四の起点は税引後の当期純利益です。法人税等を計上した後の利益から始めて、損金にならない法人税等を加算し直す構造になっています。

つまり「法人税を計算するには当期純利益が要る/当期純利益を出すには法人税額が要る」という循環が起きるわけです。実務では税引前の利益で仮計算し、確定した税額を納税充当金として計上して締める、という順で処理します。

在庫の棚卸、減価償却費の計上、経過勘定の整理、貸倒引当金の見直し。これらが残ったまま所得の計算に入ると、後から利益が変わって全部やり直しになります。

決算月の翌月に「まだ請求書が届いていない仕入がある」と分かって数字が動く、というのはよくある話です。

税抜経理か税込経理かで当期利益の額は変わります。税込経理では、納付する消費税額が租税公課として費用になるためです。どちらでも最終的な税負担が大きく変わるわけではありませんが、期中で方式を混ぜないことが前提になります。

会計の利益と税務の所得はどこがずれるか
決算書の当期利益
会社の経営成績を示す数字
交際費も役員賞与も費用として全額が引かれている
受取配当金は全額が収益
株主・銀行・取引先に見せる数字
税務の課税所得
税額を計算するための数字
交際費や役員給与は損金にならない部分がある
受取配当金は一部が益金にならない
税務署に申告する数字

段階2:加算と減算で課税所得を出す

結論: 課税所得は、当期利益に「損金にならない費用」を加算し、「益金にならない収益」を減算して求めます。加算が多いほど所得は増え、税額も増える構造です。

前の期に加算した項目が翌期に減算で戻ってくる(認容)ケースもあり、単年度だけを見ていると数字の意味が分からなくなります。ここは前期の申告書と並べて見るのが早道です。

加算する主なものと、減算する主なもの

加算と減算は、会計の利益を税務の所得に組み替える作業です。会計では費用でも税務では損金にならないものを足し戻し、会計では収益でも税務では益金にしないものを差し引きます。どちらも申告書の別表四で行います。

加算する項目 内容
法人税・住民税 損金にならないため全額を戻す
交際費等の損金不算入額 定額控除限度額を超えた部分
減価償却超過額 償却限度額を超えて計上した部分
役員給与の損金不算入額 定期同額給与などの形に合わない部分
各種引当金の繰入超過額 税法の限度額を超えた部分
罰金・過怠税 交通反則金、延滞税、加算税など

減算側は数が少なく、受取配当等の益金不算入、前期に加算した減価償却超過額の当期認容、還付された法人税等が中心です。加算に比べて減算は少ないため、多くの会社では課税所得が当期利益を上回ります。

「今期は利益が出ていないのに税金が出た」というご相談の多くは、この非対称に理由があります。

交際費は800万円の枠がある

租税特別措置法61条の4第2項では、資本金1億円以下の法人が使える定額控除限度額を「八百万円に当該適用年度の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額」と定めています。年800万円までは損金にでき、超えた部分が加算対象です。

なお、1人あたり10,000円以下の飲食費は、一定の記載要件を満たせばそもそも交際費等から除かれます。ここを分けずに全部を交際費で集計していると、枠を無駄に使うことになります。

役員給与と減価償却は、形や限度額を外れた分が加算される

役員給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかの形に当てはまらないと損金になりません。期の途中で増額した部分や、届出のない賞与がここで加算されます。

税務上の償却限度額を超えて償却費を計上した場合、その超過額は当期の損金になりません。逆に限度額より少なく計上しても、その差額を税務上で追加することはできない仕組みです。

段階3:課税所得に税率を掛ける

結論: 中小法人の法人税率は、課税所得のうち年800万円以下の部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です。所得が800万円を挟むかどうかで、実質的な負担率が変わります。

中小法人は年800万円で税率が分かれる

所得の区分 資本金1億円以下の普通法人 それ以外の普通法人
年800万円以下の部分 15%(本則19%の軽減) 23.2%
年800万円を超える部分 23.2% 23.2%
所得10億円超の事業年度の800万円以下部分 17% 23.2%

本則の税率は法人税法66条1項で23.2%と定められ、資本金1億円以下の法人の年800万円以下の部分は同条2項で19%とされています。この19%を引き下げているのが租税特別措置法42条の3の2で、同条の表には「百分の十五(所得の金額が年十億円を超える事業年度については、百分の十七)」と書かれています。適用されるのは令和9年3月31日までに開始する事業年度です。

800万円の枠は月割りになる

法人税法66条4項は、事業年度が1年に満たない法人について「八百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」と読み替えると定めています。設立初年度が6か月なら枠は400万円です。

設立1期目を短くした会社が、想定より税額が大きくなって驚かれることがあります。原因はたいていここです。

軽減税率の対象外になる法人がある

資本金1億円以下であれば必ず15%が使えるわけではありません。対象外となるのは、次のいずれかに当てはまる法人です。

  • 前3事業年度の所得金額の平均が年15億円を超える法人(適用除外事業者)
  • 資本金5億円以上の大法人に完全支配されている法人
  • 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人
  • 保険業法に規定する相互会社
  • 通算法人(グループ通算制度を適用している法人)

このうち実務で当たるのは上2つです。資本金は1億円以下でも、親会社の規模で判定される点は見落とされやすく、グループ会社の申告を引き継いだときにまず確認する項目になります。

対象から外れるわけではありませんが、所得が年10億円を超える事業年度は、年800万円以下の部分の税率が15%ではなく17%になります。租税特別措置法42条の3の2の表に「百分の十五(所得の金額が年十億円を超える事業年度については、百分の十七)」と定められた区分で、資本金ではなく所得の水準で判定します。適用除外事業者の判定が前3事業年度の平均で見るのに対し、こちらはその事業年度の所得で決まる点が違います。

どの税率が使えるかの判定
課税所得が確定した。適用される法人税率はどれか
資本金1億円超
全額に23.2%。軽減税率の対象にならない
資本金1億円以下・通常の中小法人
年800万円以下は15%、超過部分は23.2%
前3期の平均所得が15億円超
適用除外事業者。年800万円以下も19%となり15%は使えない
資本金5億円以上の法人の完全子会社
軽減税率の対象外。全額に23.2%
法人税の基礎の判断に迷っていませんか。実際の数字を見ながらお答えします。初回のご相談は無料です。

段階4:税額控除を差し引いて納付額を出す

結論: 法人税額が出たら、そこから税額控除を差し引いて納付する額が決まります。所得を減らす「所得控除」と、税額そのものを減らす「税額控除」は別のものです。

所得税額控除と、中小企業向けの投資減税

預金利息や配当金から源泉徴収された所得税は、法人税の前払いという扱いになります。別表六で集計し、法人税額から差し引く仕組みです。金額は小さいものの、申告しなければ戻ってきません

設備投資に関する特例の多くは、特別償却(所得を減らす)と税額控除(税額を減らす)の選択制になっています。利益が出ている年度なら税額控除、翌期以降に利益を寄せたいなら特別償却、という判断です。

控除しきれないときの扱い

税額控除には「法人税額の20%まで」といった上限が設けられているものが多く、控除しきれない額が出ることがあります。制度によっては1年間の繰越しが認められています。

赤字の年に設備を買っても税額控除が使えないのは、この構造のためです。

繰越しができる制度と、できない制度があります。使えるかどうかは制度ごとに定められているため、控除しきれない見込みが立った時点で、その年の申告書にどこまで書いておく必要があるかを確かめておくことです。

法人税だけでは終わらない――上乗せされる税金

結論: 会社が納めるのは法人税だけではありません。法人税額を基礎とする地方法人税と法人住民税、所得を基礎とする法人事業税と特別法人事業税が同時に発生します。

税目 課税の基礎 標準的な税率 納め先
地方法人税 法人税額 10.3% 国(税務署)
法人住民税 法人税割 法人税額 7.0% 都道府県・市町村
法人住民税 均等割 資本金等・従業者数 年7万円〜 都道府県・市町村
法人事業税 所得割 課税所得 3.5%/5.3%/7.0% 都道府県
特別法人事業税 事業税の所得割額 37% 都道府県(国税)

地方法人税は法人税額の10.3%、法人住民税は均等割と法人税割

法人税額が確定すれば自動的に決まります。法人税の申告書のなかで一緒に計算し、税務署に納めます。

税率が固定されている国税に対して、地方税は区分ごとに計算の形が変わります。

法人税割は法人税額に連動しますが、均等割は所得に関係なく発生します。資本金1,000万円以下・従業者50人以下の会社であれば、標準税率で年7万円が目安です。

法人事業税と、令和8年4月からの防衛特別法人税

資本金1億円以下の普通法人であれば、所得を課税標準とする所得割だけがかかります。標準税率は年400万円以下が3.5%、400万円超800万円以下が5.3%、800万円超が7.0%です。ただし自治体の条例で超過税率が定められている場合があります。

事業税と特別法人事業税は、翌期の損金になります。この点で法人税・住民税とは扱いが異なります。

令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、防衛特別法人税が加わります。基準法人税額から年500万円を控除した額に4%を掛ける仕組みのため、法人税額が500万円以下であれば税額は生じません。ただし税額がゼロでも申告は必要です。

法人税額が決まると自動的に動く4つの税
01
地方法人税
法人税額の10.3%。法人税と一緒に税務署へ申告・納付する
02
法人住民税
法人税割は法人税額に連動。均等割は赤字でも年7万円程度が発生する
03
法人事業税
所得に対して3.5%から7.0%。翌期の損金になる点が他と違う
04
特別法人事業税
事業税の所得割額に37%。国税だが都道府県へ事業税とあわせて納める

数字を追って最後まで計算してみる

結論: 課税所得1,070万円の中小法人であれば、法人税・地方法人税・住民税・事業税を合わせた税額はおよそ295万円になります。税引前利益に対する割合は約29.5%です。

前提を置いて、課税所得を出す

3月決算・資本金500万円・従業者6名の株式会社を想定します。税引前当期利益は1,000万円、税額控除の適用はないものとします。地方税は標準税率で計算します。

加算は、交際費等の損金不算入額60万円と減価償却超過額40万円で合計100万円。減算は、受取配当等の益金不算入20万円と前期償却超過額の当期認容10万円で合計30万円です。

1,000万円 + 100万円 − 30万円 = 課税所得1,070万円

法人税額と地方法人税を出し、地方税まで足す

800万円 × 15% = 120万円。(1,070万円 − 800万円)× 23.2% = 62万6,400円。合わせて法人税額182万6,400円です。

地方法人税は 182万6,400円 × 10.3% = 18万8,100円(百円未満切捨)。

住民税の法人税割は 182万6,400円 × 7.0% = 12万7,800円。均等割は7万円。

事業税の所得割は、400万円×3.5%=14万円、400万円×5.3%=21万2,000円、270万円×7.0%=18万9,000円で合計54万1,000円。特別法人事業税は 54万1,000円 × 37% = 20万100円です。

すべてを合計すると295万3,400円。税引前利益1,000万円に対して29.5%、課税所得1,070万円に対して27.6%という水準になります。

この数字をどう使うか

大まかな見立てとしては、中小企業の税負担は所得のおよそ3割と覚えておくと資金計画が立てやすくなります。ただし所得が800万円を大きく超えると税率の高い部分が増え、割合は上がっていきます。

試算の値は、納税資金をいつまでにいくら積むかという計画にそのまま使えます。決算日の2か月後が納付の期限ですから、月々の積立額はそこから逆算できます。着地の見込みが動いたら、この数字も更新することになります。

赤字の年はどう計算するか

結論: 課税所得がマイナスであれば法人税は発生しません。ただし法人住民税の均等割は所得に関係なく課されるため、赤字でも納税額はゼロになりません。

「赤字なら申告しなくていい」と考えてしまう方がいらっしゃいますが、これは逆です。申告を出さないと欠損金を繰り越せなくなります。

法人税法57条1項では、欠損金の繰越しについて「内国法人の各事業年度開始の日前十年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額」を損金に算入できると定めています。今期の赤字を、翌期以降10年間の黒字と相殺できる仕組みです。

大法人では控除できる額が所得の50%までに制限されますが、資本金1億円以下の中小法人等については所得の全額まで控除できます。赤字が続いた後の黒字転換期に、この差は大きく表れます。

欠損金の繰越しは、欠損が生じた事業年度に青色申告書を提出し、その後も連続して申告書を出していることが要件です。1年でも申告を飛ばすと繰越しが切れます。

黒字の年と赤字の年で何が変わるか
課税所得がプラスの年
法人税・地方法人税・住民税法人税割・事業税がすべて発生する
税額控除や特別償却を使える
過去の欠損金があれば相殺できる
納税額は所得のおよそ3割
課税所得がマイナスの年
法人税・地方法人税・住民税法人税割・事業税は発生しない
税額控除は使えず、繰越しできる制度は限られる
欠損金を10年間繰り越せる(青色申告が条件)
住民税の均等割は発生する

計算した税額はいつ納めるのか

結論: 法人税の申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。3月決算の会社なら5月31日が期限になります。

期限は事業年度終了から2か月以内。中間申告があると前払いになる

法人税・地方法人税・消費税・法人住民税・法人事業税が、ほぼ同じ時期に集中します。この2か月のあいだに決算を締め、申告書を作り、納税資金を用意することになります。

前期の法人税額が20万円を超えた会社は、期の途中で中間申告が必要です。前期実績を基に納める方法(予定申告)と、半期で仮決算を組む方法のどちらかを選びます。

納税資金は決算の前から積んでおく

税額が確定してから資金を探すと間に合いません。私たちは、四半期ごとに概算の所得を出して必要な納税額を先に別口座へ寄せておくやり方をお勧めしています。手順にすると次のようになります。

  1. 四半期ごとに試算表を締める:3か月分の利益を確定させる。精度は粗くて構わない
  2. 年換算して所得を見込む:3か月の利益を4倍し、大きな加算項目があれば足す
  3. 3割を納税用口座へ移す:見込所得の3割から、すでに積んだ額を引いた差額を移す
  4. 決算2か月前に精度を上げる:ここで初めて加算・減算を丁寧に洗い、不足があれば手当てする

大がかりに見えますが、四半期ごとの作業は30分程度です。決算月に資金を探し回る手間と比べれば、はるかに軽い負担で済みます。

課税所得1,070万円から納付額が決まるまで
1

課税所得を確定する
税引前利益1,000万円に加算100万円・減算30万円を反映して1,070万円
2

法人税額を出す
800万円×15%=120万円、270万円×23.2%=62万6,400円で合計182万6,400円
3

国税の上乗せを出す
地方法人税は法人税額の10.3%で18万8,100円
4

地方税を出す
住民税12万7,800円+均等割7万円、事業税54万1,000円+特別法人事業税20万100円
5

総額を確認する
合計295万3,400円。税引前利益に対して約29.5%

自分で計算するときにつまずく5つの点

結論: 自社で法人税を試算する場合につまずくのは、税率の当てはめではなく、所得を作る過程と地方税の見落としです。実務で多い5つを挙げます。

税引前利益から始めてしまう/交際費の集計が科目任せになっている

別表四の起点は税引後の当期純利益です。税引前から始めると、法人税等の加算を二重に処理してしまいます。

出発点を間違えるのと同じくらい多いのが、集計の取り方の誤りです。科目の名前だけで判断していると、枠の計算がずれます。

交際費勘定に入っている金額と、税務上の交際費等は一致しません。会議費や福利厚生費に紛れているものを拾い、逆に1人1万円以下の飲食費を除く作業が要ります。

未払計上した経費、特例の適用要件、地方税の見落とし

決算間際に発注しただけの費用は、役務の提供が終わっていなければ損金になりません。法人税法22条3項2号が「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないもの」を除いているためです。

中小企業向けの特例には、資本金・従業員数・平均所得といった要件が付いています。「中小企業だから使えるはず」で試算すると、後から使えないことが分かります。

法人税だけを見て納税資金を用意すると、実際には1.6倍前後の資金が要ることになります。ご相談のなかでも、これがいちばん資金繰りに響く見落としです。

試算がずれる5つの入り口
01
出発点の取り違え
別表四は税引後の当期純利益から始まる。税引前から始めると法人税等を二重に扱う
02
交際費の集計漏れ
勘定科目と税務上の交際費等は別。会議費や福利厚生費に紛れた分を拾う必要がある
03
債務未確定の経費
発注しただけでは損金にならない。役務の提供が終わっているかで判断する
04
特例の要件未確認
資本金・従業員数・平均所得の要件がある。中小企業なら必ず使えるわけではない
05
地方税の見落とし
法人税だけで資金を組むと足りない。総額は法人税額の1.6倍前後になる

事例:試算どおりにいかなかった1期目の会社

「自分で計算したら納税は120万円くらいのはずでした。それが結局300万円近くになって、資金が回らなくなりました」。設立1期目のサービス業の経営者からいただいたご相談です。

数字を並べ直すと、ずれた原因は3つに分かれました。ひとつは事業年度が8か月だったこと。軽減税率の枠が800万円ではなく533万円になっていました。ふたつめは、期の途中で役員報酬を増額した分が損金にならず、加算されていたこと。みっつめは地方税をまったく見込んでいなかったことです。

このときお伝えしたのは、税率よりも先に枠と形を確認するという順番でした。設立初年度の月数、役員報酬の決議時期、そして地方税を含めた総額。この3つを押さえるだけで、試算の精度はかなり上がります。

2期目からは、四半期ごとに概算所得を出して納税額を別に寄せる運用に切り替えました。決算月に慌てて資金を探す状況からは抜けています。

よくある質問

決算書の利益に23.2%を掛ければ、だいたいの税額は分かりますか?
大きくずれる可能性があります。中小法人は年800万円以下の部分が15%であること、加算・減算で所得が動くこと、住民税と事業税が別に発生することの3つが反映されないためです。ざっくりつかむなら、税引前利益のおよそ3割を目安にされるほうが実態に近くなります。
課税所得は1円単位で計算するのですか?
課税所得は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨てます。国税通則法に定められた端数処理です。試算の段階では気にしなくて構いませんが、申告書上の数字と自分の計算がわずかに違う場合、この端数が理由であることが多いです。
赤字なら申告しなくてもいいですか?
申告は必要です。法人税額がゼロでも、法人住民税の均等割は発生します。加えて、申告書を連続して提出していることが欠損金を繰り越す条件になっているため、1年でも飛ばすと繰越しが切れます。
設立1期目でも軽減税率の800万円は使えますか?
使えますが、事業年度の月数に応じて按分されます。設立から決算までが6か月であれば400万円、8か月であれば約533万円が枠になります。設立初年度を短く設定した会社ほど、想定より税額が大きくなりやすい点にご注意ください。
会計ソフトが出した税額をそのまま信じてよいですか?
加算・減算の入力が正しければ、計算そのものは正確です。問題は入力側にあります。交際費の区分、役員給与の形、償却限度額の判定は人が判断する部分なので、そこが誤っていればソフトも誤った金額を出します。判断が絡む項目は税理士にご確認ください。
納税資金はどのくらい見ておけばよいですか?
所得の3割前後を目安に置く会社が多いです。消費税の納付が別にあるため、それを含めると資金の山はさらに大きくなります。四半期ごとに概算を出して別口座に寄せておく方法が現実的です。詳細は個別の事情によりますので、ご相談ください。

まとめ:所得を出すところまでが計算の8割

  • 法人税は課税所得に税率を掛けて計算する。決算書の利益とは別の数字
  • 加算は減算より項目が多く、多くの会社で課税所得は当期利益を上回る
  • 中小法人の税率は年800万円以下が15%、超過部分が23.2%。枠は月割りになる
  • 法人税額が決まると地方法人税・住民税・事業税が連動し、総額は1.6倍前後になる
  • 赤字でも均等割は発生し、申告を出さないと欠損金を繰り越せない

最後にひとつ。税率を先に調べる方は多いのですが、優先順位としては加算項目の把握が先です。税率は誰が計算しても同じですが、加算する項目は会社ごとに違い、ここで数十万円の差がつきます。

そして、自分で試算するのは意味のある作業です。数字が合わなかったとしても、どこがずれたかを見れば、自社の税務上の弱点がそのまま見えてきます。

税理士法人Light UPでは、決算・申告と月次の記帳をあわせてお引き受けしています。加算になりそうな支出を期中のうちに把握しておく方法も含めて、無料相談で一緒に整理するところからお手伝いします。

法人税の基礎のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • e-Gov 法令検索「法人税法」(第22条・第57条・第66条・第74条)
  • e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(第42条の3の2・第61条の4)
  • 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」
  • 国税庁 タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
  • 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。地方税の税率は自治体の条例により標準税率と異なる場合があります。個別の適用については税理士にご確認ください。

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