源泉徴収税額表の見方|甲欄と乙欄の使い分け
「新しく入った人はどの欄で引けばいいのでしょうか」。「賞与のときだけ計算が合いません」――源泉徴収税額表についてのご相談は、この2つに集まります。
結論からお伝えすると、どの欄を使うかは給与所得者の扶養控除等申告書が出ているかどうかで決まります。提出があれば甲欄、なければ乙欄です。そして表そのものも3つに分かれており、毎月払いなら月額表、毎日払いなら日額表、賞与なら賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表を使います。表の選択と欄の選択は別の判断だということです。
税理士法人Light UPでは、源泉徴収のご相談を受けたとき、申告書の提出状況を先に確認するようにしています。欄を間違えると税額が大きく変わり、年末調整の対象になるかどうかまで変わってくるためです。
この記事では、3つの表の使い分け、甲欄と乙欄と丙欄が分かれる根拠、支給期が月でない場合の調整、賞与の計算、そして間違えやすい場面までを、実際に中小企業の給与と申告を扱っている立場から整理します。
表は3つあり、支給の形で選ぶものが決まる
結論: 源泉徴収税額表は月額表、日額表、賞与の算出率の表の3つに分かれます。所得税法の別表第二から第四に定められており、どれを使うかは給与の支給期と種類で決まります。
月額表を使う場面
給与の支給期が毎月と定められている場合は月額表を使います。所得税法185条1項1号イは、この場合に用いる税額を「別表第二の甲欄に掲げる税額」と定めています。もっとも一般的な形で、多くの会社がこの表を使うことになります。表は社会保険料等を控除した後の金額を縦軸、扶養親族等の数を横軸にして税額を読み取る構造になっています。縦軸の金額が総支給額ではない点は、最初につまずきやすいところです。
日額表を使う場面
支給期が毎日と定められている場合は日額表を使います。また、支給期が月でも日でもない不規則な場合も、日額表の税額に支給日数を掛けて計算します。所得税法185条1項1号ヘがこの取扱いを定めています。日払いのアルバイトや、短期の応援を頼んだ場合などが該当します。日額表には甲欄、乙欄に加えて丙欄があり、この丙欄は月額表には存在しません。
賞与は専用の表で率を求める
賞与については、別表第四の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表を使います。この表からは税額ではなく率が求まり、その率を賞与の金額に掛けて税額を出します。率を決める基準になるのは、その賞与ではなく前月中に支払った通常の給与等の金額です。ここが月額表や日額表と決定的に違う点で、賞与だけ計算が合わないというご相談の多くはこの構造の理解から始まります。3つの表の違いを並べると次のようになります。
| 表 | 条文 | 使う場面 | 表から読み取るもの |
|---|---|---|---|
| 月額表 | 別表第二 | 支給期が毎月、半月、旬、月の整数倍 | 税額 |
| 日額表 | 別表第三 | 支給期が毎日、または不規則な場合 | 税額 |
| 賞与の算出率の表 | 別表第四 | 賞与を支払う場合 | 率(税額ではない) |
甲欄と乙欄は申告書の提出で分かれる
結論: 給与所得者の扶養控除等申告書を提出している人は甲欄、提出していない人は乙欄です。本人の希望や雇用形態ではなく、申告書が出ているかどうかという事実で決まります。
条文が定めている区分
e-Gov 法令検索で所得税法185条1項を引くと、1号が「給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者に対し、その提出の際に経由した給与等の支払者が支払う給与等」とされ、この場合に甲欄を使うと定められています。2号は「前号及び次号に掲げる給与等以外の給与等」で、こちらが乙欄です。正社員かパートかといった区分は条文に登場しません。申告書を出しているかどうかだけが基準だということです。
申告書は主たる給与の支払者にだけ出せる
所得税法194条1項は、この申告書を「その給与等の支払者(その支払者が二以上ある場合には、主たる給与等の支払者)から毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに」提出すると定めています。掛け持ちで働いている人は、主たる勤務先1か所にしか出せません。したがって副業先では乙欄になります。年の途中で入社した人については、最初の給与の支払日の前日までに提出を受けることになります。
乙欄は税額が高くなる
乙欄の税額は甲欄より高く設定されています。これは、その勤務先での給与だけでは1年間の所得が確定しないためで、多めに徴収しておいて確定申告で精算するという考え方によります。乙欄が適用される人は年末調整の対象にならないため、本人が確定申告をしない限り精算されません。この点は入社時に伝えておくと、後の行き違いが減ります。
丙欄が使えるのは労働した日ごとに支払う給与
結論: 丙欄は日額表にだけあり、適用できる範囲が条文で限定されています。日雇いという言葉から連想する範囲より狭く、支払いの形が要件になっています。
条文が定める要件
所得税法185条1項3号は、丙欄の対象を「労働した日又は時間によつて算定され、かつ、労働した日ごとに支払を受ける給与等で政令で定めるもの」と定めています。2つの条件が並んでおり、日給や時給で計算されているだけでは足りず、労働した日ごとに支払われていることが必要です。月末にまとめて支払っている場合は、日給制であっても丙欄は使えません。
継続して雇う場合は対象から外れる
丙欄は臨時の雇用を前提とした取扱いです。同じ人を継続して雇い、2か月を超えて働いてもらう場合は、丙欄の対象から外れます。人手が足りない時期に来てもらった方をそのまま雇い続けているうちに、要件を満たさなくなっているという例は少なくありません。支払いの都度、要件を満たしているかを確認する運用にしておくと、後からまとめて訂正することを避けられます。
支給期が月でも日でもない場合の調整
結論: 給与の支給期が半月ごと、旬ごと、あるいは2か月ごとといった場合も、月額表を使って調整する方法が条文で定められています。専用の表があるわけではありません。
半月なら2分の1、旬なら3分の1
所得税法185条1項1号は、支給期が毎半月と定められている場合を「別表第二の甲欄に掲げる税額の二分の一に相当する税額」、毎旬の場合を「三分の一に相当する税額」と定めています。このとき表に当てはめる金額は、半月なら2倍、旬なら3倍した金額です。つまり月額に換算してから表を引き、求めた税額を元の期間に戻すという順序になります。逆の順序で計算すると税額が変わってしまいます。
月の整数倍ならその倍数を掛ける
2か月ごとや3か月ごとに支払う場合は、月割額を表に当てはめて求めた税額に、その倍数を掛けます。この場合も月額に直してから表を引くという考え方は同じです。まず月額に直す、次に表を引く、最後に期間に戻すという3段階で覚えておくと、どの支給形態でも同じ手順で処理できます。役員報酬を年に数回まとめて支払っている場合や、業務委託から雇用へ切り替えた直後で支給の周期が整っていない場合も、この手順に当てはめれば処理できます。支給期ごとの扱いを整理すると次のとおりです。
| 支給期 | 表に当てはめる金額 | 求めた税額の調整 |
|---|---|---|
| 毎月 | その月の金額 | 調整なし |
| 毎半月 | 金額の2倍 | 2分の1にする |
| 毎旬 | 金額の3倍 | 3分の1にする |
| 月の整数倍 | 月割額 | その倍数を掛ける |
| 毎日 | その日の金額(日額表) | 調整なし |
| 上記以外 | 日割額(日額表) | 支給日数を掛ける |
賞与は前月の給与から率を求める
結論: 賞与の源泉徴収税額は、前月に支払った通常の給与の金額と扶養親族等の数から率を求め、その率を賞与の金額に掛けて計算します。賞与の金額そのものから率が決まるのではありません。
前月の給与が基準になる理由
所得税法186条1項1号イは、賞与の税額を「前月中に支払つた又は支払うべき通常の給与等の金額……に応じ別表第四の甲欄により求めた率をその賞与の金額に乗じて計算した金額に相当する税額」と定めています。年間の所得水準を推定する基準として、直前の月給を使うという設計です。したがって、前月に昇給があった人と据え置きだった人では、同じ額の賞与でも率が変わります。
前月に給与がない場合の計算
前月に通常の給与を支払っていない場合は、別の方法によります。所得税法186条1項1号ロは、賞与の金額の6分の1(計算の基礎となった期間が6月を超える場合は12分の1)に相当する金額を月額表に当てはめて税額を求め、それに6(または12)を掛けると定めています。入社直後の人に賞与を支払う場合などが該当します。率を使わず月額表に戻るという点で、通常の計算とは手順が変わります。
賞与が前月給与の10倍を超えるとき
見落とされやすいのが所得税法186条2項です。賞与の金額が前月中に支払った通常の給与の金額の10倍を超えるときは、率による計算ではなく、賞与の6分の1と通常の給与の合計額から求めた税額と、通常の給与だけから求めた税額との差額に6を掛けるという計算になります。月給が低く賞与が大きい役員や、決算賞与を出した場合に該当することがあります。率で計算すると税額が低くなりすぎるため、条文で別の計算が定められているということです。
扶養親族等の数は申告書の記載から数える
結論: 甲欄で使う扶養親族等の数は、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の数です。同居している家族の人数とも、健康保険の被扶養者の人数とも一致しません。
所得の要件があるため人数が一致しない
所得税法194条1項は、申告書に記載する事項として源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の氏名を挙げています。いずれも所得の要件が定められており、要件を満たさない家族は記載されません。共働きで配偶者に一定以上の所得がある場合、同居していても源泉控除対象配偶者にはなりません。家族構成を聞いて数えるのではなく、申告書の記載を数えるという手順にしておけば、この種の誤りは避けられます。
障害者やひとり親に該当する場合は加算する
本人や家族が障害者に該当する場合、寡婦またはひとり親に該当する場合、勤労学生に該当する場合は、扶養親族等の数に一定の人数を加算して税額表を引きます。所得税法187条がこの取扱いを定めています。加算を忘れると税額が実際より高くなり、年末調整で還付される形になります。申告書の該当欄に記載があるかを毎年確認する運用にしておくと、変化があった年にも対応できます。
数え方を確かめるタイミング
扶養親族等の数は年の途中でも変わります。子が生まれた、家族の所得が増えた、同居していた親が別居した。いずれも申告書の出し直しが必要です。会社としては、年末調整の書類を配るときに前年の記載を見てもらうのが最も効率的ですが、それだけでは年の前半の変化に対応できません。変化があったら申告書を出し直してもらうことを、入社時に伝えておく形が実務的です。
年末調整の対象になるかどうかも欄で決まる
結論: 年末調整の対象になるのは甲欄が適用されている人に限られます。乙欄の人は対象外で、精算は本人の確定申告によることになります。
乙欄の人は会社では精算されない
乙欄が適用されるのは、扶養控除等申告書の提出がない人です。その勤務先での給与だけでは1年間の所得が確定しないため、年末調整の対象になりません。副業として働いている方や、短期で来ていただいた方がこれに当たります。会社としては、源泉徴収票を交付するところまでが役割で、精算は本人が確定申告で行います。入社時にこの点を伝えていないと、年末に説明が必要になるため、あらかじめ案内しておくと行き違いが減ります。
年の途中で欄が変わった場合
年の途中で扶養控除等申告書が提出された場合、その提出以後は甲欄になります。提出前の期間について乙欄で徴収した分は、年末調整で通算して精算されます。逆に、主たる勤務先が変わって申告書を撤回した場合は、以後は乙欄です。あわせて、退職した人にその後支払う給与がある場合も乙欄になる点は見落とされやすい部分です。
表を使わずに計算する方法もある
結論: 給与計算ソフトの多くは税額表を1行ずつ参照しているわけではなく、電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する特例によって算式で求めています。手計算の結果とわずかに違う場合があるのはこのためです。
算式による計算が認められている
月額表の甲欄を使う場合に限り、所得税法施行令に定められた算式によって税額を計算することが認められています。給与計算ソフトはこの方法を使うことが多く、表を引いた結果と数十円程度ずれることがあります。どちらも正しい方法なので、ずれ自体が誤りではありません。ただし同じ会社の中で両方の方法を混ぜないほうが、年末調整のときの確認が楽になります。
手計算での確認が要る場面
ソフトを使っていても、乙欄の人、日額表を使う人、賞与が前月給与の10倍を超える人については、設定が正しく反映されているかを確認しておく価値があります。これらは件数が少ないぶん設定漏れに気づきにくく、年末調整や法定調書の作成時に初めて表面化することがあります。年に一度、対象者を洗い出して確認する時間を取っておくと安心です。
間違えやすい5つの場面
結論: 税額表の適用で起きる誤りは、欄の選択、当てはめる金額、扶養親族等の数え方、賞与の基準、そして年の途中の変更に集中します。いずれも仕組みを知っていれば避けられるものです。
表に当てはめる金額を間違える
月額表に当てはめるのは、総支給額ではなく社会保険料等を控除した後の金額です。加えて、非課税となる通勤手当は総支給額から除いておく必要があります。この2つの調整をせずに総支給額のまま表を引くと、税額が実際より高く出ます。給与明細の項目が多い会社ほど、どこまでを含めるかの確認が要ります。とくに現物給与や食事の補助のように、課税されるかどうかの判定が要る項目がある場合は、判定を先に済ませてから表を引く順序にしておく必要があります。
扶養親族等の数え方を間違える
甲欄で使う扶養親族等の数は、扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の数です。所得の要件があるため、同居している家族の人数とは一致しません。障害者や寡婦、ひとり親に該当する場合は、その分だけ数に加算する扱いもあります。申告書の記載を数えるという原則を守れば、多くの誤りは防げます。
年の途中の変更に対応し忘れる
扶養親族が増えた、配偶者の所得が変わった、副業を始めて主たる勤務先が変わった。こうした変更があれば、申告書を出し直してもらう必要があります。変更が反映されないまま年末を迎えると、年末調整でまとめて精算することになり、その月の手取りが大きく動きます。あわせて、退職者に対してその後に支払う給与があれば、乙欄に切り替わる点も確認が要ります。
事例:賞与だけ税額が合わなかった建設業の会社
従業員24名の建設業の会社から、賞与の源泉徴収についてご相談をいただきました。決算賞与を支給したところ、計算した税額と税務署から示された額が合わないという内容です。
確認すると、対象になっていたのは代表の方でした。役員報酬を月額20万円に抑えており、決算賞与として300万円を支給していました。
前月の給与の10倍を、賞与が大きく上回っていました。
この場合は所得税法186条2項が適用され、率による通常の計算ではなく、賞与の6分の1と月給の合計額から求めた税額と、月給だけから求めた税額の差額に6を掛ける方法になります。給与計算ソフトの設定では通常の計算方法が選ばれていたため、差が生じていました。
対応として、当期分は正しい方法で計算し直して差額を納付し、ソフト側は10倍を超える場合を判定する設定に変更しました。あわせて、役員賞与を出す年は事前に該当するかを確認する手順を、決算のチェックリストに加えています。
よくある質問
扶養控除等申告書を出していない人はどうなりますか?
日給で払っていれば丙欄を使えますか?
表に当てはめるのは総支給額ですか?
賞与の率はどこから決まりますか?
給与計算ソフトと手計算で税額が違うのはなぜですか?
まとめ:表の選択と欄の選択は別の判断
源泉徴収税額表を正しく使うには、2つの判断を順に行います。1つめはどの表を使うかで、これは支給期と給与の種類で決まります。毎月払いなら月額表、毎日払いなら日額表、賞与なら別表第四です。2つめはどの欄を使うかで、これは扶養控除等申告書が出ているかどうかで決まります。
この2つを混同すると、正社員だから甲欄、アルバイトだから乙欄といった雇用形態による判断になってしまいます。条文が基準にしているのは申告書の提出という事実だけです。
賞与については、率を決めるのが前月の通常の給与であることと、前月給与の10倍を超える場合に別の計算方法があることを押さえておけば、大きな誤りは避けられます。役員賞与や決算賞与を出す年は、支給の前に確認しておく価値があります。
税理士法人Light UPでは、給与計算と源泉徴収に関するご相談を承っています。判定に迷う方がいらっしゃる場合や、過去の処理を確認したい場合も、お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「所得税法」(昭和四十年法律第三十三号)第183条、第185条、第186条、第194条、別表第二から別表第四
- e-Gov 法令検索「所得税法施行令」(昭和四十年政令第九十六号)
- 国税庁「源泉徴収税額表」




