労働保険料の勘定科目|概算と確定の処理

「6月にまとめて払った労働保険料を、全部その月の費用にしていいのでしょうか」。「従業員から毎月引いている雇用保険料と、年に1回払う金額が全然合いません」――労働保険料の相談は、この2つに集中します。

労働保険料は、会社負担分を法定福利費、従業員負担分を預り金または立替金に分けて処理します。そして税務上の損金にできる時期は、法人税基本通達9-3-3により、概算保険料を納付した日または申告書を提出した日の属する事業年度です。

税理士法人Light UPでは、労働保険料の処理でつまずくのは仕訳の形より社会保険料と同じルールだと思い込んでいることだと考えています。健康保険料や厚生年金保険料は月末基準で未払計上できますが、労働保険料は考え方が違います。

この記事では、使う科目の切り分け、概算保険料の3通りの処理、税務上の損金算入時期、毎月の給与控除との関係、決算をまたぐ残高の見方、そして仕訳の具体例までを、記帳と申告を代行している立場から整理します。

労働保険料は法定福利費と預り金に分かれる

結論: 労働保険料の処理で使う科目は、会社負担分の法定福利費と、従業員負担分の預り金または立替金です。労災保険料は全額が会社負担なので、分ける必要がありません。

誰が負担するかで科目が変わる。令和8年度の雇用保険料率

内訳 負担する人 使う科目
労災保険料 全額が会社 法定福利費
雇用保険料(事業主負担分) 会社 法定福利費
雇用保険料(労働者負担分) 従業員 預り金または立替金
一般拠出金 全額が会社 法定福利費

負担の割合が保険ごとに違うので、納付書の合計額だけを見ても科目は決まりません。申告書の内訳から労災分と雇用分を分けて拾うのが出発点になります。

「納付書の金額をそのまま法定福利費に入れていました」というお声は本当に多いです。金額としては大きく外れないので、何年も気づかれないまま続いていることがあります。

厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」による一般の事業の率は、労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000、合計13.5/1,000です。事業主負担が労働者負担より大きいのは、事業主だけが負担する雇用保険二事業の分(3.5/1,000)が上乗せされているためです。

折半になる健康保険や厚生年金とは違うので、給与ソフトの設定を流用すると合わなくなります。

労災保険料は全額が会社負担。一般拠出金も会社負担

労災保険料は従業員から控除しません。業種ごとに率が違い、事務所であれば3/1,000ほど、建設業や金属鉱業では大きく上がります。

給与明細に労災保険の項目がないのは、そもそも控除するものがないからです。

労働保険料と一緒に納めるものに、石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金があります。厚生労働省は対象について「労災保険適用事業主の全事業主が対象です」とし、料率を「一般拠出金率は1000分の0.02です」と示しています。

金額は小さいのですが、労働保険料とは別の制度です。納付書の合計額を法定福利費に一括で入れてしまうと、内訳が追えなくなります。

概算保険料を納めたときの処理は3通りある

結論: 概算保険料を納めた時点の処理には、全額を法定福利費にする方法、前払費用で受けて配分する方法、会社負担分と従業員負担分を分ける方法の3通りがあります。どれを選んでも構いませんが、毎年同じ方法を続けます。

概算保険料を納めてから精算するまでの流れ
1

6月に概算保険料を納める
当年度4月から翌年3月までの見込み額をまとめて前払いする。40万円以上なら3回に分けられる
2

毎月の給与で雇用保険料を控除する
従業員から預かる分は、6月に納めた金額の中にすでに含まれている。控除のたびに前払分と相殺していく
3

翌年6月に確定額が出る
実際の賃金総額で計算し直し、前年に納めた概算額との差を精算する
4

差額を処理する
不足していれば追加で納め、多すぎれば還付を請求するか翌年度の概算保険料に充てる

全額を法定福利費にする方法と、前払費用で受けて配分する方法

納めた金額をそのまま法定福利費に計上する方法です。従業員負担分も含めて費用にしてしまうため、毎月の給与控除で預り金が貸方に積み上がります。

決算で預り金の残高を見て、法定福利費から差し引く形になります。仕訳の本数は少なく済みますが、期中の法定福利費が実態より大きく出ます。

納めた金額をいったん前払費用に計上し、月々12分の1ずつ法定福利費へ振り替える方法です。月次の人件費が実態に近くなるので、月次決算をしている会社に向いています。

12回の振替仕訳が増えるのが手間ですが、会計ソフトの自動仕訳で回せます。

会社負担分と従業員負担分を分ける方法と、3つの方法の比較

納付の時点で、会社負担分を法定福利費、従業員負担分を立替金に振り分ける方法です。従業員から控除するたびに立替金を減らしていくので、立替金の残高を見れば、あと何か月分を預かれば元が取れるかが分かります

法人税基本通達9-3-3の考え方にいちばん近いのがこの形です。

処理方法 期中の手間 月次の人件費の見え方 向いている会社
全額を法定福利費 仕訳1本で済む 6月に費用が跳ね、以降は控除分だけ動く 従業員10人未満・月次決算をしていない
前払費用で受けて配分 毎月の振替が12本 実態に近い形でならされる 月次決算をしている・人件費率を見ている
会社負担分と従業員負担分を分ける 納付時に2行、控除時に相殺 実態に近く、残高の意味も分かる 人の出入りが多い・残高を管理したい

概算保険料は、年間パスを先に買って毎月使っていくのに近い性質です。買った月に全額を費用にするか、使った月ごとに割り振るか。会計の考え方としては、この選択と同じものになります。

選ぶ目安と、変えるなら期首から

従業員が10人に満たない会社なら、全額を法定福利費にする方法で足ります。月次で人件費を管理している会社や、従業員数が期中に大きく動く会社は、3番目の方法が扱いやすいでしょう。

「前の担当者がどうしていたのか分からないまま、去年と同じにしています」というご相談もよくいただきます。方法そのものより、引き継ぎで途切れていることのほうが問題になります。

いちばんまずいのは、年によって方法を変えることです。前期の残高が何を意味しているか分からなくなります。

処理方法を見直す会社もあります。その場合、期の途中で切り替えると残高が意味を失うので、期首から変えます。

前期末の前払費用や立替金の残高を、新しい方法でどう引き継ぐかを先に決めておきます。

税務上の損金算入時期は納付ベースで決まる

結論: 労働保険料の損金算入時期は、法人税基本通達9-3-3に定められています。概算保険料のうち会社が負担すべき部分は、申告書を提出した日または納付した日の属する事業年度の損金になります。

労働保険料は、金額の性質ごとに損金・益金にする時期が分かれる
概算保険料のうち被保険者が負担すべき部分
立替金等として処理する。労災保険料は全額が事業主負担なので、実際には雇用保険料の従業員負担分。会社の費用ではないので損金にならない
概算保険料のうちその他の部分
申告書を提出した日、または納付した日の属する事業年度の損金
確定保険料の不足額(会社負担部分)
申告書を提出した日または納付した日の事業年度の損金。ただし事業年度末までに終了した保険年度の分は、提出前でも未払金に計上できる
確定保険料の超過額
会社が負担した概算保険料に係る部分は、申告書を提出した日の属する事業年度の益金

通達が定める3つの扱いと、被保険者負担部分は立替金等

法人税基本通達9-3-3は、概算保険料について「概算保険料の額のうち、被保険者が負担すべき部分の金額は立替金等とし、その他の部分の金額は当該概算保険料に係る同法第15条第1項に規定する申告書を提出した日(同条第3項に規定する決定に係る金額については、その決定のあった日)又はこれを納付した日の属する事業年度の損金の額に算入する」と定めています。

前払費用で受けて期間配分する方法をとっている会社でも、税務上は納付した年度に損金にできる、という意味です。会計処理と税務処理をそろえるなら、納付時に費用化する方法が素直でしょう。

同じ通達が、従業員から預かる部分を立替金等と明示しています。給与から控除する前に会社が先に納めているので、立替という表現になります。

飲み会の会費を幹事がまとめて払い、あとから1人ずつ集めるのと同じ関係だと考えてください。幹事が払った時点では、その全額が幹事の飲食代になるわけではありません。

法定福利費に混ぜると、人件費の実額が分からなくなるだけでなく、損金にならないものを損金に入れた状態になります。

不足額は申告書の提出前でも未払金にできる。超過額は提出した日の益金

決算期と保険年度がずれる会社に関係する取り扱いです。通達は不足額について、「当該事業年度終了の日以前に終了した保険年度に係る確定保険料について生じた不足額のうち当該法人が負担すべき部分の金額については、当該申告書の提出前であっても、これを未払金に計上することができるものとする」としています。

3月決算の会社を例にとります。保険年度も3月で終わるので、決算日の時点で確定保険料の不足額は計算できます。申告書の提出は6月ですが、決算で未払金に計上して損金にできる、という扱いです。

概算が多すぎた場合の超過額は、申告書を提出した日の属する事業年度の益金になります。決算で見越して収益に計上する取り扱いは、通達に用意されていません。

不足額は前倒しでき、超過額は前倒しできない。左右が対称になっていない点に注意します。

社会保険料とはルールが違う

結論: 健康保険料と厚生年金保険料は、保険料の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金になります。納付基準の労働保険料とは考え方が違います。

3月決算の会社で、決算日にどこまで費用にできるか
健康保険料・厚生年金保険料
3月分の保険料は3月末を含む事業年度の損金
納付は4月末だが、決算で未払計上する
根拠は法基通9-3-2
会社負担部分だけが対象
労働保険料
概算保険料は納付した日または申告書を提出した日の事業年度の損金
確定保険料の不足額だけは、申告書の提出前でも未払金に計上できる
根拠は法基通9-3-3
被保険者負担部分は立替金等で、損金にならない

社会保険料は月末基準。混同すると決算の数字が動く

法人税基本通達9-3-2は、健康保険法155条または厚生年金保険法81条により徴収される保険料等について、法人が負担すべき部分の金額を「当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」としています。

3月分の社会保険料は4月末に納めますが、3月末を含む事業年度の損金です。決算で未払費用に計上する処理が、この通達に沿った形になります。

社会保険料と同じつもりで、労働保険料も月割りで未払計上している会社があります。月次の人件費を見るための処理としては構いませんが、申告の段階では通達の扱いに寄せる必要があります。

従業員30名ほどの会社でも、労働保険料は年間で100万円前後になります。処理の違いが1期分まるごと動くと、決算の見え方が変わります。

どちらも従業員負担分は費用でない

共通するのは、従業員から預かる部分が会社の費用ではないという点です。社会保険料の折半分も、雇用保険料の労働者負担分も、預かって納めているだけです。

人件費の総額を見るときは、法定福利費に会社負担分だけが入っているかを確認するところから始めます。

預り金か立替金で受けて、精算します。会社の費用になるのは、会社が負担する分だけです。

勘定科目・仕訳の判断に迷っていませんか。実際の数字を見ながらお答えします。初回のご相談は無料です。

毎月の給与から控除する側の処理

結論: 雇用保険料は、毎月の賃金総額に労働者負担の率を掛けて控除します。社会保険料のように標準報酬月額を使わないため、賃金が動けば控除額も毎月動きます。

給与計算で雇用保険料を控除するまで
1

その月の賃金総額を出す
基本給・各種手当・通勤手当・残業代を含む。通勤手当は所得税では非課税でも、雇用保険では賃金に入る
2

労働者負担の率を掛ける
令和8年度の一般の事業なら5/1,000。標準報酬月額は使わず、実際の支給額に掛ける
3

端数を処理する
50銭以下は切り捨て、50銭超は切り上げが原則。給与から控除する場合の扱いで、労使の慣習があればそれによる
4

預り金または立替金で受ける
概算保険料をどう処理したかによって、貸方に立てる科目が変わる。納付時の処理と対で決める

標準報酬月額を使わない。通勤手当の扱いが所得税と逆になる

社会保険料は標準報酬月額に率を掛けるので、月々の支給額が変わっても控除額は変わりません。雇用保険料はその月の実際の賃金に率を掛けるため、残業が多い月は控除額も増えます。

給与ソフトの設定を社会保険と同じにしていると、この違いを吸収できません。

通勤手当は、所得税では限度額まで非課税ですが、雇用保険では賃金に含めて計算します。ここは毎年のように相談をいただく箇所です。

「非課税の手当なのだから、保険料の対象からも外れると思っていました」というお声を、実際によくいただきます。同じ手当なのに制度ごとに扱いが分かれるので、直感に反するのは無理もありません。

年度更新の賃金総額でも同じ扱いなので、給与データを作る段階でそろえておきます。

対象になる人の範囲も社会保険と違う。預り金と立替金の使い分け

雇用保険料を控除するのは被保険者だけです。週の所定労働時間が20時間に満たない人や、代表取締役などの役員は、原則として対象になりません。

一方、労災保険は雇っている人すべてが対象です。控除しないので給与計算には出てきませんが、年度更新の賃金総額を作るときに人数の範囲が変わります。同じ賃金台帳から、労災用と雇用用の2つの合計を作ることになります。

概算保険料を全額法定福利費にした会社は、控除額を預り金の貸方に立てます。会社負担分と従業員負担分を分けた会社は、立替金の貸方を減らしていきます。

どちらでも構いませんが、納付時と控除時の処理を対にすることが大事です。片方だけ変えると残高が意味を失います。

控除額は本人に知らせる

労働保険の保険料の徴収等に関する法律32条は、事業主が被保険者負担分を賃金から控除した場合に、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に知らせなければならないと定めています。

給与明細に雇用保険料の欄があれば、通常はこれを満たします。

給与明細に記載する形が一般的です。法律上の義務でもあります。

決算をまたぐときの残高の見方

結論: 労働保険料の残高が合わなくなるのは、前期の処理方法を確認せずに当期だけを見たときです。前払費用・立替金・預り金のどこに残っているかを先に押さえます。

決算月ごとに、決算日の残高が何を意味するか
01
3月決算の会社
保険年度と事業年度が一致する。前年6月に納めた概算保険料は、決算日でほぼ使い切っている。確定保険料の不足額は未払金に計上できる
02
12月決算の会社
保険年度の途中で決算を迎える。前払費用で処理していれば、1月から3月の3か月分が残高として残る
03
9月決算の会社
6月に納めた概算保険料のうち、10月から翌3月の6か月分が残る。ちょうど半分が残高になる
04
期中に人員が大きく増えた会社
概算保険料の見込みより実際の賃金総額が大きくなる。翌年の確定精算で不足額が出るため、決算で未払金に計上するかを検討する

残高が合わないときの探し方。預り金の残高が積み上がっている場合

最初に見るのは前期の仕訳です。概算保険料を納めた仕訳で、借方が法定福利費なのか前払費用なのか立替金なのかを確認します。

次に、毎月の給与仕訳で従業員負担分をどこに立てているかを見ます。この2つが対になっていない場合、残高が積み上がったり、逆にマイナスになったりします。

概算保険料を全額法定福利費にしているのに、給与控除で預り金を積んでいると、決算まで預り金が増え続けます。これ自体は誤りではなく、決算で法定福利費と相殺すれば整理できます。

放置して数年が経つと、どの年度の分が残っているか分からなくなります。使わない引き出しに領収書をためこむのと同じで、中身を思い出せるうちに整理しておくほうが早く済みます。

年に1度は残高を洗い出しておく価値があります。

立替金がマイナスになっている場合

従業員負担分を立替金で処理している会社で、控除額の合計が納付時に計上した立替金を超えると、貸方残になります。期中に人が増えた年に起きやすい現象です。

翌年の確定精算で不足額を納めることになるので、決算では未払金への振替を検討します。

控除した額より納めた額のほうが多い状態です。年度更新の精算で戻るのが通常ですが、戻らないなら計算の誤りを疑います。

一般拠出金と事務組合の会費

結論: 一般拠出金には概算納付の仕組みがなく、確定分だけを納めます。労働保険事務組合に委託している場合の会費は、労働保険料とは別の費用です。

一般拠出金は概算がない。労働保険事務組合の会費

労働保険料は概算で前払いして翌年に精算しますが、一般拠出金は確定分だけを納めます。前年度の賃金総額に1000分の0.02を掛けた額を、確定保険料と一緒に申告・納付します。

前払いの仕組みがないので、前払費用で受ける処理も要りません。納付した年度の法定福利費として処理します。

労働保険事務組合に手続きを委託している会社では、労働保険料とは別に会費が発生します。これは委託に対する対価なので、支払手数料や諸会費で処理します。

法定福利費に混ぜると、人件費の内訳が実態からずれます。

消費税はどちらも不課税

労働保険料も一般拠出金も、法令に基づいて国に納めるものなので消費税の課税対象になりません。課税仕入れにならないため、仕入税額控除もできません。

一方、事務組合の会費は、その内容によって課税仕入れになる場合があります。同じ納付書や請求書に載っていても、区分が違う点に注意します。

会計ソフトの税区分を課税で固定していると誤ります。

仕訳の具体例

結論: 概算納付・毎月の控除・確定精算の3つの場面で仕訳を押さえれば、労働保険料の処理はひととおり回ります。ここでは会社負担分と従業員負担分を分ける方法で示します。

概算保険料60万円のうち、従業員負担分が20万円だった場合
6月に納付したとき
法定福利費40万円と立替金20万円を借方に立て、貸方は普通預金60万円
毎月の給与で控除したとき
給与から控除した雇用保険料を、貸方の立替金として減らしていく
翌年6月に不足額が出たとき
会社負担部分の不足額を法定福利費に追加する。3月決算なら決算で未払金に計上できる
翌年6月に超過額が出たとき
会社が負担した部分の超過額は、申告書を提出した日の事業年度の益金になる

概算保険料を納めたとき、毎月の給与で控除したとき

概算保険料60万円(会社負担40万円・従業員負担20万円)を納付した場合です。

  • 法定福利費 400,000/普通預金 600,000
  • 立替金 200,000/

給与30万円から雇用保険料1,500円を控除した場合です。

  • 給与手当 300,000/普通預金 285,000
  • /立替金 1,500
  • /預り金(源泉所得税・社会保険料)13,500

立替金の残高が、毎月1,500円ずつ減っていきます。

確定して不足額が出たとき、確定して超過額が出たとき

確定保険料が65万円で、5万円の不足が出た場合です。会社負担部分が3万3,000円だったとします。

  • 法定福利費 33,000/普通預金 50,000
  • 立替金 17,000/

不足額のうち従業員負担部分は、この後の給与控除で回収します。

確定保険料が55万円で、5万円の超過が出た場合です。還付を請求するなら未収入金、翌年度に充てるなら前払費用で受けます。

  • 未収入金 50,000/法定福利費 33,000
  • /立替金 17,000

超過額の会社負担部分は、申告書を提出した日の事業年度の益金です。決算で見越して計上する処理は通達に用意されていません。

事例:預り金の残高が5年分たまっていた会社

「決算のたびに預り金の残高が増えていて、何が入っているのか分からなくなりました」。従業員25名の運送会社から、こんなご相談をいただきました。

帳簿を見ると、概算保険料は全額を法定福利費で処理し、毎月の給与控除は預り金の貸方に立てていました。決算で相殺する手当てをしていなかったため、5年分の控除額がそのまま積み上がっていたのです。

まず取りかかったのは、過去5期分の給与控除額を年度ごとに集計することでした。給与ソフトから雇用保険料の年間合計を取り出し、預り金の増加額と突き合わせています。

次に、各年度の納付額のうち従業員負担分がいくらだったかを、申告書の控えから拾い直しました。ここで、料率改定のあった年に給与ソフトの設定が古いままだった月が見つかっています。

3つ目は、処理方法そのものの変更です。翌期首から、納付時に会社負担分と従業員負担分を分ける方法へ切り替えました。立替金の残高を見れば、あと何か月分を控除すれば足りるかが分かる形にしています。

整理を終えたあとの決算では、預り金の残高が当月控除分だけになりました。前期までの過大な法定福利費も、正しい金額に直っています。

よくある質問

6月に払った労働保険料を、その月の費用に全額入れてしまって大丈夫でしょうか?
会社が負担すべき部分については差し支えありません。法人税基本通達9-3-3が、概算保険料のうち被保険者負担部分以外を、申告書を提出した日または納付した日の属する事業年度の損金にできると定めています。ただし従業員負担分は立替金等になるので、その部分は費用に入れられません。
3月決算です。確定保険料の不足額を決算で未払計上できますか?
できます。通達は、事業年度終了の日以前に終了した保険年度に係る確定保険料の不足額のうち会社が負担すべき部分について、申告書の提出前であっても未払金に計上できるとしています。逆に超過額を決算で見越す取り扱いは用意されていません。
前払費用で処理する方法と、納付時に全額費用にする方法では、どちらが正しいのでしょうか?
どちらも認められます。月次で人件費を管理したい会社は前払費用、手数を減らしたい会社は納付時費用が向いています。年によって方法を変えないことのほうが、選び方より大事です。
労働保険料に消費税はかかりますか?
かかりません。法令に基づいて国に納めるものなので、課税の対象外です。一般拠出金も同じ扱いです。ただし労働保険事務組合の会費は、内容によって課税仕入れになる場合があります。
雇用保険料の控除額に1円未満の端数が出た場合は、どう処理しますか?
被保険者負担分を賃金から控除する場合、50銭以下は切り捨て、50銭を超えるときは切り上げるのが原則の取り扱いです。労使の間に慣習がある場合は、その慣習によることもできます。

まとめ:納付時と控除時を対で決める

労働保険料の処理でいちばん大切なのは、納付したときの仕訳と、毎月の給与で控除したときの仕訳を対にすることです。片方だけを見て決めると、残高が意味を持たなくなります。

優先順位を付けるなら、先に手を打つのは処理方法の統一です。3通りのどれを使うかを決め、それを毎年続ける。この1点だけで、決算期の確認作業がほとんど消えます。

やらなくてよいこともあります。月次で12分の1ずつ振り替える処理は、月次決算をしていない会社には要りません。納付した月に費用化して差し支えないことは、通達に書かれています。

次の一歩として、預り金と立替金の残高を1度だけ洗い出してみてください。当月控除分より大きい残高が乗っている会社は、過去の年度の分が積み上がっています。

決算をまたぐ処理や、過去の残高の整理でお困りの場合は、税理士にご相談ください。税理士法人Light UPでは、給与データの作り方から会計処理まで、会社ごとの実情に合わせて整理しています。

勘定科目・仕訳のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • 国税庁 法人税基本通達 9-3-2「社会保険料の損金算入の時期」
  • 国税庁 法人税基本通達 9-3-3「労働保険料の損金算入の時期等」
  • 厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」
  • 厚生労働省「石綿健康被害救済法に基づく一般拠出金の徴収制度について」
  • e-Gov法令検索「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」第15条・第19条・第32条

【メタディスクリプション】
労働保険料の勘定科目を、会社負担分の法定福利費と従業員負担分の立替金・預り金に分けて整理しました。概算保険料の3通りの処理、法人税基本通達9-3-3が定める損金算入時期、社会保険料との違い、仕訳例まで解説します。

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