非常勤役員の報酬相場とは?経費にできる金額の決め方を解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

非常勤役員の報酬に、法令で決まった相場や上限の金額はありません。税務の判断は、その役員が担う職務の内容に対して、支払う金額が見合っているかで決まります。見合っていれば、毎月同額で払うなどの決まりを守る限り、法人税の計算で経費にあたる金額(損金)に入れられます。見合っていない部分は、損金の額に算入できません。この記事では、金額を決めるときの4つの物差し、決め方でよくある間違い、毎月払いと年1回払いの違い、家族を役員にする場合、決議と議事録、源泉徴収と社会保険の確認点を、国税庁の通達と法令の条文(2026年10月時点)に沿って整理します。

非常勤役員の報酬に相場はある?

結論: 非常勤役員だけに通用する金額の基準は、法令にありません。税務は、役員の職務の内容、会社の収益、従業員の給与の状況、同業で同規模の会社の水準の4つに照らして、相当な金額かを見ます。

判断の4つの物差し

法人税法34条2項は、役員に払う給与のうち不相当に高額な部分を、損金の額に算入しないと定めています。何が不相当かは、法人税法施行令70条1号イが決めています。役員の職務の内容、会社の収益、従業員の給与の状況、同種の事業を営む同規模の法人の役員の給与の状況に照らして、職務の対価として相当な金額を超える部分です。条文は常勤か非常勤かで物差しを分けていません。非常勤役員にも、常勤役員と同じ4つが当たります。

物差し 見る内容 非常勤役員で用意するもの
役員の職務の内容 何を担当し、どの判断に関わるか 職務を書いた文書(委任契約書・職務分掌)
会社の収益 利益や売上の規模に対して報酬が重くないか 決算書
従業員の給与の状況 従業員の給与の水準と釣り合うか 賃金台帳
同業で同規模の会社の水準 似た会社の役員が受ける金額 同じ職務を外部の専門家に頼んだ場合の見積もり

他社の金額をそのまま使えない理由

他社の金額を聞いて、それに合わせようとする方がいます。他社の金額は、職務や会社の規模が違えば、そのまま当てはまりません。中小企業は同業他社の役員報酬が公開されないため、4つ目の物差しは、同じ職務を外部に頼んだ場合の費用で代わりに測るのが実務の見方です。

職務から金額を積み上げる

金額は、職務から積み上げます。たとえば、月1回の経営会議に出席し、新商品について随時助言する役員がいるとします(説明用の金額です)。同じ内容を外部の専門家に顧問として頼むと、月8万円の見積もりだったとします。常勤役員の報酬が月80万円で、非常勤役員の職務量が常勤の1割ほどなら、月8万円前後です。2つの数字が近くなれば、月8万円は説明がつきます。

非常勤役員の報酬を決める順番
1

職務を文書にする
何を担当し、どの判断に関わるかを具体的に書く
2

関わる頻度と時間を決める
月に何回、どの会議に出て、どんな助言をするかを決める
3

2つの数字を比べる
同じ職務を外部に頼んだ場合の費用と、常勤役員の報酬に対する職務量の割合を並べる
4

株主総会で決議する
金額と職務の内容を議事録に残す
5

毎月同額で払う
出社の回数に応じて変えない

非常勤役員の報酬の決め方でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、職務の実体がない役員への支払い、年1回のまとめ払い、出社の回数で毎月の額を変えること、社会保険の見落としの4つです。どれも、損金の額に算入できない金額が出ます。

家族を役員にして報酬を払い始めたものの、何をしてもらっているかを書いた物がない、と気づいて相談に来られる方が少なくありません。

職務の実体がない役員への支払い

名前だけの役員に払った報酬は、職務の対価になりません。法人税法施行令70条1号イの相当な金額は、職務がなければゼロに近づき、支払った金額の全体が、損金の額に算入できない部分になり得ます。例外は、実際に担っている職務がある場合で、その職務に見合う金額までは損金の額に算入できます。見られるのは、役員という肩書ではなく、実際に何をしていたかです。担当した内容の記録がないと、説明ができません。

年1回のまとめ払い

非常勤役員に、年俸を年1回か年2回の決まった時期に払う方法は、定期同額給与に当たりません。毎月の額を基礎に計算した年俸でも同じです(法人税基本通達9-2-12)。損金の額に算入するには、毎月払いに改めるか、事前確定届出給与として払います。

事前確定届出給与にする場合、同族会社は税務署への届出が必要です。同族会社に当たるのは、株主の3人以下とその親族などの持株合計が、発行済株式の50%を超える会社です(法人税法2条10号)。家族で経営している会社の多くが当たります。同族会社でない法人が、定期給与を払っていない役員に金銭で払う場合は、届出が要りません(法人税法34条1項2号イ、法人税基本通達9-2-12の注)。

出社した回数で毎月の額を変える

月によって出社の回数が違うからと、報酬の額を変える会社があります。定期同額給与は、事業年度の各支給時期の支給額が同額であることが要件です。出社の回数に応じて変えると、要件を満たしません。金額を変えられるのは、事業年度の開始から3か月以内の改定、役員の地位や職務の重大な変更があったとき、経営の状況が著しく悪化したときの減額の3つに限られます(国税庁タックスアンサーNo.5211)。

社会保険の加入を報酬の額だけで決める

非常勤だから、月の報酬が少ないから、社会保険は要らない、と決めている会社があります。日本年金機構の疑義照会回答は、法人の代表者について、定期的な出勤がないことだけで被保険者の資格がないとはならない、低い報酬額だけで資格を喪失させるのは妥当でない、と示しています。役員の判断は、法人の経営に参画する労務を経常的に提供しているか、報酬がその対価として経常的に払われているかで決まります。

税理士が確認する順番

見直しを頼まれたとき、税理士は次の順で見ます。

  • 職務を書いた文書があるか。なければ、実際の担当内容を聞き取って文書にする
  • 給与台帳で、毎月同額か、年1回のまとめ払いかを見る
  • 株主総会の決議の日付と議事録があるか。決議の日が事業年度の開始から3か月以内かを見る
  • 家族経営の会社なら、同族会社に当たるかを確かめ、年1回払いの届出書を出しているかを見る
  • 出勤や役員会への出席の記録から、社会保険の加入が要る実態かを見る

職務を書いた文書、直近の決算書、役員への支払いの一覧、株主総会の議事録をお持ちいただければ、報酬が職務に見合っているか、支払い方が要件に合っているかを一緒に確かめます。

役員報酬は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

毎月払いと年1回払い、どちらがよい?

結論: 職務が1年を通じて続くなら、毎月同額の定期同額給与です。関与が年に数回なら、事前確定届出給与で決まった時期に払います。

2つの払い方の違い

非常勤役員への2つの払い方
毎月同額で払う(定期同額給与)
支給時期が1か月以下ごとで、毎回同じ額を払う
税務署への届出は要らない
金額を変えられるのは3つの場面に限られる
職務が1年を通じて続く役員に向く
決まった時期に払う(事前確定届出給与)
支給日と金額を決めて、その定めのとおりに払う
同族会社は届出書の提出が要る
届け出た額と違う額を払うと、原則として支給額の全額が損金の額に算入できない
関与が年に数回の役員に向く

事前確定届出給与の届出期限

届出書は、株主総会などの決議の日から1か月を経過する日と、事業年度開始の日から4か月を経過する日のうち、早い日までに出します(国税庁タックスアンサーNo.5211)。たとえば、4月1日が期首の会社が6月25日に決議したなら、早い日は7月25日です(説明用の日付です)。決議が事業年度の開始から3か月を過ぎてからになると、期限は4か月を経過する日になります。

届け出た額と違う額を払った場合

届出書に書いた支給額と実際の支給額が違うと、事前確定届出給与に当たらなくなり、原則として支給額の全額が、損金の額に算入できません(法人税基本通達9-2-14)。差額だけが外れるのではありません。業績が悪くて払えない見込みがある役員には、払える額で届け出ます。

家族を非常勤役員にして報酬を払うときの注意点は?

結論: 家族でも、実際に職務を担っていることが前提です。担当する業務と時間に見合う金額に収め、何をしたかの記録を残します。

家族にも同じ物差しが当たる

家族への報酬にも、同じ4つの物差しが当たります。家族は実際に何をしているかが外から見えにくい関係なので、職務の記録が特に問われます。もう1つ違いが出るのは、家族で経営している会社は同族会社に当たることが多く、年1回払いなら届出が要る点です。

職務の記録の残し方

担当する業務を決めたら、実際にしたことを残します。月1回の面談や会議の日付と内容、取引先の紹介や経理の確認のように担った作業、助言をしたメールなどです。

受け取る家族側で確認すること

報酬を受け取る家族には、所得税と住民税がかかります。報酬の年額によっては、配偶者控除などの扱いや、健康保険の被扶養者の認定にも影響します。基準は令和7年度と令和8年度の改正などで変わったため、決める前に、その年分の基準で確かめます。

非常勤役員の報酬を決める手続きはどうする?

結論: 取締役の報酬は、定款に定めがなければ、株主総会の決議で決めます(会社法361条)。決議の記録が、金額の根拠を説明する書類になります。

株主総会で決めること

取締役の報酬のうち、額が確定しているものは、その額を決議します。総額の上限を決議して、個人ごとの配分を取締役会などに任せる方法もあります。監査役の報酬も、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めます(会社法387条)。

決議した上限を超えて払うと、超えた部分は損金の額に算入できません(法人税法施行令70条1号ロ)。

議事録に書くこと

議事録には、金額、支給の時期、各役員の職務の内容を書きます。非常勤役員は、関わる頻度も書きます。金額だけの議事録では、なぜその額なのかを問われたときに答えられません。決議の日は、期首から3か月以内の改定になるかを示す日付にもなります。

非常勤役員の報酬の税金と社会保険はどうなる?

結論: 役員報酬は給与として源泉徴収します。社会保険は、報酬の額ではなく、経営に参画する労務を経常的に提供しているかで決まります。

源泉徴収は甲欄か乙欄で計算する

役員報酬には、給与として源泉所得税がかかります。給与所得者の扶養控除等申告書を提出している人への給与は甲欄、それ以外の人への給与は乙欄で税額を求めます(国税庁タックスアンサーNo.2511)。他の会社に勤めていて、その会社に扶養控除等申告書を出している人に払う報酬は、乙欄になります。

社会保険は実態で判断する

材料になるのは、事業所への出勤の頻度、他社の役員や本業との兼ね合い、役員会への出席、業務の指示の有無です。加入が必要になれば、会社にも保険料の負担が出るため、報酬を決める段階で見込んでおきます。

よくある質問

非常勤役員の報酬は月いくらにすればよいですか?
金額の基準は法令にありません。担当する職務を文書にし、同じ職務を外部の専門家に頼んだ場合の費用と、常勤役員の報酬に対する職務量の割合から、金額を積み上げて決めます。
非常勤役員の報酬を年1回にまとめて払ってもよいですか?
年1回のまとめ払いは、定期同額給与に当たりません。損金の額に算入するには、事前確定届出給与として払います。同族会社は、決議の日から1か月を経過する日と、事業年度開始の日から4か月を経過する日のうち早い日までに、届出書を出します。
会社に出社しない役員にも報酬を払えますか?
出社の有無ではなく、実際に職務を担っているかで決まります。経営会議への出席や、オンラインでの助言のように、担っている職務があり、その記録が残っていれば払えます。職務の実体がなければ、払った金額の全体が損金の額に算入できない部分になり得ます。
非常勤役員の報酬を期の途中で変えられますか?
事業年度の開始から3か月以内の改定、役員の地位や職務の重大な変更、経営の状況の著しい悪化による減額の3つに限られます。出社の回数や、一時的な資金繰りを理由にした変更は、これに当たりません。

まとめ:職務から金額を積み上げ、毎月同額で払おう

  • 非常勤役員だけの金額の基準は、法令にない。職務の内容、会社の収益、従業員の給与、同業同規模の水準の4つに照らして、相当な金額かを見る
  • 金額は、同じ職務を外部に頼んだ場合の費用と、常勤役員の報酬に対する職務量の割合から積み上げる
  • 職務の実体がない役員への報酬は、全体が損金の額に算入できない部分になり得る
  • 年1回のまとめ払いは、定期同額給与に当たらない。事前確定届出給与にし、同族会社は届出を期限までに出す
  • 取締役の報酬は株主総会の決議で決め、議事録に金額と職務の内容を残す。社会保険は、報酬の額でなく実態で決まる

家族を非常勤役員にしている方、年1回でまとめて報酬を払っている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。職務の内容、直近の決算書、支払いの履歴と議事録を確認し、金額と支払い方が要件に合っているかを整理します。

役員報酬は私たちにお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2511「税額表の種類と使い方」
  • 国税庁 法人税基本通達9-2-12、9-2-14
  • 法人税法2条10号、34条1項・2項
  • 法人税法施行令70条1号
  • 会社法361条、387条
  • 日本年金機構「主な疑義照会と回答について(厚生年金保険 適用)」法人の代表者の被保険者資格について

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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