役員報酬の議事録の書き方|株主総会と取締役会のひな形を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
役員報酬の議事録には、①開いた日時と場所、②誰にいつから月額いくらを支給するかという決議の結果、③出席した取締役と議長の氏名、④議事録を作った取締役の氏名を書きます。定時株主総会で決めたときは株主総会議事録、総額の枠の中で個別の金額を決めたときは取締役会議事録を作ります。この記事では、ひな形、期中の改定と役員賞与の書き方、署名と保存のルールを、会社法と国税庁の資料(2026年10月時点)で整理します。
役員報酬の議事録は、どんなときに何を作る?
結論: 役員報酬を決めた株主総会と取締役会ごとに、議事録を1通ずつ作ります。総会で総額を決めて取締役会で配分するなら2通、取締役会がなく総会だけで決めるなら1通です。
場面ごとの早見表
| 決める内容 | 株主総会議事録 | 取締役会議事録 |
|---|---|---|
| 定時の報酬(総額の上限だけ決める) | 必要 | 個別の配分を決めるなら必要 |
| 定時の報酬(個別の金額まで決める) | 必要 | 不要 |
| 期中の増額・減額 | 総会で決めたなら必要 | 配分を決めたなら必要 |
| 役員賞与(事前確定届出給与) | 総会で決めたなら必要 | 配分を決めたなら必要 |
| 取締役会がない会社 | 必要 | 作らない |
株主総会と取締役会の役割
会社法第361条第1項は、取締役の報酬について、定款に定めていないときは株主総会の決議で定めると規定しています。決議は過半数の賛成で足り、3分の2以上が要る特別決議ではありません(会社法第309条)。
実務では、総会で取締役全員の報酬の総額の上限を決め、その枠の中で誰にいくらを支給するかを取締役会が決めます。国税庁も、この形を総会で個別に決議した場合と同じに扱っています(「役員給与に関するQ&A」)。
取締役会がない会社と監査役の報酬
取締役会を置いていない会社で取締役が2人以上いる場合、業務は取締役の過半数で決めるのが原則です(会社法第348条第2項)。個別の金額まで総会で決めてしまえば議事録が1通で済みます。監査役の報酬は別の議案で決議します(会社法第387条第1項)。
役員報酬の議事録でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、決議の日付、個別の金額の抜け、期中の改定の理由、届出書との食い違いの4つです。間違えると、役員報酬が損金の額に算入できず法人税が増えます。
議事録の日付が期限を過ぎていたと、決算前に気づいて相談に来られる方が少なくありません。
決議の日付が期限を過ぎている
毎月同じ額を支給する役員報酬(定期同額給与)の改定は、事業年度開始の日から3か月を経過する日までにする必要があります(法人税法施行令第69条第1項第1号イ)。3月決算なら6月30日です。定時株主総会を7月に開いて増額すると、増額した分が損金の額に算入できません。
誰にいくらかが書かれていない
総会で総額の上限だけを決めて、取締役会の議事録を作っていない会社があります。各人の支給額がいつ決まったか示せません。
期中に減額した理由が抽象的
期中の減額は、業績悪化改定事由に当たるときだけ認められます。業績不振のためという一文だけでは、何がどう悪化したのか説明できません。
届出書と議事録の金額が違う
事前確定届出給与は、届出書の金額と実際に支給した金額が違うと、原則として支給額の全額が損金の額に算入できません(法人税基本通達9-2-14)。議事録と届出書の金額は、同じ数字で揃えます。
前期までの議事録と届出書の控えをお送りいただければ、決議の日付と金額の書き方が期限に合っているかを確かめます。
定時株主総会の議事録はどう書く?
結論: 総会の議事録には、日時と場所、議事の経過の要領と結果、出席した取締役の氏名、議長の氏名、作成した取締役の氏名を書きます。報酬は、誰にいつからいくらかまで具体的に書きます。
法律で決まっている項目
株主総会の議事録の内容は、会社法施行規則第72条第3項が定めています。
- 開催された日時と場所
- 議事の経過の要領とその結果
- 出席した取締役、監査役などの氏名
- 議長がいるときは議長の氏名
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
株主の数や議決権の数は法令上の必須項目ではありませんが、決議が成立した根拠になるため書いておきます。
総額だけを決める議事録のひな形
取締役会で個別の金額を決める会社は、総会では総額の上限と期間だけを決めます。会社名・氏名は架空です。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 表題 | 第〇期定時株主総会議事録 |
| 日時・場所 | 令和〇年〇月〇日 午前〇時〇分から午前〇時〇分まで。当会社の本店会議室 |
| 出席者 | 株主〇名(議決権〇個)のうち出席〇名(議決権〇個)。出席した取締役:〇〇 〇〇、△△ △△ |
| 議長 | 代表取締役 〇〇 〇〇 |
| 議案 | 第〇号議案 取締役の報酬額決定の件 |
| 議事の経過と結果 | 議長は、取締役の報酬を、令和〇年〇月から次の定時株主総会の終結の時まで、総額年額〇〇〇円以内とし、配分は取締役会で決めたいと述べ、賛否を諮った。出席した株主の議決権の過半数の賛成により、原案どおり承認可決した。 |
| 作成者 | 令和〇年〇月〇日 株式会社〇〇 議事録作成者 代表取締役 〇〇 〇〇 |
報酬の対象は、総会の日から次の定時総会の終結の時までの職務執行期間です(国税庁「役員給与に関するQ&A」)。期間は始まりと終わりの両方を書きます。
個別の金額まで決める議事録のひな形
取締役会を置かない会社や取締役が1人の会社は、総会で個別の金額まで決めます。上の表の議事の経過を、次のように置き換えます。
議長は、令和〇年〇月分から次の定時株主総会の終結の時まで、代表取締役 〇〇 〇〇に月額〇〇〇円、取締役 △△ △△に月額〇〇〇円を毎月〇日に支給したいと述べ、賛否を諮った。出席した株主の議決権の過半数の賛成により、原案どおり承認可決した。
月額と毎月の支給日を書きます。報酬を変えない年も、定時株主総会で現状維持を決議して議事録を残します。
取締役会の議事録はどう書く?
結論: 取締役会の議事録には、日時と場所、議事の経過の要領と結果、議長の氏名を書き、個別の金額を1人ずつ書きます。出席した取締役と監査役の署名か記名押印も要ります。
法律で決まっている項目
取締役会の議事録の内容は、会社法施行規則第101条第3項が定めています。開催の日時と場所、議事の経過の要領とその結果、議長の氏名に加えて、決議について特別の利害関係を有する取締役がいるときはその氏名を書きます。
個別の配分を決める議事録のひな形
総会で決めた総額の枠の中で、1人ずつの月額を決める議事録です(会社名・氏名は架空)。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 表題 | 取締役会議事録 |
| 日時・場所 | 令和〇年〇月〇日 午前〇時〇分から午前〇時〇分まで。当会社の本店会議室 |
| 議長 | 代表取締役 〇〇 〇〇 |
| 議案 | 第〇号議案 取締役の個別の報酬額決定の件 |
| 議事の経過と結果 | 議長は、令和〇年〇月〇日の定時株主総会で承認された報酬総額の範囲内で、令和〇年〇月分から次の定時株主総会の終結の時まで、代表取締役 〇〇 〇〇に月額〇〇〇円、取締役 △△ △△に月額〇〇〇円を毎月〇日に支給したいと述べ、賛否を諮った。出席した取締役の全員の賛成により、原案どおり承認可決した。 |
期中に報酬を変えるときの議事録はどう書く?
結論: 期首から3か月を過ぎた改定は、役員の地位や職務の重大な変更、または経営状況の著しい悪化という理由があるときだけ認められます。議事録に、その理由を事実で書きます。
3か月を過ぎても改定できる場合
期首から3か月を過ぎても定期同額給与として認められる改定は3つです(法人税法施行令第69条第1項第1号)。
- 臨時改定事由: 役員の職制上の地位の変更や職務の内容の重大な変更など、やむを得ない事情。社長の退任に伴う副社長の社長就任が通達の例です(法人税基本通達9-2-12の3)。
- 業績悪化改定事由: 経営の状況が著しく悪化したことなどによる減額。増額は認められません。
- 特別の事情: 毎年決まった時期の改定が、親会社の定時株主総会の終了後でないと決議できないなどの理由で期限を過ぎる場合(同通達9-2-12の2)。
減額の理由は事実で書く
業績悪化改定事由は、一時的な資金繰りの都合や、業績目標に届かなかっただけでは認められません(同通達9-2-13)。国税庁は、通常これに当たる場合として、取引銀行との借入金返済の協議で減額が必要になった場合や、信用を保つための経営改善計画に減額が盛り込まれた場合などを挙げています(「役員給与に関するQ&A」)。
同族会社は、減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できる必要があります。議事録には、何が起きたかを日付と数字で書きます。
役員賞与の議事録はどう書く?
結論: 事前確定届出給与にする役員賞与は、議事録に支給の日と金額を確定した形で書き、届出書と同じ数字にそろえます。業績に応じて増減する書き方はできません。
支給日と金額を確定して書く
事前確定届出給与は、所定の時期に確定した額を支給する定めに基づく給与です(法人税基本通達9-2-14)。議事録には、支給日と、1人ごとの支給額を書きます。
届出書は決議の日から1か月以内
届出書は、決議をした日から1か月を経過する日と、会計期間の開始の日から4か月を経過する日のうち、早い日までに税務署へ出します(法人税法施行令第69条第4項第1号)。3月決算の会社が6月25日の定時株主総会で決議したなら、1か月後は7月25日、4か月後は7月31日なので、期限は7月25日です。議事録の日付が期限の起点です。
役員が1人の会社でも議事録は要る?
結論: 要ります。株主と取締役が同じ1人でも、報酬は株主総会の決議で定める必要があり、決議の記録が議事録です。省略できるのは集まる手続きだけです。
全員出席の総会と書面による決議
株主の全員が同意すれば、招集の手続きを経ずに総会を開けます(会社法第300条)。実際に集まらない場合は、提案に株主の全員が書面か電磁的記録で同意すると、決議があったものとみなされます(会社法第319条第1項)。この場合の議事録には、みなされた事項の内容、提案をした者の氏名、みなされた日、作成した取締役の氏名を書きます(会社法施行規則第72条第4項第1号)。同意の書面は、みなされた日から10年間、本店に備え置きます。
日付だけを書き換えない
前の年の議事録の日付と金額だけを直す運用は、その年に決議した記録になりません。総会の日、期間、金額を決めたとおりに書きます。
議事録の署名・押印と保存はどうする?
結論: 株主総会の議事録に署名や押印の義務はなく、取締役会の議事録には義務があります。保存は、どちらも決議の日から10年間、本店に備え置きます。
署名・押印と電子化
書面で作る取締役会の議事録は、出席した取締役と監査役の署名か記名押印が要ります(会社法第369条第3項)。株主総会の議事録に署名や押印の定めはありませんが、融資の申込みなどで提出を求められるため、作成者が記名押印しておくのが実務です。電磁的記録で取締役会の議事録を作るときは、電子署名をします(会社法第369条第4項、会社法施行規則第225条第1項第6号)。
保存の期間と場所
| 書類 | 保存の期間と場所 |
|---|---|
| 株主総会の議事録 | 総会の日から10年間、本店に備え置く。支店には写しを5年間(電磁的記録で一定の措置をとっていれば不要) |
| 取締役会の議事録 | 取締役会の日から10年間、本店に備え置く |
| 書面による決議の同意書 | みなされた日から10年間、本店に備え置く |
よくある質問
役員報酬の議事録は、役員が1人でも必要ですか?
議事録はいつまで保存しますか?
まとめ:決めた日と金額を残そう
- 役員報酬は、総会で総額を決め、取締役会で個別の金額を決めます。取締役会がなければ総会で個別の金額まで決めます
- 株主総会の議事録は、日時と場所、議事の経過と結果、出席した取締役、議長、作成者を書きます
- 期首から3か月を過ぎた改定は、地位や職務の変更、業績の著しい悪化の事実を書きます
- 役員賞与は、支給日と金額を確定して書き、届出書と同じ数字にそろえます
- 保存は、総会も取締役会も決議の日から10年間、本店に備え置きます
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出典
- e-Gov法令検索 会社法 第300条、第309条、第318条、第319条、第348条、第361条、第369条、第370条、第371条、第387条
- e-Gov法令検索 会社法施行規則 第72条、第101条、第225条
- e-Gov法令検索 法人税法施行令 第69条
- 国税庁 法人税基本通達 9-2-12の2、9-2-12の3、9-2-13、9-2-14
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」
- 国税庁「役員給与に関するQ&A」
- 国税庁 質疑応答事例「定期給与の額を改定した場合の損金不算入額」





