中小企業の法人税率は?軽減税率を適用できる会社の条件と例外
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
中小企業の法人税率は、課税所得(法人税の対象になる金額)のうち年800万円以下の部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です。ただし、この15%は資本金1億円以下の会社なら誰でも適用できる税率ではありません。資本金5億円以上の大法人に全株式を持たれている会社や、過去3年の所得が大きい会社は、資本金が小さくても適用できません。所得が年10億円を超える事業年度は17%になります。この記事では、自社の税率がどの区分になるかを決める順番、適用できなくなる条件、適用できなくなったときに一緒に変わる制度を、国税庁の公表資料と条文(2026年10月時点)で整理します。
中小企業の法人税率はいくら?
結論: 資本金1億円以下の中小法人の法人税率は、課税所得のうち年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。資本金1億円を超える会社は、課税所得の全額に23.2%が掛かります。
区分ごとの税率の早見表
国税庁のタックスアンサーNo.5759によると、令和7年4月1日以後に開始する事業年度の税率は次のとおりです。
| 法人の区分 | 年800万円以下の部分 | 年800万円を超える部分 |
|---|---|---|
| 中小法人で、所得が年10億円以下の事業年度 | 15% | 23.2% |
| 中小法人で、所得が年10億円を超える事業年度 | 17% | 23.2% |
| 中小法人でも、過去3年の所得が大きい会社(適用除外事業者) | 19% | 23.2% |
| 資本金1億円を超える会社、大法人に完全支配されている会社 | 23.2% | 23.2% |
中小法人とは、各事業年度終了の時に資本金が1億円以下の普通法人(資本や出資を持たない法人を含む)をいいます。特定の医療法人、協同組合等、公益法人等、人格のない社団等は、同じタックスアンサーの別の行で確かめます。
15%は本来の税率ではなく、特例の税率です。法人税法66条2項の本則は、中小法人の年800万円以下の部分を19%とし、租税特別措置法42条の3の2の特例が15%に下げています。
軽減税率で減る税額
資本金1億円を超える会社と比べると、年800万円以下の部分の税率は8.2ポイント低くなります(23.2%−15%)。課税所得が年800万円以上あれば、法人税だけで年65万6,000円(800万円×8.2%)の差です。
15%の適用期限
15%の特例は、平成24年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度が対象です(租税特別措置法42条の3の2)。令和7年度の改正で期限が2年延長されました(国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」)。令和9年4月1日以後に開始する事業年度の税率は、毎年12月に閣議決定される税制改正の大綱で延長の有無を確かめます。
軽減税率の判定でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、資本金だけで決める、親会社の株主構成を見落とす、前の期の判定のまま申告する、の3つです。間違えると、差額の法人税を修正申告で納めることになります。
全株式を持つ親会社ができたことに決算まで気づかず、前の期と同じ15%で申告書を作っていたと分かって相談に来られる方が少なくありません。適用できないのに15%で申告していると、差額を修正申告で納めます。調査を受けたあとの修正申告なら過少申告加算税、納付が遅れた期間には延滞税も加わります。
資本金だけで決めてしまう誤り
資本金1億円以下は、軽減税率の入口の条件にすぎません。資本金が100万円の会社でも、資本金5億円以上の会社に全株式を持たれていれば、15%は適用できません(法人税法66条5項)。
親会社の株主構成を見落とす誤り
全株式を持つ親会社が増資して資本金が5億円以上になると、自社が何も変わらなくても、その期から適用できなくなります。親会社の増資は子会社の帳簿に出ないため、親会社の登記事項証明書を見直さないと気づけません。
前期の判定のまま申告する誤り
資本金と株主は各事業年度終了の時、所得は当期と開始前3年の数字で判定します。前の期の申告書に15%と書いてあっても、今期も同じとは限りません。所得が年10億円を超える事業年度は17%になるため、会計ソフトの税率の設定が15%のままになっていないかも確かめます。
直近の株主名簿と登記事項証明書、過去3期分の申告書をお持ちいただければ、大法人の完全支配関係の有無と3年分の所得から、今期に適用できる税率の区分を一緒に確かめます。
軽減税率を適用できる会社は?
結論: 軽減税率を適用できるのは、各事業年度終了の時に資本金が1億円以下の普通法人のうち、除外される法人に当たらない会社です。判定は期末の時点で行います。
期末の資本金で判定する
国税庁のタックスアンサーNo.5759の注1は、対象を「各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないもの」としています。判定の基準は期末で、期首でも申告の時でもありません。
期の途中で増資しても、期末に1億円以下なら、その事業年度は適用できます。期末に1億円を超えていれば、年800万円以下の部分にも23.2%が掛かります。ちょうど1億円なら「以下」に当たるため、適用できます。
軽減税率を適用できない会社は?
結論: 資本金が1億円以下でも、大法人に完全支配されている会社、複数の大法人が絡む形の会社、グループ通算制度の会社は、15%を適用できません。投資法人・特定目的会社・相互会社なども除かれます。
大法人に完全支配されている会社
大法人とは、資本金または出資金が5億円以上の法人、相互会社(外国相互会社を含む)、受託法人をいいます。大法人に発行済株式の全部を持たれている普通法人は、自社の資本金が1億円以下でも軽減税率を適用できません(法人税法66条5項2号)。
完全支配関係の数え方
完全支配関係とは、1つの者が発行済株式の全部を、直接または間接に持つ関係です。子会社が持つ孫会社の株式も、親会社が間接的に持つものとして数えます。1株でも第三者が持っていれば、完全支配関係には当たりません。
ただし、従業員持株会の株式や、役員・従業員がストックオプションで取得した株式は、合計が発行済株式の5%未満なら除いて数えます(法人税法施行令4条の2第2項)。
複数の大法人が絡む場合
法人税法66条5項3号は、自社と完全支配関係がある大法人が複数あり、それらの大法人が持つ株式の全部を1つの大法人が持つとみなしたときに、その1つの大法人と自社が完全支配関係になる会社も除外すると定めています。1社に直接持たれていなくても、グループの中の大法人が分けて持つ形で除外される場合があります。株主の構成が複雑な会社は、持株関係を図にします。保険業法の相互会社、投資法人、特定目的会社、受託法人も、法人の形そのもので除外されます(同項1号・4号から6号)。
グループ通算制度の会社
グループ通算制度を適用している会社は、15%の特例の対象から外れます。グループ内のどの会社も中小法人にあたる中小通算法人は、年800万円をグループ内の各社の所得の比で配分した金額以下の部分が19%です(法人税法66条6項・7項)。単独で申告するときの年800万円の枠を、各社がそのまま使えるわけではありません。
所得が大きいと税率はどう変わる?
結論: 当期の所得が年10億円を超える事業年度は年800万円以下の部分が17%、過去3年の所得の年平均が15億円を超える会社は19%です。どちらも資本金ではなく、所得の大きさで決まります。
当期の所得が年10億円を超える場合
令和7年4月1日以後に開始する事業年度から、所得が年10億円を超える事業年度は、年800万円以下の部分が17%です(国税庁タックスアンサーNo.5759の注6)。判定に使うのは当期の所得だけで、翌期が年10億円以下なら15%に戻ります。
3年平均が15億円を超える会社
適用除外事業者とは、その事業年度の開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人をいいます(租税特別措置法42条の4第19項8号)。計算は、3年分の所得の合計を、その各事業年度の月数の合計で割り、12を掛けます。赤字の事業年度の所得は0として入れます。
たとえば、3事業年度(合計36か月)の所得の合計が54億円なら、54億円÷36か月×12=18億円で、15億円を超えます(説明用の金額です)。適用除外事業者は、15%の特例の対象から外れるため、年800万円以下の部分は19%で、所得が年10億円を超える事業年度でも変わりません(国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」の税率一覧)。
設立の日の翌日から3年を経過していない会社は、原則として適用除外事業者に当たりません(国税庁「中小企業者の判定等フロー」)。
軽減税率の対象外で変わる制度は?
結論: 軽減税率を適用できなくなると、欠損金の繰越控除の限度、交際費の定額控除、貸倒引当金の法定繰入率なども変わる場合があります。制度ごとに判定の物差しが違います。
制度ごとの変わり方
国税庁の「中小企業者の判定等フロー」(令和7年10月)に沿って並べると次のとおりです。
| 制度 | 大法人の完全支配下などで外れる場合 | 所得の3年平均が15億円超の会社の場合 |
|---|---|---|
| 年800万円以下の軽減税率 | 適用できない(23.2%) | 適用できない(19%) |
| 欠損金の繰越控除 | 控除は所得の50%まで | 所得の全額まで控除できる |
| 交際費の定額控除限度額(年800万円) | 適用できない | 適用できる |
| 貸倒引当金の法定繰入率 | 適用できない | 適用できない |
| 少額減価償却資産の特例などの中小企業向けの特例 | 別の物差しで判定する | 適用できない |
欠損金の繰越控除は、中小法人等なら所得の全額まで、それ以外は所得の50%までです(法人税法57条1項・11項)。繰越欠損金のある会社が大法人の完全支配下に入ると、控除できる額が半分になります。
判定の物差しが違う特例
少額減価償却資産の特例や中小企業投資促進税制のような中小企業向けの特例は、軽減税率とは別の物差しで中小企業者かどうかを判定します。資本金1億円超の法人などの大規模法人が一定の割合以上の株式を持つ会社は、資本金が1億円以下でも対象から外れます。
軽減税率の判定は毎期どう進める?
結論: 判定は、期末の資本金、株主、過去3年の所得、当期の所得の順に確かめます。毎期同じ順番で行うと抜けません。
税理士が確かめる順番
税理士は、決算の作業で次の順に確かめます。
資本金は登記事項証明書、株主は株主名簿で確かめ、株主が法人ならその法人の資本金も見ます。3年分の所得は、過去の申告書の別表一から拾います。根拠を1枚にまとめておけば、翌期は3年の期間が1年ずれるだけで判定が終わります。
期の途中で変わる場面
判定を変えるのは、増資、減資、株式の譲渡、親会社の増資と変更です。基準は期末の状態です。
よくある質問
資本金が1,000万円の会社は、必ず15%になる?
親会社が株式の99%を持っていれば、完全支配関係には当たらない?
防衛特別法人税は、軽減税率を適用できない会社だけが納める?
まとめ:判定の順に15%を確かめよう
- 中小企業の法人税率は、年800万円以下が15%、超える部分が23.2%で、所得が年10億円を超える事業年度は17%です
- 資本金1億円以下は入口の条件で、大法人の完全支配下にある会社などは適用できません
- 過去3年の所得の年平均が15億円を超える会社は、年800万円以下の部分も19%です
- 判定は期末の資本金と株主、過去3年の所得、当期の所得で、毎期やり直します
- 適用できなくなると、欠損金の繰越控除や交際費の定額控除なども変わる場合があります
大法人の完全支配下に入った会社、増資や株式の譲渡を予定している会社、所得が大きくなってきた会社は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。株主名簿と過去3期分の申告書を確認し、今期の税率の区分と、他の中小企業向けの特例への影響を整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」(令和7年10月)および別冊「中小企業者の判定等フロー」「申告書作成上の留意点」
- 国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」(中小企業者等の法人税率の特例の見直し、防衛特別法人税の創設)
- e-Gov 法令検索「法人税法」(第57条・第66条)
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(第4条の2)
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(第42条の3の2・第42条の4)





