法人税率|中小企業の軽減税率と、使えなくなる条件

「資本金1,000万円の会社なので、15%でいいんですよね」。「親会社ができたのですが、税率は変わりますか」――軽減税率の判定について、この2つは特によくいただくご質問です。

結論からお伝えすると、法人税の軽減税率(年800万円以下の部分に適用される15%)を使えるのは、資本金1億円以下であることに加えて、除外される類型に当てはまらない会社です。資本金だけでは決まりません。資本金5億円以上の大法人に完全支配されている子会社や、過去3年の平均所得が15億円を超える会社は、資本金が小さくても対象から外れます。

税理士法人Light UPでは、この判定は毎期やり直すものだと考えています。増資や株主構成の変更、所得の伸びによって、去年は使えた軽減税率が今年は使えなくなることがあるためです。判定の時点は事業年度終了の時であり、期首ではありません。

この記事では、除外される6つの類型と、実務でいちばん多い落とし穴である完全支配関係の判定、年800万円の枠が月割りになる場面、そして資本金1億円という線が税率以外に影響する制度までを、実際に中小企業の申告を代行している立場から整理します。

中小法人かどうかは資本金1億円以下から始まる

結論: 軽減税率の対象になるのは、各事業年度終了の時における資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人です。ただしこれは入口の条件にすぎず、この要件を満たしても除外される類型があります。

判定するのは事業年度終了の時点

国税庁のタックスアンサーNo.5759「法人税の税率」の注1は、対象となる法人を「各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないもの」と定めています。判定の基準日は期末であって、期首でも申告時でもありません。

期の途中で増資して1億円を超えた場合、その事業年度から軽減税率を使えなくなります。逆に減資して1億円以下にすれば、その事業年度から対象に戻ります。増資のタイミングを期末の前後どちらに置くかで、その期の税額が変わるということです。資金調達の話が出たときは、この点を先に確認しておく価値があります。

資本金と資本準備金は別のもの

出資を受けた金額のうち、2分の1を超えない額は資本準備金として計上できます。1億円の出資を受けても、5,000万円を資本金、5,000万円を資本準備金とすれば、資本金の額は5,000万円です。この場合は軽減税率の対象になります。

ただし、地方税の均等割では資本金等の額(資本金+資本準備金)で判定する場面があります。法人税の税率と地方税の均等割で見る数字が違うため、増資の設計をするときは両方を並べて確認する必要があります。片方だけを見て決めると、思わぬところで負担が増えます。

資本や出資を有しない法人も含まれる

一般社団法人や一般財団法人のように、そもそも資本金という概念がない法人も対象に含まれます。注1が「資本もしくは出資を有しないもの」と明記しているためです。この場合、資本金による除外は起こりません。

ただし公益法人等については税率の区分が別に用意されており、収益事業から生じた所得に対する税率が定められています。法人の種類によって適用される表の行が変わるので、まず自社がどの区分に入るかを確認するのが先になります。

資本金1億円以下でも除外される6つの類型

結論: 国税庁のタックスアンサーNo.5759の注1は、資本金1億円以下であっても軽減税率から除外される法人を6つ挙げています。法人税法66条5項に対応する内容です。

除外される類型の一覧

条文でいうと法人税法66条5項の各号にあたります。国税庁の解説では注1のイからヘまでの6項目として整理されており、条文の並びと対応しています。ここを読み飛ばして資本金だけで判定してしまうのが、いちばん多い誤りです。

6つのうち4つは特殊な法人形態を指しているため、実際に判定で迷うのは残る2つに絞られます。まず一覧を見たうえで、自社に関係する行だけを深く確認するという読み方が効率的でしょう。

記号 除外される法人
相互会社および外国相互会社
大法人(資本金5億円以上の法人・相互会社・受託法人)との間に、その大法人による完全支配関係がある普通法人
完全支配関係があるすべての大法人が保有する株式の全部を1つの法人が有するものとみなした場合に、その法人による完全支配関係があることとなる普通法人(ロを除く)
投資法人
特定目的会社
受託法人

このうち中小企業が実際に当たるのはロとハです。イ・ニ・ホ・ヘは、保険会社や投資スキームのための法人形態なので、通常の事業会社には関係がありません。

中小企業に関係するのはロとハの2つ

ロは、資本金5億円以上の会社に100%支配されている子会社です。親会社が大きければ、子会社の資本金がいくら小さくても軽減税率は使えません。設立時に資本金100万円で作った子会社であっても同じです。

ハは、複数の大法人に分散して保有されている場合の規定です。1社に100%持たれているわけではなくても、大法人が合計で全株式を持っていれば対象になります。1社あたりの持分が小さいから大丈夫、とはならないところが要点です。グループ再編で株主が複数の大法人に分かれた場合に、この規定が働きます。

通算法人には別の計算が用意されている

グループ通算制度を適用している法人については、法人税法66条6項と7項に別の定めがあります。年800万円という枠をグループ全体で分け合う仕組みで、各社の所得の比で按分した金額が軽減対象所得金額になります。

つまり通算グループに5社あれば、800万円を5社で分けることになります。単独で申告していたときと同じ枠を各社が使えるわけではありません。通算制度を選ぶ際の検討材料の1つになる点です。

軽減税率が使える会社と使えない会社
使える(中小法人)
年800万円以下の部分は15%
800万円を超える部分は23.2%
交際費の定額控除限度額800万円を選べる
欠損金を所得の全額まで控除できる
中小企業向けの投資減税を使える
使えない(除外される類型・大法人)
所得の全額に23.2%
交際費は接待飲食費の50%のみ
欠損金の控除は所得の50%まで
中小企業向けの特例は原則として対象外
資本金1億円超なら外形標準課税の対象にもなる

大法人の完全支配下にあると使えない

結論: 資本金5億円以上の大法人に完全支配されている普通法人は、自社の資本金が1億円以下でも軽減税率を使えません。実務で最も多い落とし穴がここです。

完全支配関係とは何を指すか

完全支配関係とは、一方の法人が他方の法人の発行済株式の全部を直接または間接に保有する関係をいいます。100%子会社であれば該当します。間接保有も含まれるため、孫会社であっても、親をたどって大法人に行き着けば対象になります。

99%の保有であれば完全支配関係にはなりません。1株でも他人が持っていれば外れます。ただし、従業員持株会や役員が保有する一定のストックオプション由来の株式については、判定から除かれる取扱いがあります。実際の株主名簿で確認する作業が必要になる部分です。

基準になるのは親会社の資本金5億円

大法人の定義は、資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人です。親会社の資本金が4億9,000万円なら大法人には当たらず、子会社は軽減税率を使えます。ここも期末時点で判定します。

親会社が増資して5億円を超えると、子会社の税率がその期から変わります。 親会社側の資本政策が子会社の税負担に直結する構造で、子会社の経理担当者が気づかないまま期が終わるということが起こります。グループ会社の申告を受けている場合、私たちは親会社の登記事項も毎期確認するようにしています。

分散保有されていても該当する

先ほどのハの類型です。A社(資本金6億円)が60%、B社(資本金7億円)が40%を保有している会社を考えます。どちらか一方との完全支配関係はありませんが、両社を合わせると100%です。この場合、1つの法人が全株式を持っているものとみなして判定するため、除外の対象になります。

「複数の親会社に分けて持ってもらえば軽減税率を維持できる」という発想は成り立ちません。条文はその抜け道を先回りして塞いでいます。合弁会社を作るときは、出資者それぞれの資本金を確認しておく必要があります。

実務で当たる除外の3類型
01
大法人の100%子会社(ロ)
親会社の資本金が5億円以上なら、自社の資本金がいくら小さくても対象外
02
複数の大法人による分散保有(ハ)
1社あたりの持分が小さくても、大法人の合計で全株式なら対象外
03
適用除外事業者
前3年以内に終了した事業年度の所得の年平均が15億円超。資本金は関係しない
04
判定の時点
いずれも各事業年度終了の時で判定する。期首や申告時ではない

適用除外事業者は過去3年の平均所得で決まる

結論: 資本金1億円以下でも、過去3年の所得の年平均額が15億円を超える法人は適用除外事業者となり、年800万円以下の部分にも19%が適用されます。資本金が小さくても、稼いでいれば対象から外れる仕組みです。

定義と適用の開始時期

国税庁のタックスアンサーNo.5759の注2は、適用除外事業者について「その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等をいいます」としたうえで、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から19%の税率が適用されるとしています。

判定に使うのは所得金額であって、売上高ではありません。売上が数十億円あっても所得が15億円に届かなければ該当しません。逆に、売上が小さくても利益率が非常に高い事業では、所得だけが先に基準を超えることがあります。

資本金と所得の2つの物差しがある

軽減税率の判定には、資本金という物差しと所得という物差しの2つがあります。資本金1億円以下で入口を通っても、所得の物差しで外れることがある。この二重構造を理解しておくと、なぜ判定が毎期変わるのかが分かりやすくなります。

中小企業の実務でここに当たることは多くありません。年平均15億円という水準は、中小企業の枠を大きく超えているためです。ただし、事業が急拡大している会社では数年先に届く可能性があります。中期の利益計画を作っている会社であれば、視野に入れておく意味があります。

適用除外事業者は他の特例にも影響する

適用除外事業者に該当すると、軽減税率だけでなく、中小企業向けの投資減税や少額減価償却資産の特例など、いくつかの制度が使えなくなります。租税特別措置法の中小企業向け特例の多くが、適用除外事業者を除いているためです。

軽減税率だけの話ではないという点は押さえておきたいところです。所得が伸びてきた会社では、どの特例が使えなくなるかを一覧で確認しておくと、翌期以降の見通しが立てやすくなります。

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令和7年4月からの17%区分

結論: 令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率が15%から17%になります。

注7が定めている内容

国税庁のタックスアンサーNo.5759の注7は「令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります」と示しています。

この区分によって、中小法人の税率は実質的に4段階になりました。通常の中小法人が15%、所得10億円超の事業年度が17%、適用除外事業者が19%、そして800万円を超える部分と大法人が23.2%です。「中小企業なら15%」という一言では説明できない構造になっています。

10億円は事業年度ごとに判定する

適用除外事業者が過去3年の平均で判定するのに対し、17%区分はその事業年度の所得で判定します。単年度で10億円を超えれば、その期だけ17%になるということです。翌期に所得が下がれば15%に戻ります。

判定の物差しが違うため、両方に該当することもあれば片方だけということもあります。所得が大きく振れる事業では、期ごとに適用される税率が変わる可能性があります。

年800万円の枠を月割りで計算する手順
1

事業年度の月数を数える
暦に従って計算し、1月に満たない端数は1月とする(法人税法66条4項)
2

800万円を12で割る
1か月あたり約66万6,666円。ここは固定の計算になる
3

事業年度の月数を掛ける
6か月なら400万円、8か月なら約533万3,333円が軽減税率の枠になる
4

枠を超える部分に23.2%を掛ける
課税所得から枠を引いた残りが、高い税率の対象になる
5

通算法人は別の計算をする
グループ全体の所得の比で800万円を按分する(同条7項)

年800万円の枠は月割りになる

結論: 軽減税率が適用される年800万円という枠は、事業年度が1年に満たない場合に月数で按分されます。設立初年度や決算期を変更した期では、枠が小さくなります。

条文が定めている計算方法

法人税法66条4項は、事業年度が1年に満たない法人について、「年八百万円」とあるのを「八百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」と読み替えると定めています。単純な月割りです。

設立から決算までが6か月であれば400万円、8か月であれば約533万円が枠になります。設立初年度を短く設定した会社では、想定より税額が大きく出ることになります。同じ月数按分は交際費の定額控除限度額にも適用されるため、初年度は2つの枠が同時に小さくなる点にも注意が要ります。

月数の数え方に端数の扱いがある

同条4項は月数について「暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする」としています。設立日が月の途中であっても、その月は1か月として数えるということです。

たとえば5月20日に設立して9月30日を決算日にした場合、期間は4か月と11日。端数の11日を1か月として数えるため、月数は5か月になります。枠は800万円÷12×5で約333万円です。切り上げるので、会社に有利な方向に働きます。

決算期変更のあとは判定をやり直す

決算期を変更した期は事業年度が12か月未満になるため、枠が小さくなります。同時に、前期が12か月でなくなることで中間申告の判定にも影響します。決算期の変更は、税率の枠と中間納付の両方に波及するということです。

変更のタイミングを決めるときは、この2つを試算してから判断します。繁忙期を避けたいという理由だけで決めると、変更した期の税負担が想定と違ってくることがあります。

17%区分と適用除外事業者は判定の物差しが違う
17%区分(注7)
その事業年度の所得金額で判定する
年10億円を超えた期だけ17%になる
翌期に所得が下がれば15%に戻る
令和7年4月1日以後に開始する事業年度から
適用除外事業者(注2)
前3年以内に終了した事業年度の所得の年平均額で判定する
年平均15億円超で19%になる
過去の実績で決まるため単年度では戻らない
中小企業向けの他の特例も使えなくなる

資本金1億円は税率以外の制度にも影響する

結論: 資本金1億円という線は、法人税率だけでなく、外形標準課税・交際費・少額減価償却資産・欠損金の控除限度など複数の制度で区分の基準になっています。増資を検討する際は、まとめて確認する必要があります。

1億円を境に変わる主な制度

資本金1億円という数字は、法人税法と租税特別措置法、そして地方税法のそれぞれで区分の基準として使われています。同じ数字が複数の法律に散らばっているため、1か所を調べただけでは全体像がつかめません。

下の表は、中小企業が実際に影響を受ける主なものを並べたものです。増資を検討する段階では、この一覧を1枚にして、どの行が自社に当てはまるかを確認する作業から始めることをお勧めしています。

制度 資本金1億円以下 資本金1億円超
法人税の軽減税率 年800万円以下は15% 全額に23.2%
法人事業税の外形標準課税 対象外(所得割のみ) 対象(付加価値割・資本割が加わる)
交際費の損金算入 年800万円の定額控除を選べる 接待飲食費の50%のみ
欠損金の繰越控除 所得の全額まで控除できる 所得の50%まで
少額減価償却資産の特例 使える(40万円未満・年300万円まで) 使えない
貸倒引当金の法定繰入率 使える 使えない

このうち負担の増え方がいちばん大きいのは外形標準課税です。付加価値割は報酬給与額などを課税標準とするため、赤字でも税額が生じます。人件費の多い会社ほど影響が大きくなります。

増資の前に総額で試算する

資金調達のために増資して資本金が1億円を超えると、上の表のすべてが同時に切り替わります。調達できた金額と、翌期以降の税負担の増加を並べて比べる作業が要ります。

私たちがご相談を受けたなかでは、増資の翌期に外形標準課税で数百万円の事業税が生じ、想定していなかったという事例がありました。資本準備金に振り分ける設計にしていれば避けられたケースです。増資の話が出た段階で、資本金にいくら入れるかを決めておく意味はここにあります。

1億円ちょうどは対象になる

条文は「1億円以下」と書かれているため、資本金1億円ちょうどであれば軽減税率の対象です。1円でも超えると外れます。この境目は、外形標準課税でも交際費でも同じです。

増資の金額を決めるときに、あえて1億円ちょうどに合わせる会社があるのはこのためです。ただし外形標準課税については、令和6年度の税制改正で減資による対象外化への対応が入っているため、いったん1億円超になった会社が減資して戻る場合の扱いには注意が要ります。

判定は毎期やり直す

結論: 軽減税率の判定は各事業年度終了の時に行うため、毎期やり直す必要があります。去年使えたから今年も使える、とは限りません。

判定が変わる4つのきっかけ

判定が変わるのは、増資して資本金が1億円を超えたとき、株主構成が変わって大法人の完全支配下に入ったとき、所得が伸びて適用除外事業者や17%区分に該当したとき、そしてグループ通算制度を適用したときです。いずれも決算の作業のなかで気づくことになります。

このうち見落とされやすいのが2つめです。自社は何も変わっていないのに、親会社が増資したり、株式が別の大法人に譲渡されたりして、税率だけが変わる。子会社側では変化が見えないため、申告の段階になって判明することがあります。

グループ会社は親会社の情報も確認する

親会社がある会社の申告を受ける場合、私たちは毎期、親会社の資本金と株主構成を確認しています。登記事項証明書を取れば資本金は分かりますし、株主構成は会社に確認します。手間としては小さく、影響としては大きい確認です。

M&Aで親会社が変わった年は特に注意が要ります。買い手が大法人であれば、その期から軽減税率が使えなくなります。買収の交渉をしている段階で、税率が変わることを織り込んでおく必要があります。

判定の記録を残しておく

どういう根拠で軽減税率を適用したのかを、毎期メモとして残しておくことをお勧めしています。資本金の額、株主の一覧、過去3年の所得の推移。この3つを1枚にしておけば、翌期の判定が短時間で終わります。

税務調査で説明を求められた際にも、判定の過程が残っていれば話が早く進みます。判断が絡む項目は、結論だけでなく根拠を残しておくのが基本です。

資本金1億円が分ける5つの制度
01
法人税の軽減税率
年800万円以下の部分が15%になるか、全額23.2%になるか
02
外形標準課税
1億円超だと付加価値割・資本割が加わり、赤字でも事業税が生じる
03
交際費の損金算入
年800万円の定額控除を選べるか、接待飲食費の50%だけか
04
欠損金の繰越控除
所得の全額まで控除できるか、所得の50%までか
05
少額減価償却資産の特例
40万円未満を全額損金にできるか、通常の減価償却になるか
毎期の判定手順
1

期末の資本金を確認する
登記事項と帳簿の資本金の額を突き合わせる。資本準備金とは分けて見る
2

株主構成を確認する
大法人が直接または間接に全株式を持っていないか。複数社の合計でも判定する
3

過去3年の所得を並べる
年平均が15億円を超えていないか。適用除外事業者の判定に使う
4

当期の所得を見る
年10億円を超えていないか。超えていれば17%区分に入る
5

判定の根拠を残す
資本金・株主一覧・過去3年の所得を1枚にまとめて保管する

事例:親会社の増資で税率が変わった子会社

「今期から急に税額が増えたのですが、業績はほとんど変わっていないんです」。従業員8名の設計会社から、決算のあとにご相談をいただきました。資本金は1,000万円で、これまで軽減税率を使ってきた会社です。

数字を追っていくと、課税所得はほぼ前期並みでした。変わっていたのは税率です。年800万円以下の部分が15%から23.2%になっていました。

原因を探ると、親会社にありました。この会社は3年前に大手企業の100%子会社になっており、その親会社が前期に増資して資本金が5億円を超えていたのです。子会社側では何の変化もなく、通知も来ていませんでした。決算の時点で株主構成を確認して初めて分かった形です。

このときお伝えしたのは、翌期以降は判定を先にやる、という順番でした。期首の段階で親会社の資本金を確認しておけば、税額の見込みを立てられます。知らなかったから対応できなかったのではなく、確認する仕組みがなかったという整理です。

いまは決算の3か月前に、親会社の登記事項と株主構成を確認する手順を入れています。税額そのものは変わりませんが、資金の準備が前もってできるようになりました。

よくある質問

資本金1,000万円なら必ず15%が使えますか?
使えるとは限りません。資本金1億円以下は入口の条件で、資本金5億円以上の大法人に完全支配されている場合や、過去3年の所得の年平均が15億円を超える場合は対象から外れます。親会社がある会社は、自社の資本金だけでは判定できないとお考えください。
親会社の持分が99%なら軽減税率は使えますか?
完全支配関係は発行済株式の全部を保有する関係を指すため、99%であれば該当しません。ただし、残りの1%を誰が持っているかによって判定が変わる場合があります。従業員持株会など一定のものは判定から除かれる取扱いがあるためです。株主名簿で確認したうえでご相談ください。
期の途中で増資したら、その期から23.2%になりますか?
判定は各事業年度終了の時に行うため、期末時点で資本金が1億円を超えていれば、その事業年度の全体について軽減税率が使えなくなります。期首から期末までのどの時点で増資したかは問いません。増資の実行日を期末の直後にずらすという選択肢もあります。
設立初年度の800万円の枠はどうなりますか?
事業年度の月数で按分します。800万円を12で割り、事業年度の月数を掛けた金額が枠になります。設立から決算までが6か月なら400万円です。月数は暦に従って数え、1月に満たない端数は1月として切り上げます。
所得が10億円を超えた年は翌期も17%のままですか?
17%区分はその事業年度の所得で判定するため、翌期の所得が10億円以下であれば15%に戻ります。過去3年の平均で判定する適用除外事業者とは、物差しが違う点にご注意ください。両方に該当する場合は、より高い19%が適用されます。
判定を間違えて申告してしまったらどうなりますか?
税額が過少であれば修正申告、過大であれば更正の請求という手続きになります。軽減税率が使えないのに使っていた場合は、差額の本税に加えて過少申告加算税と延滞税がかかる可能性があります。判定に迷いがある場合は、申告の前にご相談ください。

まとめ:資本金は入口で、判定は毎期やり直す

  • 軽減税率の入口は資本金1億円以下。ただしこれだけでは決まらない
  • 資本金5億円以上の大法人に完全支配されていれば、自社の資本金がいくら小さくても対象外
  • 複数の大法人に分散保有されている場合も、合計で全株式なら対象外になる
  • 過去3年の所得の年平均が15億円超なら適用除外事業者で19%。所得が年10億円超の事業年度は17%
  • 年800万円の枠は月割りになる。設立初年度と決算期変更の期は小さくなる

先に手を付けるべきは、税率表を眺めることではなく自社の株主構成を確認することです。税率表は誰が見ても同じですが、判定の結果は会社ごとに違います。

そして、判定は毎期やり直すものです。去年の申告書に15%と書いてあったからといって、今年も同じとは限りません。親会社の資本政策や自社の所得の伸びで、静かに変わっていきます。

税理士法人Light UPでは、決算・申告と月次の記帳をあわせてお引き受けしています。グループ会社の判定や、増資の前後でどれだけ税負担が変わるかの試算も含めて、無料相談で一緒に整理するところからお手伝いします。

法人税の基礎のご相談は初回無料です。実際の数字を見ながら、自社の場合はどうなるかをそのままお話しできます。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」(注1〜注7)
  • e-Gov 法令検索「法人税法」(第66条)
  • e-Gov 法令検索「租税特別措置法」(第42条の3の2)
  • 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」

※本記事は2026年8月時点の法令等に基づく一般的な情報提供です。税制は毎年の改正で変わるため、適用にあたっては最新の情報をご確認ください。個別の判定については税理士にご相談ください。

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