法人税等の勘定科目|納付と還付の仕訳
「法人税を納めたときはどの科目ですか」。「租税公課でまとめてしまっているのですが、問題ありますか」――税金の仕訳についてのご相談は、この2つに集まります。
結論からお伝えすると、税金は損金になるものとならないもので科目を分ける必要があります。法人税、法人住民税、加算税や延滞税は損金になりません。一方、法人事業税、固定資産税、印紙税、自動車税は損金になります。すべてを租税公課にまとめてしまうと、申告書で加算する対象を選び分けられなくなります。
税理士法人Light UPでは、記帳のご相談を受けたとき、税金の科目が分かれているかを最初に見るようにしています。ここが混ざっていると、決算のたびに元帳をさかのぼって分類し直すことになるためです。
この記事では、税金を科目で分ける基準、納付と還付それぞれの仕訳、未払法人税等の計上、中間納付の処理、そして申告書との対応までを、実際に中小企業の記帳と申告を扱っている立場から整理します。
税金は損金になるかどうかで分ける
結論: 税金の科目を決める基準は、損金になるかどうかです。会計上はどれも費用ですが、税務では扱いが分かれるため、記帳の段階で区別しておく必要があります。
損金にならない税金
法人税、地方法人税、法人住民税は損金になりません。これらは所得に対して課される税金であり、所得の計算上控除すれば循環してしまうためです。加算税、延滞税、延滞金、そして罰科金も損金になりません。こちらは制裁としての性質を持つもので、損金にすると制裁の効果が弱まるという考え方によります。損金にならない理由が2種類あるということです。所得に対する税だから除くというものと、制裁だから除くというものです。理由が違うので、条文上も別の規定に置かれています。前者は法人税法38条、後者は同55条が根拠になります。
損金になる税金
法人事業税、特別法人事業税、固定資産税、償却資産税、印紙税、自動車税、不動産取得税、登録免許税は損金になります。これらは所得に対する税ではなく、事業活動に伴って発生する費用としての性質を持つためです。消費税は税抜経理であれば損益に影響せず、税込経理であれば租税公課として損金になります。同じ税金でも性質で扱いが分かれるという構造です。判断に迷ったときは、その税金が所得に対して課されているかを見ると整理できます。固定資産税は資産を持っていることに対して、印紙税は文書を作成したことに対して課されるため、所得とは無関係です。
科目を分けておく理由
損金にならない税金は、申告書の別表四で加算します。すべてを租税公課にまとめていると、どれが加算の対象かを元帳から拾い直すことになります。1年分をさかのぼると数十件になることもあり、決算の作業が増えます。記帳の段階で分けておけば、決算では科目の残高を見るだけで済むということです。科目そのものを増やさなくても、補助科目を設ける方法でも足ります。損金になるもの、ならないものという2つの補助科目があれば、集計は一瞬で終わります。
| 税金 | 損金 | 使う科目の例 |
|---|---|---|
| 法人税・地方法人税 | ならない | 法人税等 |
| 法人住民税 | ならない | 法人税等 |
| 法人事業税・特別法人事業税 | なる(納付した期) | 法人税等 |
| 固定資産税・償却資産税 | なる | 租税公課 |
| 印紙税・登録免許税 | なる | 租税公課 |
| 自動車税・不動産取得税 | なる | 租税公課 |
| 加算税・延滞税・延滞金 | ならない | 租税公課(または雑損失) |
| 源泉所得税(預り金) | 該当しない | 預り金 |
決算での仕訳は未払法人税等を使う
結論: 決算で確定した法人税等は、当期の費用として計上し、相手科目を未払法人税等とします。納付は翌期になりますが、費用は当期に帰属します。
計上のタイミング
事業年度が終わり、所得と税額が確定した時点で費用として計上します。納付は申告期限までに行うため翌期になりますが、その税金は当期の所得に対するものなので、当期の費用です。仕訳は借方に法人税等、貸方に未払法人税等となります。支払った期ではなく、発生した期に計上するという発生主義の考え方がここでも適用されます。この未払法人税等は、申告書では納税充当金という名前で扱われます。会計の科目名と申告書の用語が違うため、初めて申告書を見ると対応が分かりにくい部分です。
赤字でも計上が要る
所得がゼロでも、法人住民税の均等割は発生します。資本金等の額が1,000万円以下で従業者数50人以下であれば、標準税率で年7万円です。赤字だから法人税等の計上は不要と考えて仕訳を省くと、この均等割が翌期の費用に寄ります。赤字の期こそ未払計上を忘れやすいため、決算のチェックリストに入れておく価値があります。均等割は事業所の数だけ発生するため、複数の市町村に拠点がある会社ではさらに金額が増えます。赤字だから納税はないという前提で決算を組むと、この分がまるごと抜けます。
翌期の納付時
翌期に納付したときは、借方に未払法人税等、貸方に現金預金という仕訳になります。この時点では費用が発生しないため、損益には影響しません。ここで誤って法人税等や租税公課で処理すると、二重に費用計上したことになります。未払計上をしたかどうかを確認してから納付の仕訳を切るという手順が要ります。期首の未払法人税等の残高を見れば、前期に計上したかどうかが分かります。残高があるのに費用処理してしまうと、その残高がいつまでも消えずに残ることになります。
中間納付は仮払法人税等で受ける
結論: 中間申告で納付した金額は、確定申告で精算されるまでは仮の状態です。仮払法人税等として資産に計上し、決算で精算します。
納付時の処理
中間納付をしたときの仕訳は、借方に仮払法人税等、貸方に現金預金です。この時点では費用にしません。年税額が確定していない段階では、その金額が最終的にいくらになるか分からないためです。納付の時点で費用処理すると、その期の月次利益が実態より小さく見えます。月次の数字を経営判断に使っている会社では、この違いが影響します。3月決算の会社であれば11月に中間納付があるため、その月だけ利益が大きく落ち込んで見えることになります。実態は変わっていないのに数字だけが動く形です。
決算での精算
決算で年税額が確定したら、仮払法人税等を取り崩します。年税額が中間納付額より大きければ差額を未払法人税等に計上し、小さければ差額は還付されるため未収入金として処理します。中間納付額が年税額を上回ることは珍しくないため、還付の処理も想定しておく必要があります。上半期が好調で下半期に落ちた場合などが該当します。予定申告による中間納付は前期の実績で決まるため、今期の業績が落ちていても金額は変わりません。この構造が、還付が生じる原因になります。
法人税等で直接処理する方法もある
中間納付を仮払法人税等ではなく法人税等で処理し、決算で調整する方法もあります。どちらでも決算の結果は同じですが、月次で見たときの利益が変わります。どちらの方法を採るかを決めて、毎期同じにしておくことが重要で、期によって変えると比較ができなくなります。会計ソフトの初期設定でどちらかになっていることが多いため、設定を確認しておいてください。担当者が交代したタイミングで方法が変わってしまう例もあります。
還付されるときの処理
結論: 中間納付が年税額を上回った場合や、欠損金の繰戻しによる還付を受ける場合は、未収入金として計上します。還付加算金は別に処理します。
未収入金で計上する
決算で還付されることが確定した金額は、借方に未収入金、貸方に法人税等という仕訳になります。実際に入金されたときに未収入金を取り崩します。決算時点で還付額が確定しているため、入金を待たずに計上するのが原則です。還付も発生した期に反映するという考え方は、納付の場合と同じです。還付の入金は申告から数か月後になることもあり、期をまたぐことがあります。未収入金で計上しておけば、入金が翌期になっても当期の決算に正しく反映されます。
還付加算金は益金になる
還付金に付される還付加算金は、雑収入として益金に算入されます。還付される税金そのものは益金になりませんが、加算金は別です。金額は小さいことが多いものの、処理を分けておく必要があります。還付金と還付加算金を1本の仕訳で受けないようにすると、申告書での調整が楽になります。入金の通知には内訳が記載されているので、その金額どおりに分けて仕訳を切ってください。まとめて雑収入にすると、還付金そのものまで益金に含めてしまうことになります。
源泉所得税の還付
預金利息などから源泉徴収された所得税は、法人税から控除できます。控除しきれない場合は還付されます。この処理は別表六(一)で行い、控除を受けるには申告書に記載する必要があります。記載しなければ控除も還付も受けられないため、金額が小さくても手続を省かないでください。金額は年間で数百円ということもありますが、記載自体は難しくありません。預金利息の入金があれば、その都度、源泉徴収された税額を記録しておくと決算で拾えます。
事業税だけ扱いが違う
結論: 法人事業税は損金になりますが、損金になるのは納付した事業年度です。発生した事業年度ではありません。この期ずれが申告書での調整として現れます。
納付した期の損金になる
決算で未払計上した事業税は、その期の損金にはなりません。翌期に納付したときに損金になります。したがって、別表四では計上時に加算し、納付時に減算するという処理になります。同じ地方税でも住民税と事業税で扱いが違うという点が、この論点の要になります。事業税は所得に対する税でありながら損金になるという、例外的な位置づけです。この扱いを知らずに住民税と同じ処理をしてしまうと、所得が2期にわたってずれます。
科目を分けておく必要がある
法人税等の科目にまとめて計上していると、そのうち事業税の部分がいくらかを後から拾えません。補助科目で分けるか、摘要に内容を書いておくことになります。別表五(二)でも税目ごとに記載するため、記帳の段階で分かれていれば転記するだけで済みます。分かれていない場合は、納付書の控えを集めて税目ごとに集計し直すことになります。年に数回の納付でも、拠点が複数あれば件数は増えます。
中間納付した事業税
事業税を中間納付した場合、その金額はその期の損金になります。中間分は納付した期の損金という原則がそのまま適用されるためです。確定分は翌期の損金です。1つの事業年度の事業税が2つの期に分かれて損金になるという形になり、これも科目を分けておく理由になります。中間分と確定分を区別せずに処理していると、どちらがいつの損金かを追えなくなります。摘要に中間分か確定分かを書いておくだけでも、後の確認が楽になります。
申告書との対応を意識する
結論: 記帳した内容は、別表四と別表五(二)に転記されます。科目が整理されていれば転記だけで済み、混ざっていれば分類の作業が発生します。
別表五(二)は税目ごとに書く
別表五(二)の租税公課の納付状況等に関する明細書は、法人税、住民税、事業税、その他に分けて記載します。それぞれについて期首の未納額、当期の発生額、当期の納付額、期末の未納額を追う形です。帳簿が税目で分かれていれば、この表はそのまま作れます。分かれていない場合は、元帳から1件ずつ拾うことになります。この表は前期からの繰越も含むため、前期の申告書も手元に必要です。毎年同じ形で記帳していれば、転記の作業は数分で終わります。
納付の方法によって欄が分かれる
同じ表の中で、納付した金額を充当金取崩しによる納付、仮払経理による納付、損金経理による納付に分けて記入します。決算で未払計上してから翌期に支払った場合は充当金取崩しです。未払計上せずに支払った期に費用処理した場合は損金経理による納付になります。記帳の方法が申告書の記入欄を決めるという関係にあります。したがって、記帳の方法を変えると申告書の書き方も変わります。会計ソフトの設定を変更したときは、申告書側の記入も確認してください。
検算が合わない原因になりやすい
別表四と別表五(一)の検算が合わない原因の多くは、この法人税等の処理にあります。納税充当金の計上と取崩しが対になっていない、事業税の期ずれを反映していない、といった誤りです。科目を分けて記帳しておけば、この種の誤りは大きく減ります。逆にいえば、検算が合わないときは記帳の段階に原因があることが多いということです。申告書だけを見直しても見つからない場合は、元帳に戻って確認してください。申告書の作成については、別表の役割を整理した記事もあわせてご覧ください。
消費税の処理は経理方式で変わる
結論: 消費税は税抜経理か税込経理かで損益への影響が変わります。税抜経理であれば損益に出ず、税込経理であれば租税公課として損金になります。
税抜経理の場合
売上と仕入のそれぞれについて、消費税を仮受消費税と仮払消費税で受けます。決算でこれらを相殺し、差額を未払消費税等として計上します。消費税そのものは損益に現れないため、租税公課の科目も使いません。税抜経理では消費税が損益に影響しないという点が、業績の比較をしやすくする理由の1つです。税率が変わっても損益に影響しないため、期をまたいだ比較でも数字が揃います。会計ソフトを使っていれば、設定を選ぶだけで自動的に処理されます。
税込経理の場合
売上も仕入も税込みで計上し、納付する消費税を租税公課として費用処理します。損金になるのは納付した事業年度ですが、未払計上した場合はその期の損金にできる取扱いもあります。どちらの方式を採るかで、少額減価償却資産の判定にも影響するという点は見落とされやすい部分です。税込経理では税込金額で基準額を下回るかを判定するためです。基準額は令和8年4月1日以後に取得したものから40万円未満で、標準税率であれば税抜36万円台の資産が税込で40万円を超えることになり、特例を使えなくなります。少額資産を多く取得する会社では、この差が金額として現れます。
事例:租税公課にまとめていた会社の決算
従業員14名の会社で、決算の準備をしていた際に租税公課の残高を確認しました。年間で約280万円が計上されていました。
内訳を見ると、複数の税目が混ざっていました。
元帳をさかのぼる作業が必要になりました。
固定資産税、印紙税、自動車税といった損金になるものに加えて、延滞税と法人住民税の均等割が同じ科目に入っていました。損金にならないものを別表四で加算する必要があるため、1件ずつ内容を確認して分類する作業が発生しています。
件数は年間で60件を超えていました。摘要に内容が書かれていないものもあり、納付書の控えを探して確認した項目もあります。
翌期からは、法人税等、租税公課、そして損金にならない税金用の補助科目を設けて記帳する形に変えました。決算の作業時間が数時間から数十分に減ったという結果になっています。科目を分けることは、記帳のときの手間より決算のときの手間を減らす投資だといえます。
よくある質問
法人税を納めたときの科目は何ですか?
租税公課にまとめてはいけませんか?
中間納付はどう処理しますか?
事業税はいつ損金になりますか?
赤字でも法人税等の計上は必要ですか?
まとめ:記帳の段階で分けておく
税金の科目を決める基準は、損金になるかどうかです。法人税、地方法人税、法人住民税、加算税、延滞税は損金になりません。法人事業税、固定資産税、印紙税、自動車税は損金になります。この区別を記帳の段階でしておけば、決算では科目の残高を見るだけで済みます。
処理の流れも決まっています。決算で確定した税額は未払法人税等として計上し、納付は翌期にその科目を取り崩す。中間納付は仮払法人税等で受けて、決算で精算する。この型を決めて毎期同じにしておけば、月次の数字も読めるようになります。
そして、事業税だけは納付した事業年度の損金になります。決算で未払計上した分は当期の損金にならず、翌期に納付したときに損金になる。この期ずれが別表四での調整として現れるため、法人税・法人住民税と科目を分けておく必要があります。
赤字の期こそ未払計上を忘れやすいという点も押さえておいてください。所得がゼロでも均等割は発生します。
税理士法人Light UPでは、記帳の科目設計から決算の作業効率まで、あわせてご相談を承っています。決算のたびに元帳をさかのぼっている状態であれば、お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「法人税法」(昭和四十年法律第三十四号)第38条、第40条、第55条
- e-Gov 法令検索「地方税法」(昭和二十五年法律第二百二十六号)第52条、第312条
- e-Gov 法令検索「国税通則法」(昭和三十七年法律第六十六号)第60条、第65条、第66条
- 国税庁「法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)」




