決算月の決め方|設立時・変更時の視点
「3月が多いと聞いたので、そのまま3月にしました」「決算と繁忙期が重なって、毎年たいへんな思いをしています」――決算月の話になると、この2つがよく出てきます。
結論からお伝えすると、決算月は自由に決められます。3月に合わせる必要はありません。判断の軸は、繁忙期と重ならないか、棚卸しがしやすいか、納税の時期に資金があるか、決算前に対策を打つ時間があるか、そして設立時なら消費税の免税期間を長く取れるかの5つです。すでに設立している会社でも、定款変更と届出で変更できます。
税理士法人Light UPでは、決算月は一度決めると毎年の業務の形を決めてしまう項目だと考えています。何となく設立月の前月にした、という会社が本当に多いところです。
この記事では、5つの判断軸、設立時に消費税の免税期間をどう見るか、変更するときの手続きと注意点まで整理します。
決算月は会社が自由に決められる
結論: 事業年度は定款で定めるもので、会社が自由に決められます。制約は1年を超えられないことだけで、月末である必要さえありません。
e-Govの法令検索で法人税法13条を引くと、事業年度は「法人の財産及び損益の計算の単位となる期間で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるものに定めるもの」とされています。定款に書けば、それが事業年度になります。
20日締めでも構わず、登記事項でもない
多くの会社は月末を決算日にしていますが、20日や25日を決算日とすることもできます。締め日と揃えたい業種では、この形が選ばれることがあります。
ただし、月末以外にすると各種の集計が煩雑になります。特段の理由がなければ月末が無難です。
決算月は登記に載りません。変更しても登記の手続きは不要で、定款の変更と税務署等への届出で完了します。
変えるハードルは、思われているより低いというのが実務での感覚です。
1年を超えられないことと、定款に書き忘れているケース
事業年度は1年以内でなければなりません。半年ごとに区切ることはできますが、申告の回数が増えるため、通常は1年で設定します。
まれに、定款の事業年度の定めと実際の申告がずれている会社があります。設立時の定款をそのままにして、途中から運用だけ変えていた場合です。
この状態は、確認された際に説明が必要になります。定款の写しと申告書の事業年度が一致しているかを、一度見ておくことをお勧めします。
3月に合わせる必要はない
結論: 日本では3月決算の会社が最も多いものの、それは国の会計年度や取引先の慣行に合わせた結果であり、中小企業が従う理由にはなりません。むしろ3月決算は、税理士事務所も税務署も最も混み合う時期にあたります。
多数派である理由と、混み合う時期に重なること
国や自治体の会計年度が4月から3月であること、上場企業の多くが3月決算であること、学校年度と揃うこと。こうした事情が積み重なっています。
補助金や制度融資の年度も4月始まりが多いため、それに合わせやすいという面はあります。
3月決算の申告期限は5月末です。この時期は税理士事務所が最も忙しく、じっくり相談する時間を取りにくくなります。
決算の直前に相談したいことがあっても、対応が後回しになりがちです。空いている時期に決算を置くほうが、丁寧に見てもらえるという現実的な利点があります。
取引先に合わせる必要があるか。12月決算の事情
親会社や主要な取引先と決算月を揃えたい、という相談を受けることがあります。連結の対象になっている場合を除けば、揃える必要はほとんどありません。
請求や支払のサイクルは締め日で回っており、決算月とは別のものです。
12月決算は、個人事業からの法人化で選ばれることがあります。個人の会計期間と揃うためです。
ただし申告期限の2月末は、所得税の確定申告期と重なります。こちらも混み合う時期です。
決め方の5つの軸
結論: 決算月は、繁忙期・棚卸し・納税資金・決算対策の時間・消費税の免税期間という5つで判断します。すべてを満たす月がないことも多いため、自社にとって重い順に優先します。
| 判断の軸 | 見ること |
|---|---|
| 繁忙期 | 決算作業と現場の忙しさが重ならないか |
| 棚卸し | 在庫がいちばん少ない時期はいつか |
| 納税資金 | 決算日の2か月後に資金の余裕があるか |
| 決算対策の時間 | 利益の見通しが立ってから手を打つ時間があるか |
| 消費税(設立時) | 免税期間を長く取れる月はどこか |
在庫を持たないサービス業なら棚卸しの軸は軽くなり、資金繰りの軸が重くなります。小売業や製造業では、棚卸しの負担が大きく響きます。
すべてを満たす月は、たいてい見つかりません。重い順に2つが満たせれば十分だと考えています。
重い順を決めるときは、直近3期の決算作業を思い出すのが早道です。どこで時間を取られ、どこで数字が出ずに困ったか。その記憶が、そのまま自社にとって重い軸になります。
繁忙期と棚卸しを避ける
結論: 決算日の前後2か月は、残高の確認、棚卸し、請求書の整理といった作業が集中します。現場の繁忙期と重なると、決算の精度が落ちるうえ、対策を考える余裕もなくなります。
繁忙期の直後を期首にし、棚卸しは在庫の少ない月に
繁忙期が終わった直後を期首にすると、期の前半で売上の大半が確定します。残りの期間で利益の見通しが立つため、決算前に打てる手が増えます。
逆に繁忙期が期末にあると、着地が読めないまま決算日を迎えることになります。
実地棚卸しは、在庫が少ないほど早く正確に終わります。季節商品を扱う業種では、在庫が底になる時期があるはずです。
年末商戦を抱える小売業が12月決算にすると、最も忙しい時期に棚卸しをすることになります。現場が回らない時期に決算日を置かない。
業種ごとの例
- 建設業:工期の切れ目。年度末の完成が集中する3月は避けたい業種のひとつです
- 飲食業:忘年会・新年会が入る12月と1月を外します
- 小売業:セールと在庫の山が重ならない月を探します
- 士業や受託型のサービス業では、案件の締めが集中する時期を外します
自社の在庫と受注の年間の動きを、月ごとにグラフにしてみると分かりやすくなります。山と谷がはっきり出る業種であれば、谷の月が決算日の候補です。
納税の時期に資金があるか
結論: 法人税等の申告と納付は、決算日の翌日から2か月以内です。国税庁は申告期限について「事業年度終了の日の翌日から2か月以内」と示しており、この時期に資金が薄い月を決算月にすると、納税で資金繰りが詰まります。
2か月後の資金を見る。消費税の納付も同じ時期
3月決算なら5月末、9月決算なら11月末が納付の期限です。その月に賞与や大きな支払が重なっていないかを確認します。
納税は待ってもらえません。資金の山と谷を年間で並べて、谷に納税が来ない月を選びます。
法人税だけでなく、消費税の確定申告と納付も同じ期限です。両方が同じ月に出ていくため、金額は想像より大きくなります。
中間申告がある場合は、その時期も年間の資金計画に入れておきます。
賞与月と重ならないように
夏の賞与と納税が重なる、という組み合わせは実務でよく見かけます。決算月をひとつずらすだけで避けられることがあります。
年間の支払いの山を並べると、納税を置けない月が先に分かります。賞与、社会保険料の年度更新、労働保険料、大口の仕入れ。これらが集中する月の2か月前を決算日にしない、という見方をすると候補は自然に絞られます。
設立時は消費税の免税期間で考える
結論: 資本金1,000万円未満で設立した法人は、原則として設立1期目と2期目が消費税の免税事業者になります。設立月の前月を決算月にすると1期目が最長になり、免税の期間を長く取れます。
1期目を最長にする置き方と、2期目の判定
4月に設立した会社が3月決算にすれば、1期目はほぼ12か月です。同じ会社が5月決算にすると、1期目は1か月ほどで終わってしまいます。
免税の恩恵は事業年度の単位で決まるため、この差は小さくありません。
2期目については、前事業年度開始の日から6か月間の課税売上高と給与等支払額によって判定されます。両方が1,000万円を超えると、2期目から課税事業者になります。
なお、前事業年度が短い場合にはこの判定を行わない扱いがあります。1期目を意図的に短くして2期目の免税を確保する、という設計が語られるのはこのためです。
資本金1,000万円以上なら、そもそも関係がない
新設時の資本金の額または出資の金額が、事業年度開始の日において1,000万円以上であれば、ここまでの設計は働きません。消費税法12条の2(新設法人の納税義務の免除の特例)により、基準期間のない設立1期目と2期目は、決算月をどこに置いても課税事業者になるためです。
資本金を1,000万円未満で設立する会社が多いのは、この規定を踏まえてのことです。2期目が始まる前に増資する場合も、その時点の資本金で判定される点は押さえておきたいところです。
インボイス登録をするなら関係がない
適格請求書発行事業者の登録をすれば、免税期間中であっても課税事業者になります。取引先が課税事業者中心であれば、登録しない選択が難しい場面もあります。
免税期間を最大化する設計は、インボイス登録をしない場合にのみ働きます。ここを踏まえずに決算月を決めると、想定した効果が出ません。
登録するかどうかは、取引先の構成で決まります。相手が課税事業者中心であれば登録しないという選択は取りにくく、消費者向けが中心であれば登録しない余地が残ります。決算月を決める前に、この見通しを立てておくことです。
決算対策の時間を確保する
結論: 決算前にできることは、決算日の2〜3か月前までに着地が見えていて初めて選べます。繁忙期が期末にある会社では、この時間が取れません。
上半期で読める形にし、3か月前に見えているか
期の前半で売上の6割から7割が確定する形にできると、下半期の早い段階で着地が見えます。繁忙期を期の前半に置くという発想です。
季節変動の小さい業種ではあまり関係ありませんが、変動の大きい業種ほど、この置き方が働きます。
利益の着地が3か月前に読めれば、設備投資の前倒し、決算賞与の検討、共済制度の活用といった選択肢が残ります。
期末の1か月前に判明しても、できることはほとんどありません。
税理士と話せる時期か
3月決算・12月決算は、税理士事務所が最も混み合う時期と重なります。決算前の相談に時間を取りにくいのが実情です。
繁忙期を外した決算月にすると、事前の打ち合わせが取りやすくなります。
相談の質は、時間が取れるかどうかで変わります。決算の2か月前に1時間の打ち合わせができれば、選べる手はかなり増えます。混み合う時期を外すという判断は、税額そのものよりも打ち合わせの密度に現れます。
決算月が決めているもの
結論: 決算月は決算作業の時期だけでなく、役員報酬を決める時期、納税の時期、事業計画の起点、そして各種の届出の期限をまとめて決めています。年間の業務の形そのものを決める項目です。
決算月を「年に一度の作業日」としてだけ見ていると、影響の範囲を見誤ります。実際には、1年の業務がこの日を基準に並びます。
役員報酬を決める時期と、事業計画の起点
役員報酬を改定できるのは、事業年度開始の日から3か月を経過する日までです。3月決算なら6月末、9月決算なら12月末が期限になります。
この時期に翌期の見通しが立っているかどうかで、報酬の置き方が変わります。繁忙期の真っただ中に決めることになる会社は、判断が雑になりがちです。
期首は、計画を立て直す自然な区切りです。ここが繁忙期に重なると、計画づくりの時間が取れません。
計画を立てる余裕のある月を期首にする、という発想で決めている会社もあります。
届出の期限も連動する
消費税の各種届出の多くは、適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までが期限です。簡易課税を選ぶ、あるいはやめる判断も、決算月を基準に期限が決まります。
制度の切り替えを検討する時期が、決算月によって前後する。このつながりを知っておくと、年間の予定が組みやすくなります。
確認しておきたいのは、消費税の簡易課税や課税事業者の選択、そして各種の特例の届出です。いずれも課税期間の開始前が期限なので、決算月が変われば締切も動きます。年間の予定表に、決算月から逆算した届出の期限を書き込んでおくと抜けません。
決算月を変更する手続き
結論: 決算月の変更は、株主総会の特別決議による定款変更と、税務署・都道府県・市町村への異動届出書の提出で完了します。登記は不要です。
- 株主総会を開く:定款の事業年度の定めを変更します。特別決議が必要です
- 議事録を作成する:変更後の事業年度と、いつから適用するかを記載します
- 異動届出書を提出する:税務署、都道府県、市町村へ、定款変更の議事録の写しを添えて提出します
- 変更した期の申告をする:変更の年は事業年度が1年未満になるため、その期間で申告します
- 会計ソフトの設定と、取引先への通知を行います
変更した期は1年未満になる。期の途中でも変更でき、費用も軽い
3月決算を9月決算に変えると、その期は4月から9月までの6か月になります。この短い期間で申告が必要です。
均等割は月割りで計算されるため、期間が短ければその分だけ小さくなります。
すでに始まっている事業年度の途中でも変更できます。決算日を早める方向であれば、その時点で区切ることになります。
登記が不要なため、登録免許税は発生しません。議事録の作成と届出だけですので、手続きの費用は限定的です。
許認可や補助金の届出も確認する
許認可を受けている業種では、事業年度終了後に報告書の提出が必要なものがあります。建設業の決算変更届のように、期限の定められた届出です。
補助金の交付を受けている場合も、事業年度を基準にした報告が求められることがあります。変更する前に、提出物の一覧を確認しておきます。
建設業のほかにも、運送業や産業廃棄物処理業など、事業年度を基準にした報告が求められる許認可があります。変更の届出を出す前に、監督官庁への提出物を一覧にしておくことです。
変更するときに気をつけること
結論: 決算月の変更は手続きが軽い一方で、消費税の課税判定、繰越欠損金の期限、金融機関への説明という3点に影響します。目的なく変えると、かえって不利になることがあります。
消費税の判定が動き、繰越欠損金の期限も変わる
事業年度が変わると、基準期間や特定期間の取り方も変わります。免税と課税の切り替わる時期がずれるため、事前に確認が必要です。
課税の判定だけでなく、赤字を使える期間にも影響します。
欠損金の繰越期間は事業年度の数で数えます。1年未満の事業年度が挟まると、10年で数える期間が実質的に短くなります。
繰越欠損金が多い会社では、この影響を試算してから決めます。
金融機関への説明と、頻繁な変更を避けること
決算月を変えると、比較する期間がずれます。金融機関から見れば、前期と当期を単純に並べられなくなるということです。
利益を良く見せるために変更したと受け取られないよう、変更の理由を先に伝えておくほうが安全です。
説明できる理由があるかどうかは、変更の回数にも関わります。
毎年のように変えると、数字の比較ができなくなります。変更は、はっきりした理由があるときに限ります。
社内の運用も切り替わる
給与の締め日、賞与の支給時期、人事評価の期間。これらを事業年度に合わせている会社では、決算月の変更が社内の運用にも及びます。
会計だけの話として進めると、後から調整が必要になります。変更の影響範囲を先に洗い出しておくほうが、混乱が少なくて済みます。
見直す範囲は、給与や評価だけではありません。年次有給休暇の付与基準日、目標管理の期間、棚卸しの実施月。事業年度に紐づけているものを洗い出してから、変更の時期を決めることになります。
業種別に見た決算月の置き方
結論: 決算月の適地は業種によって傾向があります。在庫を持つ業種は在庫が底になる月、季節変動の大きい業種は繁忙期の直後を期首にする月が、それぞれ候補になります。
小売業・飲食業と、建設業・工事業
年末年始とセールの時期を外します。在庫が最も少なくなる月を探すと、棚卸しの負担が軽くなります。
飲食業では、宴会需要が落ち着く時期を期末にする形がよく見られます。売上の山が期の前半に来るため、着地も読みやすくなります。
工期の切れ目に合わせます。年度末の完成が集中する業種では、3月決算にすると完成工事高の計上と決算作業が重なります。
未成工事支出金の残高が少ない時期を選べると、集計の手間も減ります。
製造業・卸売業と、サービス業・士業
原材料と製品の在庫が両方少ない月を探します。生産の閑散期があれば、その時期が候補になります。
在庫の重さが変われば、見る軸そのものが変わります。
在庫がないため、資金繰りと繁忙期の2つで決められます。案件の締めが集中する時期を外し、計画を立てる余裕のある月を期首にします。
在庫の軸が要らない業種ほど、選択の幅は広いということでもあります。
よくある相談事例
小売業|年末商戦と棚卸しが重なっていた/建設業|納税月に資金が薄かった
12月決算の小売業で、最も忙しい時期に実地棚卸しを行っていた会社です。作業が深夜に及び、精度にも不安がありました。
在庫が底になる時期を確認し、決算月を変更しています。手続き自体は1か月ほどで終わり、翌年から棚卸しの負担が大きく変わりました。
3月決算の建設業で、5月末の納税時期に入金が細る月が重なっていたケースです。毎年、納税資金の手当てに追われていました。
年間の資金繰り表を作り、資金の厚い月から逆算して決算月を見直しました。納税のたびに借入を起こす状態から抜けています。
士業事務所|設立月の前月にしていなかった/製造業|欠損金の期限が縮んだ
4月設立で5月決算としていた事務所です。1期目が1か月ほどで終わり、消費税の免税期間を1年近く失っていました。
設立前に相談があれば選べた項目でした。登記を済ませてから税理士を探した場合に起きやすい形です。
決算月の変更にあたり、繰越欠損金の残高が大きい会社でした。1年未満の事業年度が挟まることで、繰越の期間が実質的に短くなります。
試算のうえ、変更の時期をずらす判断をしています。手続きが簡単だからといって、影響が小さいとは限りません。
よくある質問
決算月は何月がよいですか?
3月決算にしないと不都合がありますか?
決算月の変更に費用はかかりますか?
変更した年の決算はどうなりますか?
設立時に決算月を間違えるとどうなりますか?
まとめ:多数派ではなく、自社の年間の動きで決める
- 決算月は定款で自由に決められます。制約は1年を超えられないことだけです
- 3月に合わせる必要はありません。むしろ混み合う時期にあたります
- 判断の軸は、繁忙期・棚卸し・納税資金・決算対策の時間・消費税の免税期間の5つです
- 繁忙期の直後を期首にすると、期の前半で着地が読めて対策の時間が残ります
- 設立時は、設立月の前月を決算月にすると1期目が最長になります。ただし資本金1,000万円以上の新設法人やインボイス登録をする場合は関係ありません
- 変更は定款変更と届出で完了します。登記は不要です
すでに設立している会社でも、毎年決算のたびに無理をしているなら見直す価値があります。手続きの軽さのわりに、その後の何十年かが変わる項目です。
決算月の見直しや、設立時の設定について、税理士法人Light UPの無料相談でご一緒します。
【メタディスクリプション】
決算月の決め方を、繁忙期・棚卸し・納税資金・消費税の免税期間という5つの軸で整理しました。設立後に変更する手続きと注意点も解説します。




