青色申告と白色申告の違い|どちらを選ぶか
「白色のほうが簡単だと聞いたので、そのままにしています」。「帳簿を付けなくていいなら白色でいいのでは、と思っていました」――開業して2年目の方から、この2つはよくいただくお話です。
結論からお伝えすると、青色申告と白色申告の差は手間ではなく特典にあります。白色申告にも記帳と帳簿保存の義務があるため、実際に増える作業は貸借対照表を作る部分だけです。一方で青色には、最高65万円の特別控除、赤字の3年繰越、家族への給与を必要経費にできる仕組みがあります。
税理士法人Light UPでは、この2つを比べるときに見るのは控除額ではなく、その事業に赤字の年が来る可能性があるかどうかだと考えています。黒字が続くなら控除額の差ですが、赤字が出た年に繰り越せるかどうかは、金額では測れない差になります。
この記事では、両者の違いを控除・帳簿・赤字の扱い・家族への給与の4点で比較し、どの規模から青色に切り替える価値があるのかを、実際に個人事業主の申告を代行している立場から整理します。
違いは手間より特典の有無にある
結論: 青色申告と白色申告の実質的な違いは、青色申告特別控除・純損失の繰越し・青色事業専従者給与・貸倒引当金という4つの特典が使えるかどうかです。記帳と帳簿保存の義務は、どちらにもあります。
白色にも記帳の義務がある
国税庁の「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」では、記帳・帳簿等の保存制度の対象となる方を「事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方」としています。所得税の申告が必要ない人も対象です。
白色なら帳簿が不要というのは、平成26年より前の制度を指した説明です。現在は当てはまりません。
保存の期間も大きく変わらず、増えるのは貸借対照表の作成だけ
同ページによれば、白色申告の場合も、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿は7年、それ以外の帳簿は5年、請求書や領収書などの書類は5年の保存が必要です。
青色申告でも原則7年(一部の書類は5年)ですから、保存の負担はほぼ同じです。
青色申告で55万円・65万円の控除を受けるには、複式簿記による記帳と貸借対照表の添付が必要になります。ここが白色との実務上の差です。
ただし会計ソフトを使えば、仕訳を入れた時点で貸借対照表は自動で作られます。手間の差は、電卓と表計算ソフトの差くらいまで縮んでいると考えてください。
10万円控除なら簡易な記帳でもよい
複式簿記が難しいと感じる場合は、青色申告のまま10万円控除を選ぶ方法もあります。簡易な記帳で足ります。
この場合でも、赤字の繰越しと専従者給与は使えます。白色のままにしておく理由は、さらに小さくなります。
簡易な記帳とは、現金出納帳など決まった帳簿を付ける方式です。複式簿記の知識がなくても始められます。まず10万円控除で青色に入り、慣れてから65万円を目指すという進め方もあります。
4つの違いを一覧で比べる
結論: 青色申告と白色申告の差は、特別控除・赤字の繰越し・家族への給与・貸倒引当金の4点に集約されます。金額に置き換えると、事業の状況によって数万円から数十万円の差になります。
比較表と、特別控除は毎年の差になること
違いは4つに絞れます。特別控除、赤字の繰越し、家族への給与、貸倒引当金。どれも金額に直結するもので、記帳の手間の差より結果への影響が大きい部分です。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 最高65万円(要件により55万円・10万円) | なし |
| 赤字の繰越し | 翌年以後3年間 | できない |
| 赤字の繰戻し | 前年分に繰り戻して還付を受けられる | できない |
| 家族への給与 | 届出の範囲内で必要経費に算入 | 事業専従者控除(配偶者86万円・その他50万円が上限) |
| 貸倒引当金 | 年末の貸金の5.5%以下を必要経費に | 個別評価のみ |
| 記帳 | 複式簿記(10万円控除なら簡易でも可) | 簡易な記帳 |
| 帳簿の保存 | 原則7年 | 法定帳簿7年・その他5年 |
| 事前の申請 | 承認申請書の提出が必要 | 不要 |
| 決算書 | 青色申告決算書(4枚) | 収支内訳書(2枚) |
所得税と住民税を合わせた実効的な負担率が20%の方であれば、65万円の控除で年13万円前後の差です。30%なら約19万円になります。
1年で見れば大きくなくても、事業を続ける限り毎年積み上がります。
赤字の繰越しは金額で測れない。貸倒引当金は業種を選ぶ
黒字が続いている間は差が出ませんが、赤字の年が1度でもあると扱いが分かれます。白色ではその赤字が翌年に持ち越せません。
設備投資をした年、事業を拡大した年、取引先を失った年。どの事業にも起こり得ます。
売掛金の残高が大きい業種では、青色申告の貸倒引当金が使えます。現金商売中心の業種にはほとんど関係がありません。
国税庁のタックスアンサーNo.2070「青色申告制度」によれば、事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者は、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金として必要経費に算入できます。金融業の場合は3.3%です。
卸売業や建設業のように、掛売りが数か月分たまる業種では、この繰入額がまとまった金額になります。白色申告では、個別に貸倒れが見込まれるものしか計上できません。
青色申告特別控除は3段階に分かれる
結論: 青色申告特別控除には65万円・55万円・10万円の3段階があり、記帳の方法と申告の仕方で決まります。期限内申告は55万円以上を受けるための必須要件です。
55万円の要件
国税庁のタックスアンサーNo.2072「青色申告特別控除」は、55万円控除の要件として、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること、正規の簿記の原則により記帳していること、そして「その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること」を挙げています。
3つのうち1つでも欠けると10万円になります。
65万円に上げる2つの方法
同タックスアンサーによれば、65万円の控除を受けるには55万円の要件に加えて、仕訳帳および総勘定元帳について優良な電子帳簿の要件を満たして保存し届出書を提出するか、確定申告書等の提出を期限までにe-Taxで行うかのいずれかが必要です。
実務では後者を選ぶ方が大半です。電子申告に切り替えるだけで済みます。
所得が少ない年は控除も頭打ち。白色にこの控除はない
事業所得と不動産所得の合計が55万円より少ない場合、その合計額が控除の限度になります。控除で赤字を作ることはできません。
開業初年度など、所得が小さい年には控除の効果も小さくなります。
そもそもこの控除は、白色申告には用意されていません。
白色申告には特別控除に相当する制度がありません。同じ所得であれば、その分だけ課税所得が大きくなります。
赤字の扱いがいちばん大きな差になる
結論: 青色申告では、損益通算してもなお残る純損失を翌年以後3年間繰り越して各年の所得から控除できます。白色申告にはこの制度がなく、赤字はその年で消えます。
純損失の繰越しの仕組み
国税庁のタックスアンサーNo.2070「青色申告制度」によれば、事業所得などに損失があり、損益通算をしてもなお控除しきれない純損失が生じたときは、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年分の所得金額から控除できます。
赤字の年に納める税金はゼロですが、その赤字は翌年以降の税金を減らす形で残ります。
前年に戻す方法もある。開業初年度で差が出やすい
前年も青色申告をしていれば、純損失を前年分に繰り戻して所得税の還付を受けられます。前年に納めた税金がある場合に限られます。
繰り越すか繰り戻すかは、翌年以降の見通しで判断します。
開業した年は、設備の購入や広告費が先行して赤字になりがちです。この赤字を繰り越せるかどうかで、2年目・3年目の税額が変わります。
「初年度は売上が小さいから白色でいい」という判断が、実は最も損をしやすい選択になります。
申告を続けることが条件
繰越控除を受けるには、損失が生じた年に期限内で申告し、その後も連続して確定申告書を提出している必要があります。赤字の年こそ申告を出す意味があります。
赤字の年に申告を出し忘れると、その年の損失は繰り越せません。所得がないから提出は要らない、という理解でつまずく場面です。繰り越したい年もその後の年も、期限内に申告を出しておくことになります。
家族への給与の扱いも分かれる
結論: 青色申告では、届出の範囲内で家族への給与を全額必要経費にできます。白色申告では事業専従者控除となり、配偶者86万円・その他の親族1人50万円が上限です。
青色事業専従者給与の要件と、労務の対価として妥当な範囲
国税庁のタックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」によれば、青色事業専従者に該当するのは、生計を一にする配偶者その他の親族で、その年の12月31日現在で15歳以上、かつその年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事している人です。
届出書の提出期限は、その年の3月15日(1月16日以後に開業した場合や新たに専従者ができた場合は、その日から2か月以内)です。
届出を出せばいくらでもよいわけではありません。労務の対価として相当と認められる金額であることが要件で、過大な部分は必要経費になりません。
同じ仕事を外部に頼んだらいくら払うか。ここが判断の起点です。
白色は定額の控除。どちらも扶養からは外れる
白色申告の事業専従者控除は、実際の支払額にかかわらず配偶者86万円・その他の親族1人につき50万円が上限です。月額に直すと配偶者で7万円強になります。
配偶者が本格的に事業を手伝っている場合、この上限では実態に合いません。加えて、事業専従者控除の額は事業所得等を専従者の数に1を足した数で割った金額が限度にもなるため、所得が小さい年は86万円に届かないこともあります。
青色事業専従者として給与を受ける人、白色の事業専従者控除の対象になる人は、いずれも配偶者控除や扶養控除の対象になりません。二重には使えない設計です。
給与を払って経費にする効果と、控除を失う影響を並べて比べる必要があります。
切り替えを検討する目安は3つある
結論: 白色から青色への切り替えを検討する目安は、所得が安定して出始めたとき、家族が事業を手伝い始めたとき、赤字が出る可能性のある投資を予定しているときの3つです。
所得の水準、家族の関与、投資の予定で見る
所得が年100万円を超えてくると、65万円の特別控除による差が実感できる規模になります。所得税・住民税・国民健康保険料のいずれにも影響するためです。
配偶者や親族が事業を手伝い始めたら、白色の86万円という上限が壁になります。この時点で切り替えを考える方が多くなります。
店舗の開設、設備の購入、人の採用。赤字が出る可能性のある動きを予定しているなら、その前年までに青色にしておきます。
赤字が出てから申請しても、その年には間に合いません。
迷うなら10万円控除から始める
複式簿記に不安があるなら、青色申告のまま10万円控除で始める方法があります。赤字の繰越しと専従者給与は使えるため、白色より不利になる点はありません。
まず青色の枠に入ってから、控除額を上げていくという順番でも構いません。
10万円控除であれば、複式簿記も貸借対照表も要りません。それでも赤字の繰越しや専従者給与といった特典は使えます。まず入っておいて、記帳が整った年に55万円・65万円へ上げる。この順番であれば、期限を逃す心配もありません。
切り替えには期限がある
結論: 白色から青色に切り替えるには、青色申告をしようとする年の3月15日までに承認申請書を提出します。開業した年は、開業日から2か月以内が期限です。
期限は申告する年の3月15日。開業年は2か月以内
国税庁の税務手続案内「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」では、提出時期を「青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで」としています。
令和9年分から青色にしたいなら、令和9年3月15日が期限です。令和10年3月の確定申告のときに出しても、その年分には間に合いません。1年分早く動きます。
1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内です。9月1日開業なら10月31日まで。開業届と同時に出すのが確実でしょう。
承認の通知は届かない。一度やめると1年戻れない
同案内の備考には、承認を受けようとする年の12月31日までに処分の通知がなかったときは承認されたものとみなされる旨が記載されています。連絡がないのが通常の状態です。
青色申告の取りやめ届出書を出した場合、その日以後1年以内は再申請できません。事業を縮小する年があっても、取りやめずに10万円控除で続けるほうが選択肢を残せます。
提出する決算の書類が違う
結論: 白色申告では収支内訳書(2枚)を、青色申告では青色申告決算書(4枚)を確定申告書に添付します。青色申告決算書には、月別の売上や減価償却の明細、貸借対照表が含まれます。
収支内訳書と、4枚で構成される青色申告決算書
白色申告の収支内訳書は、売上と経費の科目別の金額、専従者控除、期末の在庫などを記入する様式です。1年間の結果だけを示す形になっています。
1枚目が損益計算書、2枚目が月別の売上と仕入、給料賃金の内訳、3枚目が減価償却費と地代家賃の明細、4枚目が貸借対照表です。
月別の数字を書く欄があるため、記帳が月単位でまとまっていないと埋められません。逆にいえば、この様式を埋められる状態なら経営の把握もできています。
10万円控除でも貸借対照表は不要。会計ソフトは両方に対応
青色申告のうち10万円控除を選ぶ場合、貸借対照表の記入は求められません。損益計算書の部分だけで足ります。
どちらの様式でも、作る道具は同じで構いません。切り替えを理由にソフトを入れ替える必要はありません。
収支内訳書も青色申告決算書も、主要な会計ソフトが自動で作成します。切り替えたからといって、書類を手で書き直す作業が発生するわけではありません。
税額以外に影響する場面もある
結論: 申告の内容は、所得税と住民税だけでなく、国民健康保険料の算定、融資の審査、各種の所得証明にも使われます。控除の有無は、これらの場面にも波及します。
国民健康保険料は所得を基礎にし、融資では帳簿の質が見られる
国民健康保険料は前年の所得を基礎に計算されます。青色申告特別控除を引いた後の所得が基礎になるため、保険料にも影響します。
所得税・住民税・国民健康保険料の3つに同時に関わる。これが控除の実際の重みです。
金融機関が創業融資や運転資金を検討するとき、確定申告書と決算の資料を確認します。貸借対照表がある青色申告決算書のほうが、事業の状態を説明しやすい資料になります。
「白色の収支内訳書だけでは判断材料が足りない」と言われた例もあります。
所得証明が必要になる場面
保育所の申込み、住宅ローンの審査、各種の給付金の申請。いずれも申告の内容が基礎になります。
申告をしていない期間があると、証明そのものが出せません。
住宅ローンの審査、保育園の申込み、賃貸の入居審査。いずれも所得の額で判断されます。特別控除で所得が下がることは税負担には有利ですが、これらの場面では逆に働くことがあります。予定がある年は、順番を考えて動くことです。
事例:白色から青色へ切り替えた飲食店
個人で居酒屋を営む方から、開業4年目にご相談をいただきました。「配偶者に手伝ってもらっているのですが、86万円までしか経費にできないと聞いて」というお話でした。
配偶者は週5日、開店から閉店まで店に入っていました。同じ勤務内容でアルバイトを雇えば、年間200万円を超える水準です。実態と控除額が合っていませんでした。
その年の3月15日までに承認申請書を提出し、あわせて青色事業専従者給与に関する届出書も出しています。金額はアルバイトの時給から逆算して設定しました。
記帳はクラウド会計ソフトに切り替え、レジの日計データを取り込む形にしています。切り替え直後の2か月は仕訳の確認に時間がかかりましたが、3か月目には月2時間程度で回るようになりました。
翌年の申告では、e-Taxでの提出により65万円の特別控除も適用しています。「配偶者の給与のことがなければ、ずっと白色のままだったと思います」という言葉が印象に残っています。
よくある質問
白色申告のままだと税務署に目を付けられやすいのでしょうか?
青色申告に切り替えたら、過去の赤字も繰り越せますか?
会計ソフトを使えば複式簿記は分からなくても大丈夫ですか?
副業の規模でも青色申告にする意味はありますか?
収支内訳書と青色申告決算書はどう違いますか?
まとめ:手間で選ばず、起こり得ることで選ぶ
- 白色にも記帳と帳簿保存の義務がある。手間の差は貸借対照表の作成部分だけ
- 青色の特典は、特別控除・赤字の3年繰越・専従者給与・貸倒引当金の4つ
- 黒字が続くなら控除額の差、赤字の年が来るなら繰越しの有無が結果を分ける
- 家族が手伝っているなら、白色の86万円という上限が実態と合わなくなる
- 切り替えの期限は、青色にしたい年の3月15日(開業年は2か月以内)
判断の順番としては、いまの所得より先に、これから起こり得ることを考えます。設備を買う予定、人を雇う予定、家族に手伝ってもらう予定。どれか1つでもあるなら、青色にしておく価値があります。
逆に、急がなくてよいこともあります。最初から65万円控除を目指す必要はありません。10万円控除でも赤字の繰越しと専従者給与は使えるため、まず枠に入ることを優先しても構いません。
税理士法人Light UPでは、青色申告への切り替えと記帳の立ち上げのご相談を無料でお受けしています。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」
- 国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
※本記事は2026年8月時点の法令等に基づいています。税制は毎年の改正で変わるため、適用にあたっては最新の情報をご確認ください。




