賞与の社会保険料の計算方法は?上限と決算賞与の扱いを解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

賞与の社会保険料は、支給額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛けて計算し、会社と本人が半分ずつ負担します。令和8年度の協会けんぽ東京支部で、40歳未満の人に324,500円の賞与を出すと、本人負担は健康保険料16,330円と厚生年金保険料29,646円で、合計45,976円です(説明用の金額です)。上限は、健康保険が年度累計573万円、厚生年金保険が1か月150万円です。

間違えやすいのは料率の計算より、保険料を引かない場面の判断です。退職月の賞与、育児休業中の賞与、年4回以上出す賞与は扱いが変わります。決算賞与は、賞与の額を当期の損金の額に算入できても、会社負担の保険料は支給した翌期になります。日本年金機構と国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。

賞与の社会保険料はどう計算する?

結論: 賞与の社会保険料は、標準賞与額(支給額から1,000円未満を切り捨てた額)に保険料率を掛け、会社と本人が半分ずつ負担します。月給と違い、等級表は使いません。

計算の手順

  1. 賞与の支給総額から1,000円未満を切り捨て、標準賞与額を出す(健康保険法第45条、厚生年金保険法第24条の4)
  2. 標準賞与額に、健康保険料率・介護保険料率・厚生年金保険料率を掛ける。令和8年4月分からは、健康保険料率に子ども・子育て支援金率を足して掛ける
  3. 出た金額を会社と本人で半分ずつにする

月給は標準報酬月額の等級表にあてはめますが、賞与は等級に置き換えず、標準賞与額に直接料率を掛けます。健康保険料率は、協会けんぽなら都道府県ごと、健康保険組合なら組合ごとに違います。

令和8年度の保険料率

協会けんぽ東京支部と厚生年金保険の料率は次のとおりです。

保険 料率(全額) 本人負担の率
健康保険料率(東京支部) 9.85% 4.925%
子ども・子育て支援金率 0.23% 0.115%
介護保険料率(40歳以上65歳未満) 1.62% 0.81%
厚生年金保険料率 18.3% 9.15%

健康保険料率は令和8年3月分から、支援金は令和8年4月分から適用されています(全国健康保険協会)。支援金は賞与からも、標準賞与額に支援金率を掛けて拠出します(こども家庭庁)。厚生年金保険料率は18.3%で固定です(日本年金機構)。

計算の例

支給額324,500円(標準賞与額324,000円)を、東京支部の料率で計算します(説明用の金額です)。

項目 計算 本人負担
健康保険料(支援金を含む) 324,000円 × 10.08% ÷ 2 16,330円
介護保険料(40歳以上65歳未満のみ) 324,000円 × 1.62% ÷ 2 2,624円
厚生年金保険料 324,000円 × 18.3% ÷ 2 29,646円
合計(40歳未満の場合) 45,976円
合計(40歳以上65歳未満の場合) 48,600円

本人負担を差し引くときの円未満の端数は、50銭以下なら切り捨て、50銭を超えれば切り上げます(日本年金機構。特約があればその定めによります)。会社負担分は納めた保険料の総額から本人負担分を引いた額なので、本人負担と同額になるとは限りません。

社会保険料以外に引くもの

賞与からは、雇用保険料と所得税も引きます。雇用保険料は標準賞与額ではなく、1,000円未満を切り捨てない支給総額に料率を掛けます。所得税は、前月の給与と扶養親族等の数から求めた算出率を、賞与から社会保険料を引いた額に掛けます。

賞与の保険料でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、退職月、育児休業中、入社月や休職中に支給した賞与の3つです。引き忘れも引きすぎも、あとから返金か追加の徴収が必要になります。

賞与を払ったあとで、退職した人から保険料を引いてしまったと気づき、相談に来られる方が少なくありません。その人から引く月かどうかは、給与計算ソフトではなく会社が決めて入力します。

退職月に支給した賞与

健康保険法第156条第3項は、「前月から引き続き被保険者である者がその資格を喪失した場合においては、その月分の保険料は、算定しない」と定めています。資格を喪失した月に支払われた賞与は、保険料の対象になりません(日本年金機構)。

資格喪失日は退職日の翌日です。月末に退職した人は資格喪失日が翌月1日なので、退職月の賞与にも保険料がかかります。

退職日 資格喪失日 退職月に支給した賞与の保険料
6月30日(月末) 7月1日 かかる
6月29日 6月30日 かからない

保険料がかからなくても、資格喪失日の前日までに支給した賞与は標準賞与額として決まり、年度累計に入ります。雇用保険料は引きます。

育児休業中に支給した賞与

育児休業中の賞与の保険料が免除されるのは、賞与月の末日を含み、連続して1か月を超える育児休業等を取得した場合だけです。令和4年10月1日以降に開始した育児休業等が対象で、日本年金機構が案内しています。

1か月以下の休業では、賞与の保険料は免除されません(健康保険法第159条の括弧書き)。令和4年9月までに開始した育児休業等は、賞与月の末日を含めば短い休業でも賞与の保険料が免除されましたが、見直されました。

免除を受けるには、事業主が育児休業等取得者申出書を提出します。休業に入っただけで自動的には免除されません。

産前産後休業は、免除される月に支給した賞与の保険料がかかりません。1か月を超える要件は育児休業等だけのものです。

入社月と休職中の賞与

資格を取得した月に、取得の日以後に支給した賞与には保険料がかかります。保険料を算定しないのは資格を喪失した月だけで、取得月に同じ除外はありません。休職中の人も、被保険者のままであれば、賞与を支給すれば保険料がかかります。

直近の賞与明細と賞与支払届の控え、退職者と育児休業中の人の一覧をお持ちいただければ、標準賞与額の端数、年度累計の上限、保険料を引く人と引かない人の区分を一緒に確かめます。

給与と年末調整はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

保険料の上限はいくら?

結論: 標準賞与額の上限は、健康保険が年度(4月1日から翌年3月31日まで)の累計で573万円、厚生年金保険が1か月あたり150万円です。上限を超えた部分には保険料がかかりません。

健康保険は年度累計573万円

健康保険法第45条は、その年度の標準賞与額の累計額が573万円を超えることになる場合、「当該累計額が五百七十三万円となるようその月の標準賞与額を決定し、その年度においてその月の翌月以降に受ける賞与の標準賞与額は零とする」と定めています。

年度は会社の事業年度ではありません。介護保険料と支援金も標準賞与額に率を掛けるので、上限は共通です。

厚生年金保険は1か月150万円

厚生年金保険法第24条の4は、標準賞与額が150万円を超えるときは「これを百五十万円とする」と定めています。年度の累計ではなく、1か月あたりの上限です。同じ月に2回以上賞与を支給したときは、合算した額に上限を適用します(日本年金機構)。

上限を意識するのは、役員にまとまった賞与を出すときが中心です。

3月に支給した賞与と4月に支給した賞与は、別の年度に数えます。3月決算の会社は、決算賞与を3月に出すか4月に出すかで、年度累計の入り方が変わります。

年4回以上出すとどうなる?

結論: 賞与として扱うのは、3か月を超える期間ごとに受けるものです。年4回以上の支給が決まっている賞与は、報酬として標準報酬月額の決め方に含めます。

賞与と報酬の分かれ目

健康保険法第3条第6項は、賞与を「三月を超える期間ごとに受けるもの」と定めています。同条第5項は、報酬から「臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるもの」を除いています。

名前は関係なく、3か月を超える間隔で受けるものは賞与です。年4回以上の支給が規程などで客観的に定められているときは、報酬として扱います(日本年金機構)。

年3回以下と年4回以上の扱い
賞与として扱う(年3回以下)
標準賞与額に料率を掛けて計算する
上限は年度累計573万円と1か月150万円
支給から5日以内に賞与支払届を出す
報酬として扱う(年4回以上と定めたもの)
支給額を12で割った額を月給に足して標準報酬月額を決める
毎月の保険料が上がる
賞与支払届の対象にならない

決算賞与を足したとき

夏と冬の2回に決算賞与を足して年3回なら、賞与のままです。規程などで年4回以上の支給を定めると、報酬として扱う対象になります。毎月の保険料が上がる代わりに、賞与としての保険料はかかりません。賞与の回数を増やす前に、この線を確かめます。

決算賞与の保険料はいつ費用になる?

結論: 決算賞与は3つの要件を満たせば、賞与の額を当期の損金の額に算入できます。会社負担の社会保険料は、賞与を支払った月の分なので、支払った翌期の損金です。

賞与の額の損金算入

使用人への賞与は、次の3つをすべて満たせば、支給額を通知した事業年度の損金の額に算入できます(国税庁タックスアンサーNo.5350、令和8年4月1日現在法令等)。

  • 支給額を各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人へ通知している
  • 通知した金額を、通知した事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っている
  • 通知した事業年度に損金経理をしている

支給日に在職する使用人にだけ支給する決まりだと、その通知は要件の通知にあたりません(法人税基本通達9-2-43)。

会社負担の保険料の計上時期

会社が負担する健康保険料と厚生年金保険料は、保険料の額の計算の対象となった月の末日が属する事業年度の損金の額に算入できます(法人税基本通達9-3-2)。国税庁の質疑応答事例は、月末が来ていない月の分を見積もって損金にすることを認めていません。支払債務が、その月の末日の在職の事実で確定するためです。

賞与の保険料は、賞与を支払った月の保険料です。決算賞与を翌期の4月に支払うなら、その保険料は4月分で、損金の額に算入できるのは4月末日が属する翌期になります。

賞与の額 会社負担の保険料
損金の額に算入できる事業年度 通知した事業年度(3つの要件を満たす場合) 賞与を支払った月の末日が属する事業年度

決算で未払いにできるのは賞与の額で、会社負担の保険料は入りません。会計上は見積もって当期に計上する会社もありますが、その場合は申告書の別表四で加算し、翌期に減算します。

役員賞与の場合

役員の賞与には、3つの要件の特例は適用できません。損金の額に算入するには、事前確定届出給与の届出が必要です。社会保険料は、役員も被保険者であれば従業員と同じ計算です。

賞与を払ったあとの手続きは?

結論: 賞与を支給したら、支給日から5日以内に被保険者賞与支払届を提出します。保険料は賞与を支払った月の翌月末までに納めます。

賞与支払届の提出

被保険者賞与支払届は、日本年金機構の事務センターか管轄の年金事務所へ、電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参のいずれかで出します。役員を含む全員の分を載せます。同じ月に2回以上支給したときは、最後の支払いのあとに合算して届け出ます。賞与支払予定月を登録していて支払いがなかった月は、賞与支払届の代わりに賞与不支給報告書を出します。

届出書の作成と提出の代行は、社会保険労務士の業務です。

保険料の納付

賞与の保険料は、賞与を支払った月の翌月に届く納入告知書で通知され、毎月の保険料と合わせて翌月末までに納めます。

賞与を支給したあとの流れ
1

賞与を支給する
標準賞与額を決め、本人負担分を賞与から差し引く
2

5日以内に賞与支払届を出す
事務センターか年金事務所へ。電子申請もできる
3

翌月に納入告知書が届く
毎月の保険料と合わせて通知される
4

翌月末までに納める
本人負担分と会社負担分をまとめて納める

よくある質問

賞与の社会保険料は、会社も負担しますか?
負担します。健康保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金は健康保険法第161条にしたがって会社と本人が半分ずつ、厚生年金保険料も折半です。会社だけが負担する子ども・子育て拠出金(令和8年度は0.36%)も別に納めます。
現金以外で賞与を支給したときも対象ですか?
対象です。健康保険法第46条は、通貨以外で支払うときの価額を「その地方の時価によって、厚生労働大臣が定める」としています。
賞与支払届を出し忘れたら、どうすればよいですか?
気づいた時点で、日本年金機構の事務センターか管轄の年金事務所へ提出します。出さないままでは標準賞与額が決まらず、健康保険の年度累計の管理もずれます。

まとめ:引かない場面と上限を先に確かめよう

  • 賞与の社会保険料は、標準賞与額(1,000円未満切り捨て)に保険料率を掛け、会社と本人で半分ずつ負担する
  • 上限は、健康保険が年度累計573万円、厚生年金保険が1か月150万円
  • 退職月の賞与は、月末退職かどうかで保険料の有無が変わる
  • 育児休業中の賞与が免除されるのは、賞与月の末日を含み、連続して1か月を超える育児休業等を取った場合だけ
  • 決算賞与の会社負担の保険料は、支払った月の末日が属する事業年度の損金

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出典

  • e-Gov 法令検索「健康保険法」(第3条・第45条・第46条・第156条・第159条・第161条)
  • e-Gov 法令検索「厚生年金保険法」(第24条の4)
  • 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」
  • 日本年金機構「育児休業中の厚生年金保険の保険料はどうなるのですか」
  • 日本年金機構「報酬・賞与の区分が明確化されます」
  • 日本年金機構「厚生年金保険料額表」
  • 全国健康保険協会「令和8年度保険料額表」
  • こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」
  • 国税庁 タックスアンサー No.5350「使用人賞与の損金算入時期」
  • 国税庁「法人税基本通達」(9-2-43・9-3-2)
  • 国税庁 質疑応答事例「社会保険料の損金算入時期について」

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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