通勤手当の非課税限度額は?距離別の上限額と令和8年の改正を解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

通勤手当の非課税限度額は、電車やバスだけで通う人なら月15万円まで、マイカーや自転車で通う人なら片道の通勤距離で決まり、片道2キロメートル未満は全額が課税されます。マイカーの限度額は令和7年11月と令和8年4月に2回改正され、令和8年4月以後は片道95キロメートル以上で月66,400円まで上がり、勤務先や駅の周辺の駐車場代は月5,000円まで上乗せできます。この記事では、手段ごとの限度額、間違えやすい点、改正の中身、超えたときの処理、社会保険料との関係を、国税庁の資料(2026年10月時点)で整理します。

通勤手当の非課税限度額はいくら?

結論: 電車やバスだけなら月15万円、マイカーや自転車なら片道の通勤距離ごとに月4,200円から66,400円までです。限度額を超えた部分だけが給与として課税されます。

通勤手段ごとの早見表

国税庁のタックスアンサーNo.2582とNo.2585は、通常の給与に加算して支給する通勤手当を、一定の限度額まで非課税としています(所得税法第9条、同法施行令第20条の2)。限度額は通勤手段で4通りに分かれます。

通勤手段 1か月あたりの非課税限度額
電車・バスなどの交通機関だけ 最も経済的かつ合理的な経路と方法による定期券などの金額(上限15万円)
有料道路を使う 合理的な料金の額(上限15万円)
マイカー・自転車だけ 片道の通勤距離に応じた金額(下の表)
交通機関とマイカーなどの併用 定期券などの金額と、距離に応じた金額の合計(上限15万円)

マイカー・自転車通勤の距離別の限度額

令和8年4月1日以後に支払うべき通勤手当に使う、1か月あたりの限度額です。

片道の通勤距離 1か月あたりの限度額
2キロメートル未満 全額課税
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,300円
15キロメートル以上25キロメートル未満 13,500円
25キロメートル以上35キロメートル未満 19,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満 25,900円
45キロメートル以上55キロメートル未満 32,300円
55キロメートル以上65キロメートル未満 38,700円
65キロメートル以上75キロメートル未満 45,700円
75キロメートル以上85キロメートル未満 52,700円
85キロメートル以上95キロメートル未満 59,600円
95キロメートル以上 66,400円

片道の通勤距離は、国税庁が書くとおり通勤経路に沿った長さで、地図上の直線ではありません。

電車やバスだけの場合は月15万円

電車やバスだけを使う人の限度額は、運賃・時間・距離などの事情から見て、最も経済的かつ合理的な経路と方法で通勤した場合の定期券などの金額です。最短距離である必要はありません。

新幹線や特急の運賃も、その経路と方法が最も経済的かつ合理的なら含まれますが、グリーン料金は含まれません。

電車とマイカーを併用する場合

自宅から駅までマイカーや自転車、駅から先は電車という人は、定期券などの金額と、駅までの距離に応じた金額を足した額が限度額です。足した額が15万円を超えるときは15万円です。

片道8キロメートルを自転車で駅まで行き、定期代が月12,000円なら、4,200円と12,000円を足した16,200円までが非課税です(説明用の金額です)。

通勤手当の処理でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、距離の測り方、片道2キロメートル未満への支給、距離が変わったあとの据え置き、通勤手当にならない払い方の4つです。間違えると、源泉所得税の不足や、税務調査での指摘につながります。

決算や年末調整の前に、通勤手当の課税漏れに気づいて相談に来られる方が少なくありません。給与計算のソフトは入力された距離のまま計算するので、距離が古いままでも画面上は正常に見えます。

距離を直線で測ってしまう

地図上の直線で測ると距離が短く出て、本来より低い区分を当ててしまいます。経路検索の結果を印刷して、従業員ごとに保管しておけば、調査で距離を問われたときに説明できます。

片道2キロメートル未満の手当は全額が課税

自転車や徒歩で通える距離の人に手当を出す場合、その全額が給与です。少額でも、給与計算では課税分として分けて処理します。

引っ越しや転職のあとに据え置く

引っ越しで通勤距離が短くなったのに手当が据え置きになっている、という状態が典型です。距離が変われば区分も限度額も変わります。限度額を超えて支給していた部分は、課税して源泉徴収すべきだった額として、あとから不足を指摘されます。住所変更の届出を受けた時点で、距離も見直す手続きにしておくと防げます。

非課税にならない払い方

国税庁が非課税としているのは、通常の給与に加算して支給する通勤手当です。基本給に通勤費相当の額を含めて区別せずに払っていると、通勤手当として扱えるかが問われます。給与規程で通勤手当を別の項目に立てて、支給の条件と額の決め方を書いておきます。

会社が従業員に代わって駐車場を契約し、駐車場代を負担している場合も、国税庁は駐車場代相当額の通勤手当を支給したものとして限度額を計算するとしています(令和8年4月の国税庁Q&A)。

通勤経路の一覧と給与台帳をお持ちいただければ、距離の区分と支給額を1人ずつ突き合わせ、課税すべき金額と規程の書き方を一緒に確かめます。

給与と年末調整はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

令和7年と8年の改正は何が変わった?

結論: マイカー通勤の限度額は、令和7年11月に片道10キロメートル以上の区分が引き上げられ、令和8年4月に片道65キロメートル以上の区分が細かくなり、駐車場代の加算も始まりました。

令和7年11月の引上げ

令和7年11月19日に所得税法施行令の改正政令が公布され、同月20日に施行されました。令和7年4月1日以後に支払うべき通勤手当に、さかのぼって適用されます(国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」)。電車やバスの限度額と、片道10キロメートル未満の区分は変わっていません。

片道10キロメートル以上の各区分が200円から4,300円ずつ上がり、55キロメートル以上は31,600円から38,700円になりました。

令和8年4月の65キロメートル以上の見直し

令和8年度の税制改正で、片道55キロメートル以上が38,700円の1区分だったところが、5つの区分になりました。片道65キロメートル以上の人の限度額が上がり、95キロメートル以上は66,400円です(金額は前の表のとおり)。

支払うべき時期で使う限度額が変わる
1

令和7年3月までに支払うべき通勤手当
改正前の限度額。片道55キロメートル以上は31,600円
2

令和7年4月から令和8年3月までに支払うべき通勤手当
令和7年11月の改正後の限度額。片道55キロメートル以上は38,700円
3

令和8年4月以後に支払うべき通勤手当
65キロメートル以上が5つの区分に細分化。駐車場代の加算も使える

給与計算で見直すこと

支給日が決まっている手当はその日、決まっていなければ実際に支給した日で、令和8年4月1日以後かを見ます。4月1日より前に支払うべきだった分の差額を、あとから追加で支給する場合は、改正前の限度額のままです(令和8年4月の国税庁Q&A)。

限度額が上がっても、支給額を上げる義務は生じません。遠距離のマイカー通勤の人がいる会社は、支給額と新しい限度額を見比べ、課税していた部分が非課税に変わらないか確かめます。

駐車場代は月いくらまで非課税?

結論: 勤務先や駅の周辺にある駐車場の料金は、月5,000円を上限に、距離に応じた限度額へ上乗せして非課税にできます。令和8年4月1日以後に支払うべき通勤手当から使えます。

上乗せできる駐車場とできない駐車場

上乗せの対象は、通勤に使う車などを止める施設のうち、勤務先の周辺、または通勤で使う駅や停留所などの周辺にあるものです。フェリー乗り場や空港のような交通機関の施設の周辺も含まれます。自転車やバイクの駐輪場も対象です。

駐車場代を上乗せできるか
→
勤務先の周辺の駐車場
月5,000円を上限に、料金相当額を距離別の限度額へ上乗せできる
駅・停留所・フェリー乗り場・空港の周辺の駐車場
上乗せできる。複数の駐車場を使うときは料金を合計して、上限は同じ月5,000円
自宅付近の駐車場
上乗せの対象外
片道2キロメートル未満の人の駐車場
上乗せの対象外

計算の例

国税庁のQ&Aの例です。片道50キロメートルで月8,000円の駐車場を使う人の限度額は、距離別の32,300円に駐車場代の上限5,000円を加えた37,300円です。

支給の内訳 支給額 非課税限度額 課税される額
距離分32,300円と駐車場分8,000円 40,300円 37,300円 3,000円
距離分28,000円と駐車場分8,000円 36,000円 37,300円 0円(全額非課税)

料金は月額に直す

駐車場の料金が月単位ならその額、3か月分で24,000円なら月8,000円、年79,200円なら月6,600円に直します。コインパーキングのように都度払いなら、通勤で実際に払った1か月分の合計額です。消費税が含まれる料金は税込の額で見ます。従業員から契約書や領収書を受け取る法令上の義務はありませんが、月額を計算するために、金額が分かる書類で確かめる必要はあります。

限度額を超えたときの処理は?

結論: 限度額を超えた部分は給与として課税され、支給した月の給与に上乗せして源泉徴収します。年末にまとめてではなく、毎月の給与計算で処理します。

超えた部分は支給した月に源泉徴収

国税庁のタックスアンサーNo.2585によると、超える部分の金額は、通勤手当を支給した月の給与の額に上乗せして、所得税と復興特別所得税の源泉徴収を行います。

数か月分をまとめて払う場合とパート・アルバイト

限度額は1か月あたりの金額で決まります。6か月分の定期代をまとめて支給するなら、6で割った月額相当の金額を、1か月の限度額と比べます。国税庁は、パートやアルバイトなど短い期間で雇う人にも、月を単位にして計算するとしています。

日額で払う場合も、その月の合計を1か月の限度額と比べます。

通勤手当は社会保険料の計算に入る?

結論: 入ります。所得税で非課税の通勤手当も、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額の計算では報酬に含めます。税と社会保険で扱いが違います。

標準報酬月額には非課税分も入る

日本年金機構は、給与規程に定めのある通勤手当を、労務の対償として受ける報酬に含まれるとしています。数か月分をまとめて支給する場合も、支払いの便宜によるものなので報酬に含めます。所得税で非課税になる部分を、標準報酬月額の計算から除くことはできません。

通勤手当の分だけ報酬月額が増えるため、標準報酬月額の等級が上がる場合があり、そのときは会社負担の保険料も増えます。

労働保険料の賃金総額にも入る

労働保険の年度更新で集計する賃金総額にも、通勤手当は含めます。給与計算では非課税として別に扱っていても、年度更新の集計では除かずに足します。

所得税の判定では含めない

所得税では、非課税の通勤手当は給与の収入に入らず、配偶者控除などの判定に使う合計所得金額にも入りません。

健康保険の被扶養者になれるかの収入の判定は、加入先の基準で決まるため、加入先に確かめます。

よくある質問

通勤手当を支給する義務はありますか?
法律上の支給義務はありません。支給するかどうかと金額は、会社が給与規程で決めます。非課税限度額は、払う場合の上限であって、払う義務ではありません。
自転車で片道3キロメートル通う人に、月5,000円を払っています。問題ありますか?
片道2キロメートル以上10キロメートル未満の限度額は4,200円なので、差額の800円が給与として課税されます。支給は問題ありませんが、800円を毎月の給与に上乗せして源泉徴収します。
マイカー通勤の限度額は、いつの支給分から新しくなりましたか?
2回あります。片道10キロメートル以上の区分の引上げは、令和7年4月1日以後に支払うべき通勤手当にさかのぼって使います。片道65キロメートル以上の区分の細分化と駐車場代の加算は、令和8年4月1日以後に支払うべき通勤手当から使います。
通勤手当は、社会保険料の計算に入りますか?
入ります。所得税で非課税の部分も、標準報酬月額を決める報酬に含めます。

まとめ:手段と距離で限度額を決めよう

  • 電車やバスだけなら月15万円、マイカー・自転車は片道の通勤距離に応じて月4,200円から66,400円まで
  • 片道2キロメートル未満のマイカー・自転車の手当は全額が課税
  • 令和8年4月以後は、片道65キロメートル以上の区分が細かくなり、勤務先や駅の周辺の駐車場代を月5,000円まで上乗せできる
  • 限度額を超えた部分は、支給した月の給与に上乗せして源泉徴収する
  • 社会保険料の計算では、非課税の通勤手当も報酬に含める

距離が古いまま手当を払っている会社、駐車場代を手当に含めて払っている会社は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。通勤経路の一覧と給与台帳を確認し、距離の区分と非課税にできる額、課税として給与に足す額を整理します。

給与と年末調整はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁 タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」(令和8年4月1日現在法令等)
  • 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正に関するQ&A」(令和8年4月)
  • 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和8年度税制改正)
  • 国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(令和7年11月)
  • 日本年金機構「年金Q&A 標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか」
  • e-Gov法令検索「所得税法」第9条、「所得税法施行令」第20条の2

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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