個人事業主はインボイスにどう対応すべきか

「取引先から登録番号を聞かれた。断ったら仕事が減るのではと不安になる」。「登録すると本名がインターネットで公開されると聞いた。屋号で仕事をしてきたので抵抗がある」――個人事業主からのインボイスの相談は、この2つが入り口になることがほとんどです。

登録するかどうかに、万人に当てはまる正解はありません。判断を決めるのは自分の売上規模ではなく、取引先の構成です。相手が一般消費者なら登録しなくても取引に影響しません。相手が課税事業者で本則課税なら、登録しない選択が値下げ交渉の材料になります。出発点は、自分の売上が誰から来ているかを分けることです。

もう一つ、個人事業主に固有の論点があります。登録すると氏名が公表サイトに掲載されます。屋号や旧氏を追加で公表する手続きはありますが、氏名の公表そのものは避けられません。この点を知らないまま登録し、後から気づく人が少なくありません。

この記事では、判断の軸から始め、公表の仕組み、登録した場合の納税額、2割特例が終わったあとの扱い、登録しない場合に想定される交渉、登録後の実務までを順に整理します。

個人事業主にとって、何が変わったのか

結論: 変わったのは自分の税金ではなく、取引先が仕入税額控除を受けられるかどうかです。免税事業者のままだと、相手の納税額が増えます。

相手の控除が減る。自分の納税義務は登録で発生する

課税事業者が本則課税で申告する場合、仕入れにかかった消費税を差し引くには適格請求書が必要です。免税事業者は適格請求書を発行できないため、相手は控除できる金額が減ります。この差が、取引条件の見直しにつながります。

登録すると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても課税事業者になります。今まで納めていなかった消費税を、翌年から申告して納めることになります。売上が変わらなくても手取りは減ります。

事務の負担が増える

請求書の様式変更、帳簿の税率区分、確定申告に消費税の申告が加わること。売上規模が小さいほど、この負担の相対的な重さは増します。

請求書の様式を変え、控えを保存し、申告と納付が加わります。年に一度の作業ではなく、日々の運用が変わります。登録する前に、この手間まで含めて判断することです。売上の規模によっては、負担のほうが大きくなります。

判断は、取引先の構成で決まる

結論: 判断の材料になるのは、相手の種類で分けた売上の内訳です。消費者向けが中心なら登録の必要性は低く、課税事業者向けが中心なら登録が現実的になります。

取引先の種類 登録しない影響 判断の目安
一般消費者 ほぼなし 登録の必要性は低い
免税事業者 なし 相手も控除しないため影響しない
簡易課税・2割特例の事業者 なし 相手は仕入れの実額を使わない
本則課税の事業者 相手の控除が減る 登録の必要性が高い

消費者向けが中心なら急がない。相手が簡易課税なら影響しない

美容室、飲食店、教室、小売など、売上の大半が一般消費者からの事業では、相手が適格請求書を必要としません。登録すれば納税と事務が増えるだけになります。

取引先が簡易課税を選んでいる場合、仕入れの実額を使わないため、こちらが登録していなくても相手の納税額は変わりません。取引先に確認できるなら、聞いてみる価値があります。

割合で見る

売上のうち本則課税の事業者からの分が何割かで、打ち手が変わります。1割程度なら、その取引先とだけ個別に条件を話し合う方法もあります。7割を超えるなら、登録しない選択の維持は難しくなります。

課税事業者向けの売上が全体の何割かを出します。1割に満たないなら、登録しない判断が現実的です。数字にしてから決めることです。

登録すると氏名が公表される

結論: 適格請求書発行事業者の情報は国税庁の公表サイトに掲載されます。個人事業者の場合、法定の公表事項は氏名であり、屋号は申出をしなければ載りません。

公表サイトに載るもの、載らないもの
01
必ず公表される
氏名、登録番号、登録年月日
02
申出をすれば載る
屋号、主たる事務所の所在地、旧氏や通称
03
屋号は自動では載らない
屋号で仕事をしていても、申出をしなければ氏名だけが載る
04
氏名の公表は避けられない
登録する以上、法定の公表事項として掲載される

法定の公表事項と、屋号や旧氏の追加

公表されるのは、氏名または名称、登録番号、登録年月日などです。個人事業者は通常、氏名の公表にとどまります。取引先は登録番号からこのサイトを検索し、その番号が実在するかどうかを確認します。

主たる屋号や主たる事務所の所在地を追加で公表したい場合は、適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書を提出します。住民票に併記されている旧氏を氏名として公表することを希望する場合も、同じ申出書を使います。

氏名の公表そのものは避けられない

屋号を追加しても、氏名が消えるわけではありません。ペンネームや屋号だけで活動してきた人にとっては、ここが登録をためらう理由になります。判断材料として、事前に知っておくべき点です。

屋号を追加しても、氏名は残ります。自宅を事務所にしている場合、住所は公表事項ではありません。気になる場合は、この点を確かめてから登録することです。

登録した場合、いくら納めることになるか

結論: 計算方法は本則課税・簡易課税・2割特例の3つがあり、選ぶ方法で納税額が変わります。以下は仕組みを示すための一般的な計算例です。

年間の課税売上が税抜600万円、預かった消費税が60万円という個人事業主を想定します。

  1. 2割特例:預かった消費税の2割を納めます。60万円の2割で12万円です。
  2. 簡易課税(第5種・みなし仕入率50%):60万円から30万円を差し引いた30万円です。
  3. 本則課税:実際に支払った消費税を差し引きます。課税仕入れが150万円なら15万円を差し引き、45万円です。

実際の金額は課税仕入れの内容や事業区分によって変わるため、自分の数字で試算しないと判断できません。

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2割特例は令和8年分が最後

結論: 2割特例は令和8年9月30日を含む課税期間までです。個人事業者は暦年が課税期間なので、令和8年分が最後の適用年になります。

2割特例が終わったあとの選択肢
令和9年分から
3割特例
令和9年分と令和10年分に限り、個人事業者は納税額を売上税額の3割にできる
簡易課税
事業区分の判定が要る。届出の期限に緩和の特例がある
本則課税
実額を集計する。設備投資がある年は有利になりやすい
登録をやめる
免税事業者に戻る。取消しの届出と期限がある

翌年からは3割特例か、簡易課税か、本則課税か。業種による違い

個人事業者には、令和9年分と令和10年分の2年間に限って3割特例が用意されています。預かった消費税の3割を納める方法で、2割特例より負担は増えますが、簡易課税より軽くなる業種があります。法人にはこの受け皿がありません。

第2種(小売業・みなし仕入率80%)の人は、2割特例から簡易課税に移っても納税額はほとんど変わりません。一方、第5種(サービス業・みなし仕入率50%)の人は、2割特例の2割から簡易課税の5割へ、納税額が2.5倍になります。フリーランスの多くが第5種に当たるため、影響が大きい層です。

簡易課税の届出には特例がある

2割特例の適用を受けた事業者は、その翌課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出すれば、提出した課税期間から簡易課税を適用できます。前年末までという原則が緩和されるため、実質的に1年の猶予があります。ただし出し忘れれば本則課税です。

2割特例からの切り替えでは、期限が緩和される扱いがあります。自分が対象になるかを、切り替えの年に確かめておくことです。

登録しないという選択

結論: 登録しないことは違法でも不利益でもありません。ただし取引先から条件の見直しを求められる可能性があり、その場合の対応を準備しておく必要があります。

何も起きない場合と、値下げを求められる場合

取引先が消費者、免税事業者、簡易課税の事業者であれば、登録しなくても相手の負担は変わりません。この場合、登録しないまま続けるのが合理的です。

相手が本則課税なら、控除できなくなる分の負担が生じます。その分の値下げを打診されることがあります。ただし免税事業者からの仕入れには経過措置があり、令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%が控除できます。その後は令和10年10月1日以後が50%、令和12年10月1日以後が30%と、2年ごとに下がります。相手が失う金額は全額ではありません。

取引を切られる場合

登録しないことだけを理由に取引を打ち切られることもあります。その相手の売上構成上の重みを踏まえて、登録するか、他の顧客を開拓するかを判断することになります。

実際には多くありません。ただし、新規の取引で登録の有無を条件にされることはあります。既存の取引と新規の取引では、事情が違います。切られるかどうかより、新規が取りにくくなるかで考えるほうが実際に近くなります。

一方的な取引条件の変更は問題になりうる

結論: 消費税分を一方的に据え置いたり、著しく低い価格を押し付けたりする行為は、独占禁止法や取引適正化のルールに触れる可能性があります。相談先があることを知っているかどうかで、対応が変わります。

免税事業者であることを理由に、取引価格を一方的に引き下げる、あるいは従来の消費税相当額を支払わないと通告する。こうした行為は、優越的地位の濫用として問題になる場合があります。2026年1月1日からは下請代金支払遅延等防止法が中小受託取引適正化法となり、対象取引での手形払いが禁止されるなど、取引の適正化に向けたルールも変わっています。

大切なのは、協議に応じてもらえたかどうかです。一方的な通告ではなく、双方が納得したうえでの価格改定であれば問題になりません。書面やメールで経緯が残っていれば、後から説明できます。相談先としては、公正取引委員会や中小企業庁の窓口があります。

登録の手続きと、やめるときの期限

結論: 登録申請書を税務署に提出すれば、課税期間の途中からでも登録できます。やめる場合は、翌課税期間の初日から起算して15日前の日までの提出が必要です。

登録とやめるときの手続き
1

登録申請書を出す
税務署へ提出する。課税期間の途中からでも登録できる
2

登録番号を受け取る
登録日から適格請求書を発行できる
3

やめるときは届出を出す
登録の取消しを求める旨の届出書を提出する
4

期限は15日前
翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで。過ぎると翌々課税期間から

申請から登録まで。課税期間の途中でも登録できる

適格請求書発行事業者の登録申請書を提出します。電子申請なら書面より処理が早い傾向があります。登録が完了すると登録番号が通知され、公表サイトに掲載されます。

登録の時期も、自分で選べます。

免税事業者が登録する場合、登録希望日を指定して申請できます。年の途中で登録した場合、その日以降が課税事業者としての期間になります。

取りやめは15日前まで

登録の取りやめは、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を提出します。期限は、やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までです。年末ぎりぎりに出しても翌年からは間に合いません。

課税期間の末日から数えて15日前です。日数の数え方に注意が要ります。1日でも過ぎると、翌々期からの取りやめになります。

登録後にやること

結論: 請求書の様式を整え、帳簿の付け方を変え、消費税の申告を年間の予定に組み込みます。ここまでを最初にまとめて済ませれば、あとは通常の業務に収まります。

請求書の記載事項と、控えの保存

適格請求書には、発行者の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、交付を受ける者の氏名または名称を記載します。

様式を整えたら、あとは残し方です。

交付した適格請求書の写しは保存が必要です。電子データで交付した場合は、電子帳簿保存法の要件に沿った保存になります。

申告のスケジュール

個人事業者の消費税の申告期限は、翌年3月31日です。所得税の3月15日とは日付が違います。納税資金を分けておかないと、確定申告の時期に2つの納税が重なります。

翌年3月31日が期限です。所得税の3月15日とは別の日ですので、混同しないことです。同じ時期に2つの申告が並ぶことになります。資料の準備は1回で済ませられます。

経費側でも負担が軽くなる特例がある

結論: 本則課税を選んだ場合でも、少額の仕入れについては請求書の保存が不要になる特例があります。自分の取引が対象になるかどうかが分かれ目です。

少額特例で軽くなるところ
01
対象になる人
基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下
02
対象になる取引
税込1万円未満の課税仕入れ
03
何が要らなくなるか
適格請求書の保存。帳簿の保存だけで仕入税額控除ができる
04
判定の単位
1回の取引ごと。1商品ごとではない

少額特例

国税庁は少額特例について、税込1万円未満の課税仕入れはインボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるとしたうえで、「基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者が、適用対象者となります」と説明しています。個人事業主の多くはこの範囲に入ります。

適用期間には終わりがあります。国税庁は「令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う課税仕入れが適用対象となりますので、たとえ課税期間の途中であっても令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては、少額特例の対象とはなりません」としています。

判定は1回の取引ごと。帳簿のみで控除できるその他の取引

税込1万円未満かどうかは、1回の取引の金額で判定します。商品ごとではありません。5,000円と7,000円の商品を同時に購入すれば合計12,000円となり、対象外です。

3万円未満の公共交通機関の運賃、自動販売機での購入、入場券のように使用の際に回収される証票など、一定の取引は帳簿の保存のみで控除が認められます。出張の多い事業では、この扱いを知っているかどうかで手間が変わります。ただし帳簿にはその旨と相手方の住所等の記載が求められる場合があるため、記帳のルールを最初に決めておかないと、後から追えなくなります。

登録すると、所得税の申告にも影響する

結論: 消費税の課税事業者になると、所得税の帳簿の付け方も変わります。税込経理と税抜経理のどちらを採るかで、所得金額と経費の見え方が動きます。

税込経理と税抜経理
税込経理
消費税を含めた金額で記帳する
納付する消費税は租税公課として必要経費になる
資産の取得価額も税込で判定する
税抜経理
消費税を分けて記帳する
納付する消費税は損益に影響しない
取得価額を税抜で判定するため、10万円などの線をまたぎにくい

税込経理と税抜経理、減価償却資産の判定が変わること

税込経理では、売上も経費も消費税を含んだ金額で記帳し、納付する消費税は租税公課として経費に計上します。税抜経理では、消費税を仮受消費税・仮払消費税として分けて記帳するため、損益計算書に消費税が現れません。免税事業者は税込経理しか選べませんが、課税事業者になれば選択できます。

税込経理を採ると、少額減価償却資産や10万円未満の消耗品の判定を税込金額で行うことになります。少額減価償却資産の基準は、令和8年4月1日以後に取得したものから40万円未満です。税抜であれば39万円の資産が、税込では42万9,000円となり、判定の結果が変わる場合があります。備品を多く購入する事業では、この差が経費計上の時期に影響します。

納付する消費税の計上時期

税込経理の場合、納付する消費税を必要経費に算入する時期は、原則として申告書を提出した日の属する年です。未払計上する方法もありますが、いずれかに統一したうえで継続する扱いになります。年によって変えると、所得が不自然に動きます。

税込経理の場合は、納付する年の必要経費にするのが原則です。未払計上を選ぶこともできます。

開業したばかりの人・副業の人

結論: 基準期間がない開業初年度と、給与所得がある副業では、判断の前提が変わります。見方はそれぞれ別になります。

開業初年度は基準期間がない。簡易課税の届出は年内で間に合う

開業した年と翌年は、判定に使う前々年の売上がありません。そのため原則として免税事業者ですが、登録すれば課税事業者になります。開業と同時に登録するかどうかは、最初の取引先が誰かで決まります。

事業を開始した課税期間については、その課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出すればその年から適用できます。開業年に限っては、年末に判断しても間に合うということです。

副業の場合

会社員が副業で受注している場合も、事業としての売上があれば同じ判断になります。給与は消費税の課税対象ではないため、判定に使うのは副業の売上だけです。取引先が本則課税の企業1社だけ、という状況では登録を求められる可能性が高くなります。

給与所得とは別に、事業としての売上で判定します。副業の売上だけで1,000万円を超えるかどうかです。

判断の手順

結論: 数字を並べれば判断そのものは難しくありません。売上の内訳・納税額の試算・値下げ幅の見積もりという順で、次の5つを見ていきます。

  1. 直近1年の売上を、相手の種類(消費者・免税事業者・簡易課税の事業者・本則課税の事業者)で分けます。
  2. 本則課税の取引先からの売上が全体の何割かを出します。
  3. 登録した場合の納税額を、2割特例・簡易課税・本則課税の3通りで試算します。
  4. 登録しなかった場合に想定される値下げ幅を、経過措置の割合を踏まえて見積もります。
  5. 3と4を比べ、事務の負担も加味して決めます。

4を省くと、登録しない場合の損失を過大に見積もりがちです。相手が失うのは控除できなくなる金額の全額ではなく、経過措置を差し引いた部分にとどまります。

判断の手順
1

売上を相手の種類で分ける
消費者、本則課税の事業者、簡易課税や2割特例の事業者、免税事業者
2

課税事業者向けの割合を出す
全体の売上に占める割合。ここが判断のいちばん大きな材料になる
3

納税額を試算する
登録した場合の納税額を、計算方法ごとに出す
4

値下げ幅を見積もる
登録しない場合に求められ得る値引きの額
5

差額で決める
金額が近いなら、事務の重さと取引先との関係で決める

事例|判断が分かれた4つの場面

結論: 実際の相談では、売上の構成を分けた時点で結論が出ています。典型を4つ挙げます。

顧客がすべて一般消費者の美容室。 売上の10割が個人客でした。登録すれば納税と申告の手間が増えるだけであるため、免税事業者のまま継続。取引先からの求めもありません。

取引先が大手1社のフリーランス。 売上の9割が本則課税の企業からでした。登録しない場合の交渉が現実的でなかったため登録し、2割特例で申告。令和9年分からは簡易課税へ移る準備を進めています。

本名を出したくないイラストレーター。 屋号で活動しており、氏名の公表に抵抗がありました。屋号を追加公表する申出を行ったうえで登録。公表サイトには氏名と屋号の両方が掲載される形になっています。

取引先が簡易課税だった建設業の一人親方。 元請から登録を求められましたが、確認したところ元請は簡易課税でした。登録の有無が元請の納税額に影響しないことを説明し、免税事業者のまま取引を継続しています。

よくある質問

Q. インボイスに登録しないと違法になりますか?
A. なりません。登録は任意です。ただし適格請求書を発行できないため、本則課税の取引先は仕入税額控除が受けられなくなります。取引条件の話し合いが生じる可能性はあります。

Q. 登録すると本名が公開されるのですか?
A. 個人事業者の法定の公表事項は氏名です。屋号や旧氏を追加で公表することはできますが、氏名の公表自体を止めることはできません。登録前に知っておくべき点です。

Q. 売上が1,000万円以下でも消費税を納めるのですか?
A. 登録すれば納めます。登録によって課税事業者になるため、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも申告と納税が必要です。

Q. 2割特例が終わったら、どうすればよいですか?
A. 個人事業者は令和9年分と令和10年分に限り3割特例が使えます。それ以外は簡易課税か本則課税です。簡易課税を選ぶなら、2割特例を使った翌年中に届出書を提出すればその年から適用できます。

Q. 登録をやめることはできますか?
A. できます。やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに届出書を提出してください。ただし、登録から2年を経過していない場合など、免税事業者に戻れない期間があります。

Q. 経費の領収書は全部インボイスでないといけませんか?
A. 少額特例の対象なら、税込1万円未満の仕入れは帳簿の保存のみで控除できます。3万円未満の公共交通機関の運賃や自動販売機での購入も、帳簿のみで認められます。

まとめ:売上を相手の種類で分けるところから始める

個人事業主がインボイスに登録すべきかどうかは、自分の売上規模ではなく取引先の構成で決まります。相手が一般消費者、免税事業者、簡易課税の事業者であれば、登録しなくても相手の負担は変わりません。本則課税の事業者が売上の大半を占めるなら、登録が現実的な選択になります。

登録する場合は、氏名が公表サイトに掲載されることを事前に理解しておいてください。屋号や旧氏の追加公表はできますが、氏名を非公表にはできません。

そして、2割特例は令和8年分が最後です。令和9年分からは3割特例、簡易課税、本則課税のいずれかを選ぶことになります。第5種のサービス業では納税額が2.5倍になる計算になるため、早めに試算しておく必要があります。簡易課税を選ぶなら、届出の期限が緩和される特例を使えます。

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出典

  • 国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」
  • 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
  • 国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」
  • 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)」
  • 公正取引委員会・中小企業庁「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」

【メタディスクリプション】
個人事業主のインボイス対応を、取引先の構成による判断、氏名が公表される仕組み、2割特例終了後の3択、値下げ要請への向き合い方、少額特例まで整理しました。3通りの納税額試算と判断手順、事例つきで解説します。

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