免税事業者とは?課税事業者との違いと登録後の2年間を解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されている事業者です。基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として免税事業者になります。ただし、インボイス発行事業者の登録を受けると、売上の大きさにかかわらず課税事業者です。しかも、免税事業者が登録を受けると、国税庁は「原則、登録を受けた日から2年間、消費税の申告が必要」で、取りやめても同じだと説明しています。この記事では、判定、間違えやすい点、登録後に免税へ戻れる時期、登録しないときの影響、登録の決め方を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。

免税事業者とは?

結論: 免税事業者とは、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下で、消費税の納税義務が免除されている事業者です。個人事業者も法人も対象になります。

基準期間は個人なら前々年

国税庁のタックスアンサーNo.6501は、基準期間を個人事業者ならその年の前々年、事業年度が1年の法人ならその事業年度の前々事業年度としています。決め手は今年ではなく2年前の売上です。

令和9年分の個人事業者なら、見るのは令和7年の課税売上高です。令和9年の売上が1,000万円を超えても令和9年分は免税のままで、納税が始まるのは令和11年分からです。

売上の数え方

課税事業者だった期間は消費税を除いた金額で数えます。免税事業者だった期間は消費税が課されていないため、受け取った対価の全額で数えます(消費税法基本通達1-4-5)。

課税事業者との違い

比べる点 免税事業者 課税事業者
消費税の申告と納付 不要 必要
消費税の還付 受けられない 仕入れの消費税が多ければ受けられる
インボイスの発行 できない(登録を受けると課税事業者になる) 登録を受けた場合だけできる

免税の判定でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、今年の売上で判定すること、前年の上半期(特定期間)の売上を見落とすこと、登録で課税事業者になった自覚がないこと、届出書の期限を過ぎることの4つです。

免税のはずだと思っていたら、前年の上半期の売上で課税事業者になっていたと、申告期限のあとに相談に来られる方が少なくありません。

今年の売上で判定する

基準期間は2年前です。今年の売上が大きくても今年は免税で、2年前に1,000万円を超えていれば、今年の売上が小さくても課税事業者です。

特定期間の売上を見落とす

特定期間とは、個人事業者ならその年の前年1月1日から6月30日まで、法人なら原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間です。この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、基準期間が1,000万円以下でも納税義務は免除されません(国税庁タックスアンサーNo.6501)。

判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額でもでき、どちらにするかは納税者が選べます。給与等支払額は実際に支払った給与・賞与の額で、未払いの分や所得税が非課税の通勤手当は含みません(国税庁質疑応答事例)。

届出書の期限を過ぎる

課税事業者選択届出書と簡易課税制度選択届出書は、適用したい課税期間の初日の前日までに出すのが原則です。期限を過ぎると、適用したい課税期間の翌期からになります。新しく事業を始めた場合は、その課税期間の末日までに出せば、その課税期間から適用できます(国税庁タックスアンサーNo.6531)。

税理士が確かめる順番

税理士は、免税かを次の順に確かめます。

免税かどうかを確かめる順番
1

基準期間の課税売上高を見る
個人は前々年、法人は前々事業年度。1,000万円以下か
2

特定期間を見る
前年の上半期の課税売上高か給与等支払額。どちらかが1,000万円以下ならよい
3

法人は設立のときの資本金を見る
1,000万円以上なら、基準期間がなくても課税事業者
4

登録と届出書を見る
インボイスの登録や課税事業者選択届出書があれば免税にならない

直近2年分の確定申告書か決算書と、今期の月ごとの売上の一覧をお持ちいただければ、基準期間と特定期間のどちらで課税事業者になるかと、届出書を出す期限を一緒に確かめます。

消費税の申告はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

インボイス登録後はいつ免税に戻れる?

結論: 免税事業者が登録を受けた場合、原則として登録日から2年間は消費税の申告が必要です。登録を取りやめても同じで、免税へ戻れるのは登録日以後2年を経過する日の属する課税期間の、次の課税期間からです。

国税庁の説明

国税庁のインボイス制度の案内は、「免税事業者の方が登録を受ける場合、原則、登録を受けた日から2年間、消費税の申告が必要となります」とし、「インボイス発行事業者の登録を取りやめたとしても同様です」と書いています。課税期間の単位で数えるため、縛りは登録日から丸2年ではなく、2年を経過する日を含む課税期間の末日までです。

免税に戻れる時期の例

説明用の例です。個人事業者が令和8年5月1日に登録を受けると、2年を経過する日は令和10年4月30日で、これを含む令和10年分までが課税事業者です。免税に戻れる最初の課税期間は令和11年分です(基準期間の令和9年の課税売上高が1,000万円以下などの条件を満たす場合)。

登録を取りやめる届出

登録を取りやめるには、適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書を出します。取りやめたい課税期間の初日の15日前の日までに出せば、その初日に登録の効力がなくなります。過ぎると、次の課税期間の初日になります。

3月決算の法人が令和9年4月1日から取りやめるなら3月17日まで、上の例の個人事業者が令和11年1月1日から取りやめるなら令和10年12月17日までに出します(国税庁Q&A)。

登録の経過措置と縛りの例外

免税事業者は、原則として課税事業者選択届出書を出してから登録を受けます。ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中なら、登録申請書に登録希望日を書けば、その日から課税事業者になり、選択届出書は要りません。登録希望日は提出日から15日以降の日です(国税庁Q&A問7)。

登録を受ける時期で変わる手続
令和11年9月30日までの日の属する課税期間中
登録申請書の登録希望日から課税事業者になる
課税事業者選択届出書は要らない
登録希望日は提出日から15日以降
それ以外の課税期間
原則として課税事業者選択届出書を出して課税事業者になる
課税期間の初日から登録を受けるなら、初日の15日前までに登録申請書を出す

国税庁Q&A問7は、この経過措置で登録を受け、登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含まないときに、翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者になれないと説明しています。令和5年10月1日を含む課税期間中に登録した事業者は、この縛りの対象ではありません。

課税事業者選択届出書の縛り

課税事業者選択届出書を出して課税事業者になった場合は、事業を廃止した場合を除き、課税事業者となった日から2年間は免税事業者に戻れません。その間に税抜100万円以上の機械や車両などを仕入れて一般課税で申告すると、原則3年間に延びます(国税庁タックスアンサーNo.6501)。

インボイスに登録しないとどうなる?

結論: 登録しなくても免税事業者のままでいられます。ただし、本則課税の課税事業者である取引先は、あなたからの仕入れについて、控除できる消費税が減ります。

取引先の立場で変わる影響

インボイスを受け取れない仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。

取引先 登録しない場合の影響
一般消費者 ほぼない(仕入税額控除をしない)
免税事業者 ほぼない(仕入税額控除をしない)
課税事業者(簡易課税) ない(みなし仕入率で計算し、インボイスは控除の要件にならない)
課税事業者(本則課税) ある(控除できる消費税が減る)

取引先が控除できる割合

免税事業者などからの仕入れは、経過措置で一定の割合を控除できます。令和8年10月1日から、割合は80%から次の3段階に変わります(国税庁「令和8年度税制改正特集」令和8年9月)。

期間 控除できる割合
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで 70%
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで 50%
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで 30%
令和13年10月1日以後 控除できない

取引条件の見直しと独占禁止法

取引先がインボイスを機に取引条件を見直すこと自体は、直ちに問題にはなりません。公正取引委員会のQ&Aは、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、応じなければ取引を打ち切る、と一方的に通告することを、独占禁止法や下請法(取適法)の上で問題となり得る行為の例に挙げています。

登録するかどうかの決め方は?

結論: 本則課税の課税事業者向けの売上がどれだけあるかを数え、登録した場合の納税額と比べて決めます。一般消費者向けが中心なら、登録しない選択も成り立ちます。

決める順番

  1. 取引先を、前の表の4つに分ける
  2. 本則課税の課税事業者向けの売上が、全体のどれだけかを数える
  3. その割合が小さければ、登録しない選択が現実的になる
  4. 大きければ、登録した場合の納付税額を、次の特例を含めて試算する

登録した場合の納付税額

登録を機に免税事業者から課税事業者になった事業者には、納付税額を簡単に計算できる特例があります(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

  • 2割特例: 納付税額を売上に係る消費税額の2割にできる。法人は令和8年9月30日の属する課税期間まで、個人事業者は令和8年分の確定申告まで
  • 3割特例: 個人事業者だけが、令和9年分と令和10年分の確定申告で、3割にできる。法人は対象外
  • 簡易課税: 基準期間の課税売上高が5,000万円以下なら選べる。みなし仕入率で仕入れの消費税を計算する

2割特例や3割特例を使った翌課税期間は、その確定申告期限までに簡易課税制度選択届出書を出せば、簡易課税に移れます。

開業・設立から2年は免税になる?

結論: 新しく開業した個人事業者と新設法人は、基準期間がないため、原則として最初の2年は免税です。ただし、資本金1,000万円以上の法人、特定新規設立法人、特定期間の売上超過、登録を受けた場合は課税事業者です。

個人事業者の開業1年目と2年目

開業した年と翌年は、基準期間がありません。国税庁タックスアンサーNo.6531は、基準期間がないときは「原則として納税義務が免除」されるとしています。2年目は、前年の特定期間の売上が1,000万円を超えていないかを見ます。前年3月1日の開業なら、3月1日から6月30日の売上をそのまま使います。

新設法人の資本金

基準期間がない事業年度の開始の日に、資本金が1,000万円以上の法人は、課税事業者です。設立1期目の途中で増資して1,000万円以上になれば、設立2期目は課税事業者です(国税庁タックスアンサーNo.6503)。

資本金が1,000万円未満でも、他の者に株式の50%超を保有され、その他の者の基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円を超える法人(特定新規設立法人)は、課税事業者です。

設立1期目が1年未満のときは、特定期間の範囲が変わります。設立日と決算月を決める前に、2期目の判定を確かめます。

よくある質問

売上が1,000万円を超えたら、いつから消費税を納めますか?
原則として2年後の課税期間からです。個人事業者なら、令和8年の課税売上高が1,000万円を超えた場合、令和10年分から課税事業者になります。ただし、令和8年1月から6月(特定期間)の課税売上高と給与等支払額がどちらも1,000万円を超えると、令和9年分から課税事業者になります。
免税事業者でも請求書に消費税を上乗せしてよいですか?
上乗せして請求すること自体は禁止されていません。ただし、免税事業者はインボイスを発行できないため、登録番号の記載など、適格請求書と誤認されるおそれのある書き方は避けます。
インボイス登録をしたら、もう免税事業者には戻れませんか?
戻れます。登録の取消しを求める届出書を出し、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間が終わったあとの課税期間から、基準期間の課税売上高などの条件を満たせば免税事業者です。

まとめ:判定は2年前、登録は取引先を数えて決めよう

  • 免税事業者は、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者
  • 基準期間が1,000万円以下でも、登録・特定期間の売上超過・課税事業者の選択・新設法人の資本金1,000万円以上では免税にならない
  • 免税事業者が登録を受けると、原則として登録日から2年間は申告が必要で、登録を取りやめても同じ
  • 登録しない影響は、本則課税の取引先の控除に出る。控除できる割合は令和8年10月から70%
  • 登録の要否は、取引先の分類と、特例を含めた納税額の試算で決める

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出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」
  • 国税庁 タックスアンサー No.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」、No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
  • 国税庁 消費税法基本通達1-4-5、質疑応答事例「特定期間の給与等支払額の範囲」
  • 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問7(免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合)
  • 国税庁「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出手続」「申請手続」
  • 国税庁「免税事業者の皆様へ インボイス制度について」(令和8年4月改訂)
  • 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)
  • 公正取引委員会 他「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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