簡易課税と本則課税はどっちが有利?違いと届出の期限を解説

監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉

簡易課税と本則課税の違いは、仕入れに係る消費税を実際の金額で引くか、売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けて概算するかです。実際の仕入れや経費が少ない会社は簡易課税、仕入れが多い会社や機械・車両・店舗工事などの設備投資を予定している会社は本則課税のほうが、納める消費税は少なくなります。判断を重くするのは、選んだあとの縛りです。簡易課税は選ぶと原則2年間やめられず、本則課税のままで税抜1,000万円以上の資産を買うと、3年間は簡易課税に移れません。2割特例が終わる会社や個人事業者は、次の方式と届出の期限を決める段階です。この記事では、違い、有利かどうかの調べ方、届出の期限、選び直せない期間、2割特例のあとの選び方を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。

簡易課税と本則課税の違いは?

結論: 本則課税は実際に支払った消費税を差し引き、簡易課税は売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けた額を仕入分とみなします。実額で引くか、率で決めるかの違いで、どちらが有利かは実際の仕入れの多さで決まります。

計算方法の違い

本則課税(原則課税、一般課税とも呼ばれます)は、売上に係る消費税額から、課税仕入れに係る消費税額を差し引いて納付税額を出します。仕入れや経費を1件ずつ集計するため、仕入れが多い期は納付税額が小さくなります。

簡易課税は、売上に係る消費税額に、事業区分ごとのみなし仕入率(第1種の90%から第6種の40%まで)を掛けた額を、仕入れに係る消費税額とみなします。実際の仕入れの額は、計算に入りません。

違いの早見表

比べる点 本則課税 簡易課税
仕入れに係る消費税 実際に支払った額 売上に係る消費税額×みなし仕入率
仕入れ側のインボイスの保存 仕入税額控除に必要 控除の要件にならない
設備投資の消費税 控除できる 計算に入らない
消費税の還付 受けられる 受けられない
売上の区分 不要 売上を6つの事業区分に分ける
使える条件 制限なし 基準期間の課税売上高が5,000万円以下
事前の届出 不要 消費税簡易課税制度選択届出書が必要
選んだあとの縛り 高額な資産を買うと3年間、簡易課税に移れない 原則2年間、本則課税に戻せない

どちらを選ぶかの結論

選び方の基本は次の3つです。

  • 実際の控除割合(本則課税で引ける仕入税額が、売上に係る消費税額の何%か)がみなし仕入率より低い会社は、簡易課税のほうが納める額は少なくなります
  • 控除割合がみなし仕入率より高い会社や、今後2〜3年に設備投資や輸出売上がある会社は、本則課税を選びます
  • 金額の差が小さいときは、経理の手間で決めて構いません。簡易課税なら仕入先の登録状況を管理する必要がありません

簡易課税の選び方でよくある間違いは?

結論: 間違えやすいのは、設備投資の予定を見ずに選ぶこと、基準期間と届出の期限を取り違えること、2割特例が終わったあとに届出をしないことの3つです。どれも、間違えると納める消費税が増え、あとから直せません。

決算の直前に、来期の機械の購入が決まっているのに簡易課税を選んでいたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。

設備投資の予定を見ずに選ぶ

簡易課税では、機械や車両、店舗の内装工事に消費税を払っても、納める額は変わりません。本則課税なら控除できたはずの消費税が、計算に入らないということです。設備投資が大きい期は、納付税額がマイナスになる還付を受けられる場合もありますが、簡易課税では還付がありません。

判定の期間と届出の期限を取り違える

5,000万円以下かどうかを見るのは、当期の売上ではなく、基準期間の課税売上高です。法人は原則として前々事業年度、個人事業者は前々年が基準期間にあたります。届出書は、適用したい課税期間の初日の前日までに出す必要があり、決算が終わってから前の期にさかのぼって選ぶことはできません。

2割特例が終わったあとに届出をしない

2割特例は届出が不要でしたが、簡易課税は原則として事前の届出が要ります。届出書を出さなければ本則課税になり、仕入れに係る消費税の実額集計とインボイスの保存が始まります。

直近2期分の決算書と今後の設備投資の予定をお持ちいただければ、簡易課税と本則課税それぞれの納税額と、届出書を出す期限を一緒に確かめます。

消費税の申告はまるごとお任せください。税理士法人Light UP の無料相談のご案内です。

簡易課税が有利かどうかの調べ方は?

結論: 本則課税で引ける仕入税額が売上に係る消費税額の何%に当たるかを出し、みなし仕入率と比べます。控除割合がみなし仕入率より低ければ簡易課税、高ければ本則課税のほうが、納める消費税は少なくなります。

実際の控除割合の出し方

有利かどうかを調べる手順
1

売上に係る消費税額を出す
直近の決算書の課税売上高(税抜)に税率を掛ける
2

課税仕入れに係る消費税額を集計する
実際に支払った課税仕入れの消費税を、同じ期間で集計する
3

控除割合を計算する
課税仕入れに係る消費税額を、売上に係る消費税額で割る
4

みなし仕入率と比べる
控除割合のほうが低ければ、簡易課税が有利になりやすい
5

3期分を並べる
1期だけの数字では、たまたまの増減に引きずられる

課税仕入れに入るのは、商品や材料の仕入れ、外注費、家賃、水道光熱費、消耗品費などです。給与、社会保険料、租税公課は課税仕入れに入りません。人件費が中心のサービス業は、控除割合が低くなりやすい業種です。

みなし仕入率の水準

みなし仕入率は、卸売業が90%、小売業が80%、製造業・建設業が70%、飲食店業などが60%、サービス業・運輸通信業・金融保険業が50%、不動産業が40%です(国税庁タックスアンサーNo.6505)。複数の事業がある会社は、売上を区分ごとに分けて集計します。

試算の例

売上に係る消費税額が300万円(課税売上高3,000万円の10%)の場合の例です(説明用の金額です)。

場面 本則課税の納付税額 簡易課税の納付税額 納める額が少ない方式
サービス業(第5種)で、課税仕入れの消費税が90万円 210万円 150万円 簡易課税
建設業(第3種)で、課税仕入れの消費税が240万円 60万円 90万円 本則課税
建設業(第3種)で、課税仕入れ240万円に加えて、1,000万円の機械を購入(消費税100万円) マイナス40万円(還付) 90万円 本則課税

簡易課税の納付税額は、第5種なら300万円×50%で150万円、第3種なら300万円×30%で90万円です。

簡易課税を選ぶ条件と届出の期限は?

結論: 簡易課税を選ぶ条件は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることと、適用したい課税期間の初日の前日までに届出書を出すことの2つです。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下

届出書を出していても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた課税期間は、本則課税で計算します。のちに基準期間の課税売上高が5,000万円以下に戻れば、不適用届出書を出していない限り、再び簡易課税が適用されます(国税庁タックスアンサーNo.6505)。

届出書を出す期限

簡易課税を適用したい課税期間の初日の前日までに、納税地の所轄税務署長へ消費税簡易課税制度選択届出書を出します。3月決算の法人が令和9年4月1日に始まる期から適用するなら令和9年3月31日まで、個人事業者が令和9年分から適用するなら令和8年12月31日までです。

期限には、次の例外があります。

  • 新規開業した事業者:開業した課税期間の末日までに出せば、その課税期間から適用できます
  • 免税事業者がインボイスの登録を受けて課税事業者になる場合:登録を受けた日を含む課税期間中に出せば、その課税期間から適用できます
  • 2割特例や3割特例を適用した翌課税期間:翌課税期間の確定申告期限までに出せば、翌課税期間から適用できます

災害その他やむを得ない事情で期限までに出せなかった場合は、やんだ日から原則2か月以内に特例承認申請書を出し、承認を受けると、簡易課税を適用できる場合があります(国税庁タックスアンサーNo.6632)。

簡易課税を選び直せない期間は?

結論: 簡易課税を選ぶと、事業を廃止した場合を除き、原則2年間は本則課税に戻せません。本則課税のまま税抜1,000万円以上の資産を買うと、3年間は簡易課税に移れません。

方式を選び直せない2つの場面
簡易課税を選んだとき
事業を廃止した場合を除き、2年間は戻せない
戻すには不適用届出書が必要
1年決算なら、本則課税に戻れるのは3年目から
本則課税で高額な資産を買ったとき
税抜1,000万円以上の棚卸資産か調整対象固定資産が対象
取得した期から3年間は簡易課税に移れない
届出書を出したあとに買っても、その届出書は出さなかったものとみなされる

簡易課税を選んだあとの2年

簡易課税をやめるには、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を、やめようとする課税期間の初日の前日までに出します。ただし、選択した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せません(消費税法37条6項)。1年決算の会社が令和9年4月1日から簡易課税を始めた場合、本則課税に戻れるのは令和11年4月1日の期からです。

本則課税で高額な資産を買ったあとの3年

本則課税の課税期間に、一の取引の税抜が1,000万円以上の棚卸資産か調整対象固定資産(税抜100万円以上の建物、機械、車両など)を買うと、高額特定資産に当たります。その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、簡易課税制度選択届出書を出せません(国税庁タックスアンサーNo.6502)。

届出書を出したあとでも、同じ課税期間に高額特定資産を買えば、出していた届出書は出さなかったものとみなされます(消費税法37条4項)。免税事業者が課税事業者を選択した場合や新設法人の場合は、1,000万円に届かない税抜100万円以上の調整対象固定資産でも、同様に3年間、簡易課税を選べません。

2割特例の終了後はどちらを選ぶ?

結論: 2割特例の最後の課税期間は、令和8年9月30日を含む課税期間です。法人は本則課税か簡易課税を選び、個人事業者は令和9年分と令和10年分に限り、3割特例も選べます。

法人と個人事業者の選択肢

事業者 2割特例の最後 終了後の選択肢
法人 令和8年9月30日を含む課税期間 本則課税、簡易課税
個人事業者 令和8年分の確定申告 本則課税、簡易課税、3割特例(令和9年分・令和10年分)

3割特例は、インボイスの登録を機に免税事業者から課税事業者になった個人事業者が、納付税額を売上に係る消費税額の3割にできる制度です(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。法人は対象外です。

簡易課税へ移る届出の期限

2割特例や3割特例を適用した課税期間の翌課税期間なら、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、翌課税期間から簡易課税を適用できます(国税庁Q&A問117)。個人事業者が令和8年分で2割特例を適用していた場合は、令和9年分の申告期限である令和10年3月31日までに出せば、令和9年分から簡易課税です。翌課税期間が令和8年9月30日以前に終わる場合だけは、その翌課税期間中に出します。

免税事業者からの仕入れの経過措置

本則課税を選ぶ場合は、免税事業者などからの課税仕入れの経過措置も関わります。控除できる割合は、令和8年10月1日以後は80%から70%に下がります。そのあとは、令和10年10月1日から50%、令和12年10月1日から30%で、令和13年10月1日以後は控除できません(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。簡易課税は仕入れ側のインボイスの保存が要らないため、この割合の影響を受けません。

よくある質問

簡易課税の届出書はいつまでに出せばよいですか?
適用したい課税期間の初日の前日までです。3月決算の法人なら、翌期から使うために3月31日までに出します。新規開業した課税期間は、その期の末日までに出せば適用できます。
基準期間の課税売上高が5,000万円を超えたらどうなりますか?
その課税期間は、届出書を出していても本則課税で計算します。届出書の効力がなくなるわけではないため、のちに基準期間の課税売上高が5,000万円以下に戻れば、不適用届出書を出していない限り、再び簡易課税が適用されます。
簡易課税でも消費税の還付を受けられますか?
受けられません。仕入れに係る消費税を売上から計算するため、設備投資で多額の消費税を払っても、納付税額がマイナスになることはありません。還付を見込む期は、本則課税で計算します。
2割特例が終わったあと、何もしないとどうなりますか?
本則課税になります。仕入れに係る消費税を実額で集計し、インボイスを保存する作業が始まります。簡易課税を希望するなら、翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出します。

まとめ:控除割合と設備投資で決めよう

  • 本則課税は実際の仕入れの消費税を引き、簡易課税は売上に係る消費税額にみなし仕入率を掛けて計算します
  • 実際の控除割合がみなし仕入率より低ければ簡易課税、高いか設備投資の予定があれば本則課税が有利です
  • 簡易課税の届出書は、適用したい課税期間の初日の前日までに出します
  • 簡易課税は原則2年間、高額な資産を買った本則課税は3年間、方式を選び直せません
  • 2割特例のあとは、翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば簡易課税に移れます

2割特例が終わる方、設備投資を予定している方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の決算書と今後の購入予定を確認し、本則課税と簡易課税の納税額を比べて、届出書の期限まで整理します。

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出典

  • 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」
  • 国税庁 タックスアンサー No.6502「高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除等の特例」
  • 国税庁 タックスアンサー No.6632 災害等により簡易課税制度の適用を受ける(受けることをやめる)必要が生じた場合
  • 国税庁「消費税簡易課税制度選択届出書の記載要領等」
  • 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問117「2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択」
  • 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)

この記事の監修者

中村 清誉

中村 清誉

税理士法人Light UP 代表社員(税理士)

近畿税理士会 尼崎支部 登録番号 5957(税理士法人Light UP)

2013年に税理士事務所を創設。2019年からは会計・コンサルティング・M&Aの支援へ業務を広げ、現在は職員70名の体制で中小企業の税務と経営を支えています。

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