簡易課税と本則課税、どちらを選ぶか

「税理士から簡易課税の方が有利だと言われたが、来年は工場の設備を入れ替える予定がある。それでも簡易課税でよいのか」。「2割特例が終わるので何か選ばないといけないらしいが、届出の期限がいつなのか分からない」――消費税の計算方法をめぐる相談は、この2つの形で持ち込まれます。

簡易課税と本則課税の選択に、一律の正解はありません。ただし判断の順序は決まっています。まず自社の実際の仕入率とみなし仕入率を比べ、次に今後2〜3年の設備投資の予定を確認し、最後に届出の期限と縛りを確認する。この順で見れば、多くの会社は迷わず決められます。

判断を誤ると影響が長く残るのは、選択に縛りがあるためです。簡易課税はいったん選ぶと原則2年間はやめられません。逆に本則課税で高額な資産を取得すると、3年間は簡易課税に移れなくなります。1年だけ試すという使い方ができない制度だという点が、この判断のいちばん重い部分です。

この記事では、両者の計算の違いから始め、選べる条件、有利不利の見分け方、簡易課税が不利になる場面、届出の期限、2年と3年の2つの縛り、そして2割特例が終わったあとの選択までを順に整理します。

2つの計算方法は、仕入れをどう扱うかが違う

結論: 本則課税は実際に支払った消費税を積み上げて差し引き、簡易課税は売上の消費税に業種ごとの率を掛けて仕入分を計算します。実額か概算かの違いです。

本則課税の計算と、簡易課税の計算

課税売上に係る消費税から、課税仕入れに係る消費税を差し引いて納税額を出します。実際の取引を1件ずつ集計するため、仕入れが多い期は納税額が小さくなり、仕入れが少ない期は大きくなります。実態がそのまま反映される方法です。

売上に係る消費税に、業種ごとに定められたみなし仕入率を掛けた金額を、仕入れに係る消費税とみなして差し引きます。実際にいくら仕入れたかは計算に入りません。売上の数字さえあれば納税額が決まります。

インボイスの保存義務が変わる。帳簿づけの手間も違う

本則課税では、仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要です。取引先が登録事業者かどうかを確認し、請求書の記載事項を点検する作業が発生します。簡易課税では仕入れの消費税を実額で集計しないため、この確認作業が不要になります。事務負担の差は、業種によっては金額の差より大きく感じられます。

本則課税では、仕入れ1件ごとに課税・非課税・不課税の区分と、8%か10%かの税率区分を付けます。簡易課税なら、売上側を事業区分ごとに分ける作業は残るものの、仕入側の区分は不要です。経理に人手を割けない会社では、この差が選択の理由になることがあります。

簡易課税を選べる条件

結論: 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることと、適用を受けたい課税期間が始まる前に届出書を出していることの2つが要件です。

売上の基準は5,000万円。基準期間を超えた期は本則に戻る

e-Gov法令検索で条文を確認すると、消費税法第37条第1項は簡易課税の適用対象を「基準期間における課税売上高が五千万円以下である課税期間」と定めています。基準期間は、法人なら前々事業年度、個人事業主なら前々年です。当期の売上ではない点に注意が要ります。

基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた課税期間は、届出を出していても自動的に本則課税になります。届出そのものが失効するわけではないため、翌々期に売上が下がれば再び簡易課税が適用されます。売上が5,000万円前後で動く会社は、この切り替わりを毎期確認する必要があります。

届出は課税期間の開始前まで

同条は、届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間から適用すると定めています。つまり、適用を受けたい課税期間が始まる前日までに提出しなければなりません。決算が終わってから振り返って選ぶことはできません。

適用を受けたい期が始まる前日までです。期が始まってからでは間に合いません。決算の直前に思い立っても動かせない部分です。

どちらが有利になりやすいか

結論: 実際の仕入率がみなし仕入率を下回る事業は簡易課税、上回る事業は本則課税が有利になりやすい傾向があります。出発点は、自社の実際の仕入率を出すことです。

実際の仕入率を計算し、みなし仕入率と比べる

課税仕入れの金額を課税売上高で割ると、実際の仕入率が出ます。ここでいう課税仕入れには、商品や材料の仕入れだけでなく、外注費、家賃、水道光熱費、消耗品費など課税対象の経費がすべて含まれます。人件費と社会保険料、租税公課は含みません。

事業区分 主な業種 みなし仕入率 有利になりやすい方
第1種 卸売業 90% 実際の仕入率が90%未満なら簡易
第2種 小売業 80% 実際の仕入率が80%未満なら簡易
第3種 製造業・建設業 70% 材料の自己調達が多いと本則も検討
第4種 飲食店業など 60% 原価率次第で分かれる
第5種 サービス業・運輸通信業 50% 経費が少ない業種は簡易が有利
第6種 不動産業 40% 実額が少なければ簡易

人件費が原価の中心を占めるサービス業では、実際の仕入率が50%を下回ることが多く、簡易課税が有利に傾きます。逆に、材料費や外注費の比率が高い建設業では、実額の方が大きくなる場合があります。

3期分で見る

1期だけの数字で判断すると、たまたま仕入れが多かった年や少なかった年に引きずられます。過去3期分の実際の仕入率を並べると、平均と振れ幅が見えます。

1期だけの数字では、たまたまの年かどうかが分かりません。3期を並べて、仕入率の水準が安定しているかを見ます。投資の予定がある期は別に扱います。平常の年の水準で当たりをつけるのが基本です。

簡易課税が不利になる3つの場面

結論: 簡易課税では、実際にいくら支払っても仕入税額は売上から計算されます。大きな支出があっても納税額は変わらず、還付も受けられません。

工場、店舗、車両、機械。高額な資産を取得すると、本則課税なら支払った消費税を控除できます。簡易課税では、この支出が計算に一切反映されません。投資の予定が具体化している時期に簡易課税を選ぶと、控除できたはずの金額を失います。

輸出取引は消費税が免除されますが、仕入れにかかった消費税は控除の対象です。本則課税なら還付になる場面でも、簡易課税では還付を受けられません。輸出の比率が高い事業者に簡易課税は向きません。

開業初期に在庫を積んだ、大規模な広告投資を行った、といった局面では、支払った消費税が預かった消費税を上回ります。本則課税なら差額が還付されますが、簡易課税では納税額が発生します。

簡易課税が不利になる3つの場面
01
設備投資を予定している
実際にいくら払っても仕入税額は売上から計算される。還付も受けられない
02
輸出売上がある
売上に消費税がかからないため、簡易課税では控除する原資が生まれない
03
創業期や赤字で仕入れが先行する
支払った消費税のほうが大きくても、計算に反映されない
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選ぶ前に必ず行う試算

結論: 比較は感覚ではなく数字で行います。手順は5つで、いずれも決算書と試算表から出せます。

  1. 直近3期の課税売上高を、事業区分ごとに分けて集計します。
  2. 同じ期の課税仕入れを集計し、実際の仕入率を出します。
  3. 本則課税での納税額を、各期について計算します。
  4. 簡易課税での納税額を、事業区分ごとのみなし仕入率で計算します。
  5. 今後2〜3年の設備投資予定を洗い出し、その消費税額を4の結果に加味します。

5の工程を省くと、目先の1年だけを見て選ぶことになります。縛りの期間が2年から3年に及ぶ制度なので、判断の射程もそこに合わせる必要があります。

選ぶ前に行う試算
1

課税売上高を出す
直近の決算書から、税抜の課税売上高を取る
2

課税仕入れを集計する
実際に支払った課税仕入れを、同じ期間で集計する
3

実際の仕入率を計算する
課税仕入れを課税売上高で割る
4

みなし仕入率と比べる
実際の率のほうが低ければ、簡易課税が有利になりやすい
5

3期分で見る
単年では偶然の増減に引きずられる

届出の期限は、適用を受けたい期が始まる前日

結論: 簡易課税を選ぶには、適用したい課税期間の初日の前日までに届出書を提出します。期限後の提出はその期に間に合いません。

原則の期限と、新規開業した期の例外

3月決算の法人が翌期から簡易課税にしたいなら、3月31日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出します。個人事業主が翌年から適用したいなら、その年の前年12月31日までです。年末年始をはさむため、個人事業主は特に早めの提出が必要です。

事業を開始した課税期間については、その課税期間中に提出すればその期から適用できます。法人を設立した年度、個人が開業した年は、期末までに判断すれば間に合うということです。

災害等があった場合の特例

災害その他やむを得ない事情により被害を受けた事業者は、税務署長の承認を受けることで、期限後であっても簡易課税を選択または取りやめることができます。地震や水害の後に設備を入れ替える場合など、当初の判断と前提が変わったときの救済です。

被災した場合に、期限後でも届出を認める扱いがあります。対象になるかは個別の判断ですので、税務署に確認することです。

2年間はやめられない

結論: 簡易課税を選ぶと、原則として2年間は本則課税に戻せません。事業年度でいえば実質的に2期分、判断が固定されます。

e-Gov法令検索の消費税法第37条第6項は、届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き「同項に規定する翌課税期間の初日から二年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ」やめる旨の届出書を提出することができないと定めています。

やめるときは消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出しますが、その効力が生じるのは提出した日の属する課税期間の翌課税期間からです。つまり、やめられる時期が来てから届出を出し、さらに次の期から本則に戻るという流れになります。設備投資の時期が決まっているなら、この時間差を織り込んだ逆算が要ります。

本則課税を選んだ場合の3年縛り

結論: 本則課税の期間中に高額な資産を取得すると、その後3年間は簡易課税を選べなくなります。還付を受けたあとすぐ簡易課税へ移ることを防ぐ仕組みです。

本則課税の期間中に高額な資産を取得すると
本則課税の期間中の取得
調整対象固定資産
課税事業者選択や新設法人の特例を受けている期に取得すると、3年間は簡易課税を選べない
高額特定資産
定められた額以上の棚卸資産や調整対象固定資産を取得すると、3年間は簡易課税を選べない
制度の狙い
還付を受けたあとすぐ簡易課税へ移ることを防ぐ仕組み
実務での影響
順番を間違えると、その後の期も身動きが取れなくなる

調整対象固定資産と高額特定資産

税抜100万円以上の建物、機械、車両などを本則課税の期間中に取得した場合、取得した課税期間から一定期間、簡易課税制度選択届出書を提出できません。消費税法第37条第3項が、届出書を提出できない期間を定めています。

税抜1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産を取得した場合は、さらに縛りが重くなります。消費税法第12条の4第1項は、高額特定資産の仕入れ等を行った場合、その日の属する課税期間の翌課税期間から3年を経過する日の属する課税期間までは、納税義務の免除も簡易課税の選択もできない旨を定めています。

順番を間違えると身動きが取れない

還付を受けるために本則課税を選び、大きな設備を入れ、翌期から簡易課税に戻る。この動きは制度上できません。投資と選択の順序は、3年先まで見て組み立てるほかありません。

本則で仕入税額控除を受けてから、簡易へ移ろうとして止まる形です。高額な資産を買う予定があるなら、その前に方式を決めておくことです。投資と届出の順番が結果を決めます。

現場で多い3つの誤解

結論: 選択の相談で最初に解いておく必要があるのは、制度そのものへの思い込みです。相談でよく出る3つを整理します。

相談で最初に解く3つの思い込み
よくある思い込み
簡易課税は税負担が軽くなる制度だ
5,000万円は当期の売上で判定する
2割特例と簡易課税は同じもの
実際のところ
事務を簡便にする制度で、有利不利は仕入率で決まる
判定するのは基準期間の課税売上高
別の制度で、届出も適用期間も違う

簡易課税は税負担が軽くなる制度ではない/5,000万円は当期の売上ではない

名称から、簡易課税は納税額が減る制度だと思われがちですが、そうではありません。計算方法を簡便にする制度であり、実際の仕入率がみなし仕入率を上回っていれば、簡易課税の方が納税額は大きくなります。有利不利は事業の中身で決まります。

判定に使うのは基準期間、つまり法人なら前々事業年度の課税売上高です。当期の売上が5,000万円を超えていても、基準期間が5,000万円以下なら簡易課税を適用できます。逆に、当期が減収でも基準期間が超えていれば本則課税です。

2割特例と簡易課税は別の制度

2割特例は売上に係る消費税の2割を納めるという特例で、届出なしに申告時の選択で使えました。簡易課税は事前の届出が要る制度です。2割特例を使っていた事業者が、届出をしないまま簡易課税で計算することはできません。ここを取り違えると、申告の直前に打つ手がなくなります。

2割特例には届出が要らず、期限もあります。

2割特例が終わったあとの選択

結論: 2割特例の対象だった事業者は、令和8年9月30日を含む課税期間を最後に次の方法を選ぶことになります。この場合の届出には、期限が緩和される特例があります。

2割特例が終わったあとの選択
2割特例の対象だった事業者
簡易課税を選ぶ
事業区分の判定が要る。届出の期限には緩和の特例がある
本則課税で計算する
届出は要らない。インボイスの保存と実額の集計が始まる
免税事業者に戻る
登録の取消しが前提。基準期間の課税売上高の要件も満たす必要がある
どれを選んでも共通
免税事業者からの仕入れの控除割合も同時に下がる

選択肢は3つ。届出期限が緩和される

本則課税、簡易課税、そして個人事業主であれば3割特例です。3割特例は個人事業者のみが対象で、令和9年分と令和10年分の2年間に限られます。法人には受け皿がありません。

2割特例の適用を受けた事業者は、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出すれば、提出した課税期間から簡易課税を適用できます。前期末までという原則が緩和されるため、実質的に1年の猶予があります。ただし提出を忘れれば自動的に本則課税になるため、期限の管理は必要です。

免税事業者からの仕入れも変わる

本則課税を選ぶ場合、免税事業者からの仕入れに係る経過措置の割合が、令和8年10月1日以後は80%から70%に下がります。令和10年10月1日以後は50%、令和12年10月1日以後は30%と、2年ごとに下がります。免税事業者との取引が多い会社では、この縮小分も納税額に影響します。仕入先の登録状況も合わせて見る必要があります。

経過措置の割合が下がるため、本則課税の負担は増えていきます。この動きも、方式を選ぶときの材料になります。

事業区分の判定が簡易課税の前提

結論: 簡易課税を選ぶなら、自社の売上がどの事業区分に当たるかを正しく判定する必要があります。区分を誤ると納税額そのものが変わります。

同じ会社の中で複数の事業を行っている場合は、売上を区分ごとに分けて集計します。区分できていないと、もっとも低いみなし仕入率が適用されます。飲食業と物販、建設と保守、といった組み合わせは判定が分かれやすいところです。

事務負担とシステムの観点

結論: 金額の差が小さいときは、経理にかかる時間で決めて構いません。会計ソフトの設定と仕入先の管理にかかる手間は、毎月続きます。

毎月続く事務の違い
01
仕入先の管理
本則課税では、相手が登録しているかを取引先ごとに管理し続ける
02
会計ソフトの設定
税区分の設定が方式で変わる。切り替えの期は特に確認が要る
03
事業区分の記録
簡易課税では、売上を区分して記帳する運用が要る
04
顧問税理士との分担
どちらがどこまで見るかを決めておく。毎月続く作業になる

仕入先の登録状況を管理する手間と、会計ソフトの設定

本則課税では、仕入先が登録事業者かどうかで控除できる金額が変わります。取引先が多い会社ほど、この管理の負担が大きくなります。簡易課税なら不要です。

いずれの方式でも、会計ソフト側で課税方式を設定します。期の途中で方式が変わることはないため、期首に設定を見直し、前期と違う場合は切り替えが要ります。設定を変え忘れたまま1年分入力し、決算で気づくという事故が起きます。

顧問税理士との分担

どちらの方式でも申告書は作成できますが、本則課税の方が確認作業は増えます。記帳を自社で行うのか、丸ごと委託するのかによっても、選ぶべき方式の重みは変わります。

どこまで自社で入力し、どこから任せるか。方式を変える年は、この分担も見直す機会になります。設定の変更を誰が行うかまで決めておくことです。期首をまたぐ作業なので、早めに話しておきます。

判断のチェックリスト

結論: 次の項目のうち、当てはまるものが多い方が自社に向いた方式です。金額の試算と合わせて見るための一覧です。

確認項目 簡易課税に向く 本則課税に向く
実際の仕入率とみなし仕入率 実際の方が低い 実際の方が高い
今後2〜3年の設備投資 予定なし 予定あり
輸出売上 なし あり
免税事業者からの仕入れ 多い 少ない
経理にかけられる人手 限られる 確保できる
売上の変動 安定している 大きく動く
基準期間の課税売上高 5,000万円以下 5,000万円超もありうる

事例|選択で分かれた4つの場面

結論: 実際の相談では、金額の比較よりも将来の予定を織り込めたかどうかで結果が分かれています。典型を4つ挙げます。

設備投資の予定を伝えていなかった製造業。 実際の仕入率がみなし仕入率を下回っていたため簡易課税を選択。その翌期に2,000万円の機械を導入し、控除できたはずの消費税が計算に反映されませんでした。2年縛りのため本則へ戻すこともできず、投資の時期を1期後ろにずらす選択もできない状況でした。

人件費中心のサービス業。 課税仕入れが売上の3割程度で、第5種のみなし仕入率50%を大きく下回っていました。簡易課税を選択し、納税額とインボイスの確認作業の両方が軽くなっています。

輸出比率が上がった卸売業。 従来は簡易課税でしたが、輸出売上が全体の4割を超えた時点で本則課税へ切り替え。還付を受けられる体制に変えています。切り替えの届出期限を前期末に設定して管理しました。

2割特例が終わる個人事業主。 令和8年分が2割特例の最後の年でした。翌課税期間中に届出を出せばその年から簡易課税を適用できる特例を使い、令和9年分から第5種で申告する形に整えています。

よくある質問

Q. 簡易課税と本則課税は毎年選び直せますか?
A. 選び直せません。簡易課税を選ぶと原則2年間はやめられず、本則課税の期間中に高額な資産を取得すると3年間は簡易課税へ移れません。判断の射程は2〜3年で考えてください。

Q. 届出書はいつまでに出せばよいですか?
A. 適用を受けたい課税期間の初日の前日までです。3月決算の法人なら3月31日、個人事業主なら前年12月31日が期限になります。新規開業した課税期間だけは、その期中の提出で間に合います。

Q. 基準期間の売上が5,000万円を超えたらどうなりますか?
A. その課税期間は自動的に本則課税になります。届出が失効するわけではないため、翌々期に売上が5,000万円以下に戻れば、再び簡易課税が適用されます。

Q. 簡易課税でも消費税の還付を受けられますか?
A. 受けられません。仕入税額は売上から計算されるため、実際にどれだけ支払っても控除額は変わらず、納税額がマイナスになることはありません。還付を見込むなら本則課税を選ぶ必要があります。

Q. 事業区分が分からない場合はどうすればよいですか?
A. 取引の実態で判定します。同じ商品でも、そのまま販売するのか加工するのかで区分が変わります。判定を誤ると納税額が変わるため、選択の前に確認してください。

Q. 2割特例が終わったあと、何もしないとどうなりますか?
A. 届出を出していなければ本則課税になります。仕入税額の実額集計とインボイスの保存が必要になるため、簡易課税を希望するなら期限内の届出が要ります。

まとめ:仕入率で当たりをつけ、投資予定と縛りで最終判断する

簡易課税と本則課税の選択は、3つの段階で決まります。まず実際の仕入率とみなし仕入率を比べ、どちらが有利になりやすいかの当たりをつける。次に今後2〜3年の設備投資や輸出の予定を確認し、還付の可能性があるかを見る。最後に届出の期限と、2年・3年の縛りに照らして実行可能かを確かめる。

この順序を守れば、判断そのものは難しくありません。実際につまずくのは、1年分の数字だけで決めてしまい、翌期の投資予定を織り込まなかった場合です。制度の縛りが2年から3年に及ぶ以上、判断の射程もそこに合わせる必要があります。

2割特例の対象だった事業者は、令和8年9月30日を含む課税期間が最後となります。翌課税期間中に届出を出せばその期から簡易課税を適用できる特例がありますが、何もしなければ本則課税です。期限の管理を先に済ませてください。

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出典

  • e-Gov法令検索 消費税法 第37条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)第1項・第3項・第6項
  • e-Gov法令検索 消費税法 第12条の4(高額特定資産を取得した場合等の納税義務の免除の特例)
  • e-Gov法令検索 消費税法 第37条の2(災害等があった場合の中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例の届出に関する特例)
  • 国税庁「消費税の仕組み」「簡易課税制度」
  • 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)」

【メタディスクリプション】
簡易課税と本則課税の選び方を、実際の仕入率の出し方、設備投資や輸出がある場合の不利、届出期限、2年縛りと3年縛り、2割特例終了後の届出特例まで条文にもとづいて整理しました。判断のチェックリストと事例つきです。

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