簡易課税のみなし仕入率は何%?業種別の一覧と区分の見分け方
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
簡易課税のみなし仕入率(みなし仕入れ率とも書きます)は、事業区分によって第1種の90%から第6種の40%まで6段階に決まっています。売上に係る消費税額にこの率を掛けた額が仕入税額とみなされ、実際の仕入れや経費の額は計算に入りません。区分は会社の業種ではなく取引ごとに判定し、区分が1段違うと、納める消費税は売上に係る消費税額の10%分変わります。この記事では、業種ごとの率、当てはめの間違い、2種類以上の事業の計算、届出の期限を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
業種ごとのみなし仕入率はいくら?
結論: みなし仕入率は事業区分で決まり、卸売業の第1種が90%、小売業の第2種が80%、製造業・建設業の第3種が70%、第4種が60%、サービス業の第5種が50%、不動産業の第6種が40%です。
6つの事業区分と率の早見表
国税庁のタックスアンサーによると、区分と率は次のとおりです。
| 事業区分 | みなし仕入率 | 主な事業 |
|---|---|---|
| 第1種 | 90% | 卸売業(仕入れた商品をそのまま他の事業者に売る) |
| 第2種 | 80% | 小売業(仕入れた商品をそのまま消費者に売る)、農業・林業・漁業のうち飲食料品の販売 |
| 第3種 | 70% | 農業・林業・漁業(飲食料品を除く)、鉱業、建設業、製造業(自分で作った物を消費者に直接売る製造小売業を含む)、電気・ガス・熱供給・水道業 |
| 第4種 | 60% | 飲食店業と、ほかの区分に当たらない事業(使っていた固定資産の売却、加工賃だけを受け取る仕事など) |
| 第5種 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) |
| 第6種 | 40% | 不動産業 |
第3種・第5種・第6種の範囲は、日本標準産業分類(総務省)の大分類が基礎です(消費税法基本通達13-2-4)。
みなし仕入率で納付税額が決まる仕組み
納付税額は、売上に係る消費税額から、その額にみなし仕入率を掛けた金額を引いて出します。売上に係る消費税額が100万円の場合は次のとおりです(説明用の金額です。国税の分です)。
| 事業区分 | 仕入税額とみなす額 | 納付税額 |
|---|---|---|
| 第5種(50%) | 50万円 | 50万円 |
| 第1種(90%) | 90万円 | 10万円 |
仕入れや経費の額がいくらでも、この計算は変わりません。区分が1段違えば、納付税額は10万円動きます。
みなし仕入率の当てはめでよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、会社の業種で一括して決める、卸売と小売を混ぜる、自分で作った物・加工賃・下請けの区分を取り違える、区分を記録に残さない、の4つです。
決算の直前に、全部の売上を1つの区分で申告していたと気づいて相談に来られる方が少なくありません。率が実態より高ければ追加の消費税を納め、低ければ納めすぎになります。
会社の業種で一括して決めてしまう
区分は、会社全体ではなく、原則として取引ごとに判定します(通達13-2-1)。仕入れた商品を売る売上は第2種、自分で作った惣菜を売る売上は第3種というように、1つの店の中に複数の区分が混ざります。
卸売と小売の区別を販売先で付けていない
仕入れた商品をそのまま売る場合、売った相手が事業者なら第1種(90%)、消費者なら第2種(80%)です。同じ商品でも相手で区分が変わるので、売上の記録に「誰に売ったか」を残す必要があります。
商標を貼る、組み立て式の家具を組み立てる、複数の仕入商品を箱詰めするといった程度なら、そのまま売ったものとして扱います(通達13-2-2)。
自分で作った物・加工賃・下請けの取り違え
- 自分で作って消費者に直接売る:パンや菓子、惣菜を店頭で売る製造小売業は第3種(70%)です。小売の第2種(80%)ではありません(通達13-2-6)
- 他の人の材料に加工して加工賃を受け取る:製造業などに当たる事業でも、加工賃を対価とする役務の提供は第4種(60%)です(通達13-2-4、13-2-7)。ただしクリーニングのようにサービス業に当たる事業は第5種です
- 請け負った建設工事を全部下請けに出す:自社で施工しなくても第3種のままです(通達13-2-5)
- 材料の支給を受けて施工だけを請け負う手間請け:他の者の材料に加工を施して対価を受ける役務に当たるかの判断になり、契約の内容で結論が変わります。材料の負担者が契約書と請求書に書かれているかを見ます
飲食店の持ち帰りと出前
店内で飲食させる事業は第4種(60%)で、店で出すのと同じ調理済みの料理の出前も第4種です。一方、飲食店が自分で作った料理を持ち帰り用として売る事業は、製造小売業として第3種(70%)になります。飲食の設備を設けず宅配だけで売る事業も第3種です(通達13-2-8の2)。
区分を記録していない
売上を区分していない部分には、区分していない事業のうち最も低いみなし仕入率を使います(国税庁タックスアンサーNo.6505)。卸売(第1種)と不動産賃貸(第6種)を営む会社が区分をしていなければ、全体が40%です。有利な区分の売上があっても、記録で説明できなければその率は使えません。税務調査でも、請求書の明細やレジの部門の設定といった区分の根拠が見られます。
直近1年の売上の内訳と請求書の控えをお持ちいただければ、取引ごとの事業区分と、いま申告している率が合っているかを一緒に確かめます。
自社の事業区分はどう判定する?
結論: 区分は、取引ごとに何を・誰に・どんな形で提供したかを見て決めます。まず仕入れた物をそのまま売ったかを見て、売っていなければ事業の種類で第3種から第6種を当てはめます。
取引ごとの判定の順番
税理士は、売上の科目と請求書の明細を取引の種類ごとに並べ直し、複数の区分が混ざっていないかを見ます。判定は次の順に進めます。
迷いやすい取引の区分
| 取引 | 区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 美容室が仕入れた化粧品を売る | 第2種 | サービス業でも、仕入れた物をそのまま消費者に売る事業は第2種だから(通達13-2-4) |
| 自分で建築した住宅を売る | 第3種 | 建設業に当たるから |
| 他の者が建てた住宅を買って売る | 第1種または第2種 | 仕入れた物をそのまま売る事業だから |
| 事業で使っていた車両や機械を売る | 第4種 | 固定資産の売却は第4種と決まっているから |
2種類以上の事業があるときの計算は?
結論: 原則は事業ごとに計算します。1種類の事業が課税売上高の75%以上なら、その率を全体に使えます。3種類以上で特定の2種類の合計が75%以上なら、別の特例で計算できます。
原則は事業ごとに計算する
事業区分ごとの売上に係る消費税額に、それぞれのみなし仕入率を掛けて合計します。区分ごとの売上が分かる記帳が前提です。
75%以上を占める事業があるときの特例
国税庁のタックスアンサーNo.6505では、次の2つの特例が示されています。
どちらの特例も、原則の計算と比べて有利なほうを選べます。売上の構成は毎期変わるので、毎期試算します。
3種類の事業がある場合の計算例
第1種の売上が3,000万円、第3種が1,500万円、第5種が500万円で、売上に係る消費税額を課税売上高の10%とした例です(説明用の金額です)。
| 計算方法 | 計算 | 仕入税額とみなす額 | 実質の率 |
|---|---|---|---|
| 原則 | 300万円×90%+150万円×70%+50万円×50% | 400万円 | 80% |
| 特例(第1種と第3種の合計が90%) | 300万円×90%+(150万円+50万円)×70% | 410万円 | 82% |
第1種だけでは60%で75%に届きませんが、第1種と第3種の合計は90%です。第1種に90%、残り全体に低いほうの70%を使えるため、特例のほうが10万円大きくなります。
区分を日々の記帳で分けるには?
結論: 区分は、取引の日に付けます。レジの部門、請求書の明細、売上科目のどれかで区分が分かる形にしておき、決算でまとめて分けることはしません。
区分を付ける場所
レジや販売システムでは、商品ごとに区分を持たせておくと、入力のたびに判断せずに済みます。請求書は、材料費と工事費、商品代と作業料のように品目ごとに区分が分かる書き方にし、会計ソフトは区分ごとに売上科目を分けます。区分が付かない売上は、面積・数量・時間などで按分し、算定の根拠を1枚残します。値引きや返品は、元の取引の区分から引きます(通達13-2-10)。
簡易課税と本則課税はどちらが有利?
結論: 本則課税で控除できる仕入税額が、売上に係る消費税額の何%になるかを出し、みなし仕入率と比べます。その割合がみなし仕入率より低い会社は、簡易課税のほうが納める額が少なくなります。
実際の控除割合とみなし仕入率を比べる
実際の控除割合がみなし仕入率より低い会社は簡易課税、高い会社は本則課税のほうが、納める額は少なくなります。簡易課税なら、売上の区分だけで申告書が作れます。
その代わり、高額な設備を買って多額の消費税を支払った年でも、その分は控除に入らず、還付を受けられません。大きな設備投資を予定している年は、本則課税のほうが有利です。
簡易課税の届出はいつまでに出す?
結論: 簡易課税を使いたい課税期間の初日の前日までに、消費税簡易課税制度選択届出書を税務署へ出します。期限を過ぎると、その課税期間は本則課税のままです。
届出の期限と使える条件
3月決算の法人が令和9年4月1日に始まる期から使うなら、令和9年3月31日までに出します。使える条件は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることです。基準期間は、個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度です。
届出を出していても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた課税期間は、本則課税で計算します。国税庁のタックスアンサーNo.6505は、のちに基準期間の課税売上高が5,000万円以下に戻れば、不適用届出書を出していない限り「再び簡易課税制度が適用されます。」と説明しています。
期限に例外がある場合
初日の前日という期限には、次の例外があります(国税庁タックスアンサーNo.6505、インボイス制度のQ&A問117)。国税庁のQ&Aは、簡易課税が2割特例や3割特例と異なり「原則として事前の届出が必要となりますので、ご留意ください。」とも注意しています。
- 免税事業者がインボイスの登録を受けて課税事業者になる場合:登録を受けた課税期間中に届出書を出せば、その課税期間から使えます
- 2割特例や3割特例を使った翌課税期間:その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば、翌課税期間から使えます。翌課税期間が令和8年9月30日以前に終わる場合は、その翌課税期間中に出します
2割特例を使えるのは、令和8年9月30日の属する課税期間までです。個人事業者が令和8年分まで2割特例を使い、令和9年分から簡易課税にするなら、令和9年分の確定申告期限(令和10年3月31日)までに届出書を出します。3割特例は、個人事業者の令和9年分・令和10年分だけの制度です。
本則課税へ戻すとき
簡易課税をやめるには、やめようとする課税期間の初日の前日までに、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を出します。事業を廃止した場合を除き、選択した課税期間から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ出せないため、1年決算なら本則課税に戻れるのは早くて3年目です。
大きな設備投資の期に本則課税で還付を受けたいなら、その期の初日の前日までに不適用届出書を出します。2年間の縛りと投資の時期を並べて、先に逆算しておきます。
よくある質問
卸売業と小売業の違いは何ですか?
区分を分けずに申告するとどうなりますか?
届出書はいつまでに出せばよいですか?
まとめ:区分は取引ごとに決めよう
- みなし仕入率は事業区分で決まり、第1種の90%から第6種の40%までの6段階です
- 区分は会社の業種ではなく、取引ごとに判定します
- 区分を記録していない部分には、最も低い率が使われます
- 1種類の事業が75%以上、または3種類以上で2種類の合計が75%以上なら、特例で計算できます
- 届出書は、使いたい課税期間の初日の前日までに出します
売上に複数の事業が混ざっている方、区分を決めずに申告してきた方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近1年の売上の内訳を確認し、取引ごとの区分と、原則・特例・本則課税のどれが有利かを整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」
- 国税庁 タックスアンサー No.6509「簡易課税制度の事業区分」
- 国税庁 消費税法基本通達 第13章第2節「事業区分の判定」
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問117「2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択」(令和8年4月改訂)
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」(3割特例)





