課税事業者の条件とは?なるべきかの判断方法と届出の期限
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
課税事業者になる条件は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えること、特定期間の売上と給与がどちらも1,000万円を超えること、新設法人の資本金が1,000万円以上であること、インボイスの登録や届出で自分から選ぶことの4つです。課税事業者とは、消費税の申告と納付が必要な事業者のことです。前の3つは選べず、4つ目だけが自分で決められます。令和8年10月1日からは、免税事業者から仕入れた取引先が控除できる割合が80%から70%に下がります。この記事では、条件、登録するかどうかの決め方、届出の期限を、国税庁の公表資料(2026年10月時点)に沿って整理します。
課税事業者になる条件は?
結論: 課税事業者になる条件は、基準期間の売上、特定期間の売上と給与、新設法人の資本金、自分で選ぶことの4つです。最初の3つに当てはまれば、選ぶ余地はなく課税事業者です。
条件の早見表
| 条件 | 見るもの | 課税事業者になるとき |
|---|---|---|
| 基準期間 | 個人は前々年、法人は前々事業年度の課税売上高 | 1,000万円を超えたとき |
| 特定期間 | 個人は前年1月1日から6月30日、法人は前事業年度開始の日から6か月の課税売上高と給与等支払額 | どちらも1,000万円を超えたとき |
| 新設法人 | 設立の最初の事業年度開始の日の資本金 | 1,000万円以上のとき |
| 自分で選ぶ | 課税事業者選択届出書の提出、またはインボイス発行事業者の登録 | 提出した、または登録を受けた課税期間から |
基準期間は2年前の売上
基準期間とは、個人事業者ならその年の前々年、事業年度が1年の法人ならその前々事業年度です(国税庁タックスアンサーNo.6501)。決め手は今年ではなく2年前の売上です。
課税売上高とは、消費税がかかる売上の合計です。課税事業者だった期間は消費税を除いた金額で、免税事業者だった期間は受け取った全額で数えます。令和9年分の個人事業者なら、見るのは令和7年の課税売上高です。
特定期間は売上と給与の両方を見る
基準期間の売上が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者になる場合があります。ただし、特定期間の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額でもでき、どちらで判定するかは納税者が決められます(国税庁タックスアンサーNo.6501)。
つまり、どちらか一方でも1,000万円以下なら免税のままです。前年1月から6月の課税売上高が1,200万円でも、給与等支払額が500万円なら、給与で判定して免税です(説明用の例です)。
新設法人は資本金で決まる
設立の最初の事業年度開始の日に、資本金か出資金が1,000万円以上の法人は、新設法人として課税事業者です。設立1期目と2期目が対象です。資本金1,000万円未満で設立しても、1期目の途中で増資して1,000万円以上になれば、2期目は課税事業者です(国税庁タックスアンサーNo.6503)。
資本金が1,000万円未満でも、親会社などの売上が5億円を超える新設法人(特定新規設立法人)は課税事業者です。
自分で選ぶ場合
免税事業者でも、課税事業者選択届出書を出すか、インボイス発行事業者の登録を受けると、課税事業者になります。選んだあとは、原則として2年間は免税事業者に戻れません。このほか、相続・合併・分割や、高額な資産の取得でも、免税の扱いが変わる場合があります(国税庁タックスアンサーNo.6501)。
消費税の判定でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、今年の売上で判定すること、特定期間の見落とし、届出書の出し忘れの3つです。間違えると、申告の期限を過ぎてしまいます。
課税事業者になるのは2年先だと思っていたら、前年上半期の売上と給与で課税事業者になっていたと、申告期限のあとに相談に来られる方が少なくありません。
今年の売上だけで判定する
今年の売上が大きくても、基準期間も特定期間も要件に当たらなければ、今年は免税です。逆に、今年の売上が小さくても、2年前の売上が1,000万円を超えていれば課税事業者です。
特定期間の売上と給与を見落とす
基準期間だけを見て免税と考えていても、特定期間の売上と給与がどちらも1,000万円を超えていれば、課税事業者です。給与の支払額も月ごとに集計しておきます。
届出書を出し忘れる
課税事業者になったら、基準期間用か特定期間用の消費税課税事業者届出書を、事由が生じたら速やかに出します(国税庁タックスアンサーNo.6629)。申告が期限に遅れると、本来の消費税に加えて無申告加算税や延滞税がかかります。
直近2年分の申告書と、前年1月から6月の月ごとの売上と給与の一覧、主な取引先の一覧をお持ちいただければ、課税事業者になる時期と、免税のままでいられる期間、届出書を出す期限を一緒に確かめます。
登録するかどうかの決め方は?
結論: 免税のまま取引を続けるか、登録して課税事業者になるかは、本則課税の課税事業者向けの売上がどれだけあるかで決めます。条件に当たる場合は、決める余地はありません。
売上の相手で影響が決まる
登録しないと影響を受けるのは、本則課税で申告している課税事業者に売る分だけです。一般消費者と免税事業者は消費税を控除せず、簡易課税や2割特例を使う相手は仕入れの消費税を売上から計算するので、あなたのインボイスの有無は相手の納税額に関係しません。
業種別の目安
| 売上の相手 | 業種の例 | 登録の必要性 |
|---|---|---|
| 一般消費者が中心 | 飲食店、美容室、学習塾、小売店 | 低い |
| 課税事業者の法人が中心 | 建設業の一人親方、企業向けの運送業、フリーランスのデザイナーやライター | 高い |
同じ業種でも、売上の何割が本則課税の課税事業者向けかで変わります。
税理士が確かめる順番
最後は数字を並べて決めます。
免税のままだと何が起きる?
結論: 登録しなくても免税のままでいられます。ただし、取引先が控除できる割合は令和8年10月1日から70%に下がり、取引先の負担は段階的に増えます。
取引先が控除できる割合の推移
免税事業者などからの仕入れは、経過措置で一定の割合を控除できます。割合は令和8年度税制改正で次のとおり変わりました(国税庁「令和8年度税制改正特集」令和8年9月)。控除できない額は、年間の売上900万円(税込990万円)のすべてが本則課税の取引先向けで、消費税相当額が90万円の場合の説明用の金額です。
| 期間 | 控除できる割合 | 取引先が控除できない額 |
|---|---|---|
| 令和8年9月30日まで | 80% | 18万円 |
| 令和8年10月1日から令和10年9月30日まで | 70% | 27万円 |
| 令和10年10月1日から令和12年9月30日まで | 50% | 45万円 |
| 令和12年10月1日から令和13年9月30日まで | 30% | 63万円 |
| 令和13年10月1日以後 | 控除できない | 90万円 |
控除できない額は、売上の消費税相当額に、控除できない割合(令和8年10月からは30%)を掛けて出します。この額の一部を、値引きとして求められる場合があります。
値引きの要請と独占禁止法
財務省・公正取引委員会などのQ&A(令和4年1月公表)は、免税事業者との取引条件をインボイス制度を踏まえて見直すこと自体は、直ちに問題となるものではないとしています。一方で、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、応じなければ取引を打ち切る、と一方的に通告することは、独占禁止法上や取適法上、問題となるおそれがあります。言われるまま受け入れず、取引先が控除できない額を計算して、負担の分け方を話し合うのが現実的です。
登録した場合の納税額は?
結論: 登録して課税事業者になると、納税額は本則課税、簡易課税、特例のどれを使うかで決まります。2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間までです。
計算方法と特例の期限
| 方法 | 納付税額 | 使える期間と条件 |
|---|---|---|
| 本則課税 | 売上税額から仕入税額を引く | 条件なし |
| 簡易課税 | 売上税額に、事業区分ごとのみなし仕入率で決まる額を掛ける | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、届出が必要 |
| 2割特例 | 売上税額の2割 | 令和8年9月30日を含む課税期間まで。登録を受けなければ免税事業者だった事業者 |
| 3割特例 | 売上税額の3割 | 個人事業者の令和9年分と令和10年分だけ。法人は対象外 |
特例の期限の出典は、国税庁「令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)です。
売上900万円で並べた比較
売上900万円(税込990万円)、売上税額90万円で、売上のすべてが本則課税の取引先向けという最も影響が大きい場合を並べます(説明用の金額です)。
| 選び方 | 負担の額 | 使える期間 |
|---|---|---|
| 免税のまま | 値引きの要請は最大27万円(令和8年10月から) | 令和10年10月から45万円、令和12年10月から63万円と増える |
| 個人事業者の3割特例 | 納付税額27万円 | 令和9年分と令和10年分 |
| 簡易課税(みなし仕入率50%) | 納付税額45万円 | 条件を満たす間 |
売上の一部だけが本則課税の取引先向けなら、免税のままの負担は、その割合に応じて小さくなります。一方、登録後は請求書の様式や控えの保存が日々の仕事になるので、金額の差が小さいときは事務の重さも含めて決めます。
届出はいつまでに出す?
結論: 課税事業者になった届出は事由が生じたら速やかに、課税事業者の選択は課税期間の初日の前日までに出します。期限は届出ごとに違い、過ぎると適用が1期ずれます。
届出書ごとの期限
| 届出 | 出す場面 | 期限 |
|---|---|---|
| 消費税課税事業者届出書(基準期間用) | 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた | 事由が生じたら速やかに |
| 消費税課税事業者届出書(特定期間用) | 特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた | 事由が生じたら速やかに |
| 消費税の新設法人に該当する旨の届出書 | 資本金1,000万円以上の新設法人になった | 事由が生じたら速やかに(法人設立届出書に所定の事項を書けば不要) |
| 消費税課税事業者選択届出書 | 免税事業者が課税事業者になることを選ぶ | 選ぶ課税期間の初日の前日まで |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | インボイス発行事業者になる | 登録希望日は提出日から15日以降。令和11年9月30日までの日の属する課税期間中は、選択届出書が不要 |
出典は国税庁タックスアンサーNo.6629(令和8年4月1日現在)です。
期限を過ぎたとき
課税事業者選択届出書は、期限の日が休日に当たっても延びません。個人事業者が令和9年分から課税事業者になるなら、令和8年12月31日までで、過ぎると適用は翌課税期間からです。新たに事業を始めた場合だけは、その課税期間の末日までに出せば、その課税期間から課税事業者になれます(国税庁タックスアンサーNo.6531)。
2割特例か3割特例を使った翌課税期間は、その確定申告の期限までに簡易課税制度選択届出書を出せば、翌課税期間から簡易課税を使えます(国税庁「令和8年度税制改正特集」)。
よくある質問
年の途中で売上が1,000万円を超えたら、その年から消費税を納めますか?
課税事業者にならずに、インボイスを発行できますか?
取引先から、消費税分の値引きを求められました。応じる義務はありますか?
まとめ:売上の相手を数えて決めよう
- 課税事業者になる条件は、基準期間の売上、特定期間の売上と給与、新設法人の資本金、自分で選ぶことの4つです
- 登録の要否は、本則課税の課税事業者向けの売上で決めます
- 取引先が控除できる割合は、令和8年10月1日から70%、令和10年10月から50%、令和12年10月から30%です
- 届出は種類ごとに期限が違い、課税事業者選択届出書は課税期間の初日の前日までです
売上が1,000万円に近づいている方、取引先から登録を求められている方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近2年分の申告書と月ごとの売上、取引先の一覧を確認し、課税事業者になる時期と、免税のままの場合と登録した場合の負担を並べて整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」
- 国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」
- 国税庁 タックスアンサー No.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.6629「消費税の各種届出書」
- 国税庁「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問7(登録の経過措置)
- 財務省・公正取引委員会ほか「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和4年1月公表)





