消費税が払えないときは分割できる?猶予の申請期限と手順を解説
監修税理士法人Light UP 代表社員(税理士) 中村 清誉
消費税が払えないと分かったら、すぐに税務署の徴収担当へ連絡し、換価の猶予か納税の猶予を申請します。許可されれば、原則として1年以内の期間で分割して納められ、延滞税も免除または軽減されます。換価の猶予は納期限から6か月以内に申請しなければならないため、払えないと分かった日が申請の準備を始める日です。この記事では、制度の要件、放置したときの流れ、申請の手順、許可後の注意点を、国税庁の資料(2026年10月時点)で整理します。
消費税は分割で納められる?
結論: 分割で納められます。国税庁の猶予制度のうち、換価の猶予か納税の猶予が許可されると、原則1年以内の期間で分割納付できます。自動では適用されないため、申請が要ります。
分割納付ができる2つの猶予制度
国税庁は、期限内の納付が難しい場合に、申請と税務署長の許可を条件に、原則1年以内の期間で分割納付できる制度を設けています。主な制度は次の2つです。
- 換価の猶予:一度に納めると事業の継続や生活の維持が難しくなる場合の制度
- 納税の猶予:災害・盗難、本人や家族の病気、休業・廃業、事業の著しい損失などがあり、そのために一度に納められない場合の制度
猶予は税金が免除される制度ではなく、納める時期を後ろへ分ける制度です。黒字でも、要件を満たせば受けられます。
2つの制度の比較
売上の減少や資金繰りの悪化だけで、災害や休業のような出来事がない場合は、換価の猶予から検討します。
| 項目 | 換価の猶予 | 納税の猶予 |
|---|---|---|
| 使える場面 | 一度に納めると、事業の継続や生活の維持が難しくなるおそれがある | 災害・盗難、病気、休業・廃業、事業の著しい損失などがあり、一度に納められない |
| 申請の期限 | 納期限から6か月以内 | 国税庁の要件に6か月の期限はない(申請があることが要件) |
| 猶予の期間 | 原則1年以内(延長は合わせて最長2年以内) | 原則1年以内 |
| 他の国税の滞納 | ないことが要件 | あっても受けられる |
| 担保 | 原則必要。100万円以下・3か月以内・担保がないときは不要 | 同じ |
最初に連絡する窓口
連絡先は、所轄の税務署の徴収担当です。国税庁は、事前に電話で相談の日時と持参する資料を決めるよう案内しています。
消費税が払えないときの対応でよくある間違いは?
結論: 間違えやすいのは、納期限を過ぎてから動くこと、督促状を無視すること、払える額を決めずに相談に行くこと、他の国税の滞納を残すことの4つです。どれも延滞税や、申請そのものの可否に響きます。
納期限を過ぎてからの申請
換価の猶予は、納期限から6か月を過ぎると、原則として申請できません。延滞税は納期限の翌日から発生するため、期限内の申請でも、納期限の翌日から申請日の前日までの期間は延滞税が軽減されません(国税庁の猶予制度FAQ)。
督促状への無反応
督促状が届いたあとも、猶予は申請できます。国税庁の手引は、換価の猶予の申請中や許可後でも督促状は送られると案内しています。連絡を絶つと、手続きは差押えへ進みます。
猶予を受けずに少しずつ納める方法
猶予の許可を受けずに少額ずつ振り込んでも、延滞税は完納の日まで日数に応じて増えます。国税庁は、延滞税が免除または軽減されるのは猶予期間中と説明しており、差押えや換価が猶予されるのも許可を受けたあとです。
払える額を決めずに相談に行く
分割の額は、手元の資金から決まります。国税庁は、納付可能金額を手元資金から当面の資金繰りに必要な額を引いた額と説明し、1か月以内に支出が予定されている金額は運転資金として除くのが一般的としています。数字を持たずに相談すると、許可される分割計画とずれます。
他の国税の滞納を残したままの申請
換価の猶予は、猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないことが要件です。源泉所得税や法人税にも滞納があれば、猶予が認められないことがあります。申請の前に、滞納している国税の全体を洗い出します。
税理士が確認する順番
猶予の相談では、次の順で確認します。
1. 納期限と、そこから6か月の日付
2. 預金残高・売掛金・買掛金・借入の返済予定から出す納付可能金額
3. 他に滞納している国税と、地方税・社会保険料の状況
4. 換価の猶予と納税の猶予のどちらに当てはまるか
直近の試算表と預金通帳、納付書をお持ちいただければ、納付可能金額を計算し、換価の猶予と納税の猶予のどちらで申請するかを一緒に確かめます。
消費税を放置するとどうなる?
結論: 納期限の翌日から延滞税が発生し、督促状が届き、督促状を発した日から10日を過ぎると差押えができる状態になります。
延滞税は納期限の翌日から
延滞税は、納期限の翌日から納付の日までの日数に応じてかかります。令和8年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です(国税庁タックスアンサーNo.9205)。
納期限に300万円を納めていないと、日割で、最初の2か月で約1万4千円、3か月目以降は1か月あたり約2万3千円が加わります(説明用の金額です)。
督促状から差押えまで
納期限までに納付がないと、督促状が送られます。督促状を発した日から10日を過ぎても完納されないと、差押えができます(国税徴収法基本通達47条関係)。差押えの対象は、預貯金や売掛金などの債権、不動産、動産です。
猶予が使えるのはどんなとき?
結論: 換価の猶予は、事業の継続が難しくなり、誠実な納付の意思があり、納期限から6か月以内に申請すれば使えます。納税の猶予は、災害・病気・休業・著しい損失などの事実が要ります。
換価の猶予の5つの要件
国税庁の手引によると、次の5つの要件のすべてに当てはまる場合に、換価の猶予を受けられます。
- 国税を一時に納付すると、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
- 納税について誠実な意思があると認められること(その国税を優先して納付する意思があること)
- 猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
- 納期限から6か月以内に、換価の猶予申請書を所轄の税務署に出していること
- 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
1つ目の要件は、不要不急の資産を処分するなど経営の合理化を行ったあとでも、なお一度に納めると事業を休止または廃止させるおそれがある場合を指します。
納税の猶予の4つの事実
納税の猶予は、次の4つの事実のどれかがあり、そのために一度に納められない場合に受けられます。財産について災害を受けた、または盗難にあった。本人または生計を同じくする家族が病気にかかった。事業をやむを得ず休業または廃業した。事業について、利益の減少などにより著しい損失を受けた。
担保が要らない3つの場合
猶予は原則として担保が要りますが、次のどれかに当てはまれば要りません(国税通則法46条5項、国税徴収法152条2項・3項)。
- 猶予を受ける金額が100万円以下(換価の猶予では未確定の延滞税を含む)
- 猶予を受ける期間が3か月以内
- 担保として提供できる財産がないなどの特別の事情がある
他の税金や保険料がある場合
国税の猶予は、国税の分だけです。地方税は都道府県や市区町村、厚生年金保険料などは日本年金機構、労働保険料は都道府県労働局が窓口です(国税庁の猶予制度FAQ)。滞納は一覧にして同じ時期に相談します。
猶予の申請はどう進める?
結論: 払える額を計算し、申請書と財産の状況を示す書類を整えて、所轄の税務署に出します。申請はe-Taxか郵送でもでき、税理士が代理して申請することもできます(国税庁の猶予制度FAQ)。
申請書と財産の書類
猶予を受けようとする金額が100万円以下なら、猶予申請書と財産収支状況書を出します。100万円を超えるなら、財産収支状況書の代わりに、財産目録と収支の明細書を出します(国税庁の手引)。審査では、元帳、現金出納帳、預金通帳を確かめることがあります。補正通知書が届いたら、翌日から20日以内に補正しないと、申請を取り下げたものとみなされます。
審査で見られること
税務署の職員が、事業の継続が難しくなる事情、財産の状況、収支の実績と見込みを質問します。質問に答えない場合や、帳簿書類の提示を正当な理由なく断った場合は、許可されません。
猶予が許可されたあとの注意点は?
結論: 許可通知の分割計画どおりに納めることが最優先です。守れない見込みが出たら、遅れる前に徴収担当へ相談します。次の期の消費税も重なるため、先の資金繰りまで見ておきます。
分割計画どおりの納付
許可されると、猶予税額・猶予期間・分割の金額が書かれた通知書が届きます。その金額を、決められた日までに納めます。国税庁の手引は、分割納付計画のとおりに納めないとき、猶予を受けている国税以外に新たに納付すべき国税が滞納になったときなどは、猶予が取り消されたり、猶予期間が短縮されたりすることがあるとしています。やむを得ない理由があるときは、当初の期間が終わる前に申請すると、合わせて最長2年以内の延長が認められることがあります。
次の期の消費税
猶予の分割を払っている間も、次の期の消費税の納期限は来ます。分割分と次の期の納税の両方を入れた資金繰り表を作っておきます。
納税証明書と融資
国税庁の猶予制度FAQによると、猶予中の国税は、納税証明書(その1)の備考欄に猶予中である旨と猶予期限が記載されます。未納税額がないことの証明(その3)は、猶予を受けている税目については発行されません。求められたときは、提出先に代わりの書類を確認します。
次の期に払えなくならない方法は?
結論: 消費税の納税資金は、売上が入金されるたびに別の口座へ移して運転資金と分けます。中間納付の予定と、納税額が増える年を、あらかじめ資金繰り表に入れておきます。
納税資金を別の口座に分ける
消費税は、受け取った分が運転資金に混ざり、決算のころには残っていません。入金のたびに、前年の納税額から出した割合で別口座へ移します。
中間納付の予定を入れる
前年の確定消費税額が48万円を超えると、翌年は中間申告が必要です。48万円超400万円以下は年1回、400万円超4,800万円以下は年3回、4,800万円超は年11回です(国税庁タックスアンサーNo.6609)。
中間申告の対象期間に売上が前年より大きく減っているときは、仮決算に基づく中間申告で納税額を抑えられます(消費税法43条)。期限内に出さなければ、あとから出せません。
納税額が増える年
免税事業者から課税事業者になった年、簡易課税から本則課税に変わった年、売上が急に伸びた年は、納税額が前年より大きく増えます。個人事業者の2割特例は令和8年分の確定申告までで、令和9年分・令和10年分の3割特例では、2割のときより納付税額が増えます。簡易課税と本則課税のどちらが合うかは、仕入や外注の割合で変わるため、期の途中で試算しておきます。
よくある質問
消費税を滞納すると、すぐに差し押さえられますか?
換価の猶予はいつまでに申請すればよいですか?
猶予を受けるときは担保が必要ですか?
分割は何回まで認められますか?
まとめ:払えないと分かった日に税務署へ連絡しよう
- 分割で納める制度は、換価の猶予と納税の猶予。原則1年以内で、延滞税は免除または軽減される
- 換価の猶予は納期限から6か月以内に申請する。早いほど延滞税の負担が軽い
- 督促状を発した日から10日を過ぎると差押えができる。督促状のあとも猶予の相談はできる
- 許可後は、通知された分割計画どおりに納め、次の期の消費税の資金も用意する
消費税の納付が難しい方、督促状を受け取った方は、税理士法人Light UPの無料相談をご利用ください。直近の試算表と預金通帳、納付書を確認し、納付可能金額を計算したうえで、猶予の申請に必要な書類を整理します。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.9206「国税を期限内に納付できないとき」
- 国税庁 タックスアンサー No.9205「延滞税について」
- 国税庁「国税の納税の猶予制度 FAQ」(令和6年11月・徴収課)
- 国税庁「猶予の申請の手引」(換価の猶予)
- 国税庁 G-9「換価の猶予の申請手続」
- 国税庁 タックスアンサー No.6609「中間申告の方法」
- 国税庁 タックスアンサー No.6601(消費税の申告・納付期限)
- 国税庁 国税徴収法基本通達47条関係「差押えの要件」
- 財務省「国税を期限内に納付できないときは、どうしたら良いですか?」
- 国税庁リーフレット「インボイス制度に関するお知らせ 令和8年度税制改正特集」(令和8年9月)





