消費税の決算仕訳|税抜経理と税込経理
「決算で消費税の仕訳を入れたら、端数が合いません」。決算作業をされている方から、この時期によくいただくご質問です。仮受消費税と仮払消費税を相殺したときに、必ずと言っていいほど差額が残ります。
結論からお伝えすると、この差額は雑収入または雑損失として処理します。会計上の集計と、申告書で計算した納付額の計算過程が違うため、一致しないのが通常です。差額をゼロにしようとすると、かえって間違えます。
税理士法人Light UPでは、決算の仕訳を入れる前に申告書の税額を先に確定させる手順をご案内しています。会計から税額を求めるのではなく、申告で確定した税額に会計を合わせるという順序です。
この記事では、税抜経理と税込経理それぞれの決算仕訳、差額が生じる理由、税込経理での損金算入の時期、控除対象外消費税額等の処理、そしてインボイス制度で追加された論点までを整理します。
どちらの経理方式を採用しているかを先に確認する
結論: 決算仕訳の形は経理方式によって変わります。免税事業者は税込経理しか選べません。
税抜経理の考え方
売上や仕入の取引を記録するとき、本体価格と消費税を分けて記帳します。売上に含まれる消費税は仮受消費税等、仕入や経費に含まれる消費税は仮払消費税等という勘定に集まります。期中はこの2つの勘定に消費税が溜まっていくという構造です。損益計算書には消費税を含まない金額が並ぶため、売上高も利益も実態に近い数字になります。会計ソフトで税区分を設定していれば、この処理は自動的に行われます。手で仕訳を入れる場面はほとんどありません。
税込経理の考え方
消費税を本体価格に含めたまま記帳します。売上高も仕入高も、消費税込みの金額が並びます。仮受消費税等や仮払消費税等という勘定は使いません。期中の処理は簡単ですが、損益計算書の数字に消費税が混ざるという特徴があります。売上高が実際より大きく見えるため、他社との比較や年度間の比較をするときは注意が要ります。免税事業者はこの方式しか選べません。
途中で変えられるか
経理方式は継続して適用することが前提です。期の途中で変えると集計が混乱するため、変えるなら期首からになります。免税事業者が課税事業者になったタイミングは、方式を見直す自然な機会です。課税事業者であれば税抜経理のほうが実態を表すため、この機会に切り替える会社が多くなっています。会計ソフトの設定を変更するだけで対応できます。
税抜経理の決算仕訳
結論: 仮受消費税等と仮払消費税等を相殺し、差額を未払消費税等として計上します。端数の差は雑収入または雑損失で調整します。
基本の仕訳
期末に、仮受消費税等の残高から仮払消費税等の残高を差し引き、その差額を未払消費税等として計上します。仕訳としては、仮受消費税等を借方に、仮払消費税等と未払消費税等を貸方に置く形になります。この時点で、必ず端数の差が出ます。差額を雑収入または雑損失に振り替えて、両方の勘定の残高をゼロにします。中間納付をしている場合は、仮払金や仮払消費税等に計上されている中間納付額も精算します。
差額が生じる理由
会計では取引ごとに消費税を計算して積み上げますが、申告書では課税標準額を千円未満で切り捨て、税額も百円未満を切り捨てて計算します。計算の単位と切捨てのタイミングが違うため、一致しないのが通常です。差額をゼロにしようとして数字を動かすと、かえって誤りになります。差額が大きい場合は、税区分の設定に誤りがある可能性を疑います。売上規模にもよりますが、数万円を超えるような差額が出たときは、集計の内訳を確認したほうがよいと思います。
還付になる場合
仮払消費税等が仮受消費税等を上回る場合は、未収入金または未収消費税等として計上します。設備投資を行った期や輸出が中心の事業では、この形になります。還付は申告書を提出してから入金されるため、期末時点では未収の状態です。入金があった時点で未収入金を消し込みます。還付加算金が付いた場合は、その分を雑収入として計上します。
税込経理の決算仕訳
結論: 納付する消費税額を租税公課として計上します。損金に算入する時期は、原則として申告書を提出した日の属する事業年度です。
基本の仕訳
期末に、申告書で計算した納付税額を租税公課として費用に計上し、相手勘定を未払金とします。仮受消費税等や仮払消費税等の勘定を使わないため、相殺の作業は発生しません。仕訳が1本で済むという点が、税込経理の実務上の利点です。中間納付をしている場合は、期中に租税公課として処理していることが多く、その分は決算で追加計上する金額から除きます。
損金算入の時期
法人税基本通達9-5-1は、消費税の損金算入の時期について定めています。原則は申告書を提出した日の属する事業年度ですが、申告期限が到来していない期末において未払金として計上した場合は、その計上した事業年度の損金として扱われます。この取扱いを使うかどうかで、税額の計算が1期分ずれます。継続して同じ処理を行うことが前提です。毎期未払計上している会社が、ある年だけやめるという処理は認められません。
見え方の違い
税込経理では、売上高が消費税を含んだ金額で表示されます。売上高が10パーセント大きく見えるということです。あわせて、納付する消費税が租税公課として費用に並びます。損益計算書の見え方が実態とずれるため、経営判断の資料として使うときは注意が要ります。粗利率を計算する際も、税込の売上と税込の仕入で計算することになるため、税抜経理の会社と単純には比較できません。
| 場面 | 税抜経理 | 税込経理 |
|---|---|---|
| 期中の記帳 | 本体価格と消費税を分ける | 消費税を含めたまま記帳する |
| 決算仕訳 | 仮受と仮払を相殺し未払消費税等へ | 納付税額を租税公課と未払金に計上 |
| 端数の差 | 雑収入または雑損失で調整する | 生じない |
| 売上高の表示 | 消費税を含まない | 消費税を含む |
| 資産の取得価額 | 消費税を含まない | 消費税を含む |
控除対象外消費税額等の処理
結論: 課税売上割合が95パーセント未満だと、仕入に含まれる消費税の一部を控除できません。この控除できなかった部分の処理には、決められた手順があります。
なぜ生じるのか
課税売上割合が95パーセント以上であれば、課税仕入れに係る消費税額の全額を控除できます。95パーセント未満になると、個別対応方式か一括比例配分方式で按分することになり、控除できない部分が生じます。この控除できなかった金額が控除対象外消費税額等です。土地の売却や、社宅の家賃収入があると、課税売上割合は下がります。普段は関係のない会社でも、ある年だけ該当することがあります。
資産に係るものかどうかで分かれる
経費に係る控除対象外消費税額等は、その期の損金になります。問題になるのは資産に係るものです。法人税法施行令139条の4は、課税売上割合に準ずる割合が「百分の八十以上である事業年度」については、損金経理をすれば全額を損金に算入できると定めています。e-Gov 法令検索で条文を確認できます。80パーセントというもう1つの境目があるという点は、実務で見落とされやすい部分です。
80パーセント未満のとき
同条2項は、80パーセント未満の事業年度でも、棚卸資産に係るもの、特定課税仕入れに係るもの、そして「二十万円未満である場合」については損金経理で全額を損金にできると定めています。これらに当たらない部分が繰延消費税額等になります。20万円未満という基準は資産ごとに判定します。金額の小さい資産であれば、繰延べの対象にはなりません。
繰延消費税額等の償却
同条3項は、繰延消費税額等について「六十で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の二分の一に相当する金額に達するまでの金額」を損金にすると定めています。つまり60か月で償却しますが、初年度は半分しか損金にできません。この2分の1という部分が、実務で最も間違えやすいところです。翌期以降は、60分の12ずつを損金に算入していきます。
インボイス制度で加わった論点
結論: 免税事業者からの仕入れについて、経過措置で控除できない部分をどう記帳するかという問題が生じています。
控除できない部分の行き先
免税事業者からの課税仕入れについては、経過措置により仕入税額相当額の一定割合しか控除できません。税抜経理の場合、控除できない部分を仮払消費税等として計上することはできず、本体価格に含めることになります。同じ10,000円の支払いでも、相手が登録事業者かどうかで仕訳が変わるということです。会計ソフトでは、この区分に対応した税区分が用意されています。
資産の取得価額に影響する
控除できない部分が本体価格に含まれるため、資産を取得した場合は取得価額が大きくなります。少額減価償却資産の判定に使う金額も変わります。同じ資産でも、免税事業者から購入すると取得価額が上がるという結果になります。40万円未満という基準の境目にある資産では、この差が判定を分けることがあります。中古の機械や車両を個人事業者から購入する場面では、相手が免税事業者であることも珍しくありません。取得価額の判定に使う金額を、購入の段階で確認しておくと後の処理が楽になります。
経過措置の割合は下がっていく
控除できる割合は段階的に下がる設計になっています。割合が変わると、同じ取引でも本体価格に含める金額が変わります。会計ソフトの税区分が最新の割合に対応しているかを、期首に確認する必要があります。設定が古いままだと、控除額の計算が誤ります。会計ソフトの更新で自動的に切り替わる場合もありますが、過去に手で設定した税区分はそのまま残ります。期首の1回だけ確認する作業を、年間の予定に入れておくと確実です。
中間納付の処理
結論: 期中の処理と決算の処理をつなげておかないと、二重計上や計上漏れが起きます。使う勘定を先に決めておく形が確実です。
税抜経理の場合
中間納付をしたときは、仮払消費税等または仮払金として処理します。決算では、確定した年税額から中間納付額を差し引いた残りが未払消費税等になります。中間納付額を無視して仕訳を入れると、納付額を二重に計上することになります。年に何度も中間納付がある会社では、期中の各回について同じ勘定を使っているかを確認してください。仮払金で処理している場合は、決算で残高がゼロになることを確かめます。
税込経理の場合
中間納付をした時点で租税公課として費用に計上します。決算では、確定した年税額から中間納付額を差し引いた残りを追加で計上します。期中に費用処理している分を差し引かないと、費用が過大になります。中間納付の合計額を、決算作業の前に集計しておくのが確実です。納付書の控えか、口座の出金の記録から確認できます。
還付になる場合の中間納付
中間納付をした後に還付になる場合は、納付済みの金額が戻ってきます。税抜経理では未収入金または未収消費税等、税込経理では未収入金として計上します。還付の入金は申告書の提出後になるため、期末時点では未収の状態です。入金の時期は税務署の処理によって変わるので、資金繰りの見込みには余裕を持たせてください。
決算前に確認しておくこと
結論: 税区分の設定、課税売上割合、中間納付の計上場所。この3つを先に確認すると、決算仕訳の作業が短くなります。
税区分の設定を確認する
科目ごとに設定した税区分が正しいかを確認します。とくに、非課税や不課税の取引が課税として処理されていないか、軽減税率の対象が標準税率になっていないかという点です。税区分の誤りは、決算仕訳の差額として現れます。差額が大きい場合は、この設定を疑うのが先です。給与、保険料、租税公課、支払利息といった不課税・非課税の科目に、課税の税区分が付いていないかを確認してください。
課税売上割合を確認する
その期に土地の売却や有価証券の譲渡があると、課税売上割合が下がります。95パーセントを下回ると、控除対象外消費税額等の処理が必要になります。普段は関係なくても、その年だけ該当することがあります。決算作業に入る前に、非課税売上げの有無を確認しておくと、後戻りが減ります。有価証券の譲渡は譲渡対価の5パーセントを分母に算入するという扱いもあるため、金額の集計にも注意が要ります。
中間納付の計上場所を確認する
中間納付をどの勘定で処理しているかによって、決算の精算方法が変わります。仮払金、仮払消費税等、租税公課のいずれかに計上されていることが多いはずです。期中の処理と決算の処理がつながっていないと、二重計上や計上漏れが起きます。中間納付の回数が多い会社ほど、この確認は重要になります。前期の決算で担当者が使った勘定と、今期の期中処理で使っている勘定が違うという例もあります。決算のたびに残高の内訳を確認しておくと、こうしたずれに気づけます。
数字が合わないときの調べ方
結論: 差額の大きさで原因の見当がつきます。数百円なら端数、数万円以上なら設定の誤りを疑います。
端数の範囲かどうかを判断する
申告書の切捨ては、課税標準額で千円未満、税額で百円未満です。取引の件数が多いほど積み上がりますが、それでも通常は数百円から数千円の範囲に収まります。売上規模に対して不自然に大きい差額は、別の原因があると考えたほうがよいと思います。前期の差額と比べると、判断がつきやすくなります。毎期同じような水準に収まっているなら、端数の範囲と見てよい状況です。
税区分ごとに集計を見る
会計ソフトには、税区分ごとの集計を表示する機能があります。課税売上、非課税売上、課税仕入れ、対象外といった区分ごとの金額を確認すると、想定と違う区分に金額が入っていることに気づけます。科目と税区分の組合せが不自然なものを探すという見方です。給与や保険料に課税仕入れの区分が付いていれば、そこが原因になります。
前期と比較する
前期の税区分別の集計と並べると、変化した部分が浮かびます。取引の内容が変わっていないのに区分別の金額が動いていれば、設定が変わった可能性があります。期中に科目を追加したときの設定漏れが、よくある原因です。新しい取引先や新しい種類の取引が始まった期は、とくに確認する価値があります。海外との取引を始めた、社宅を借りた、不動産を売却した。こうした変化があった期は、税区分の判断が新しく必要になった場面でもあります。
事例:差額を無理に合わせようとした会社
小売業を営む会社から、決算の相談をいただきました。仮受消費税等と仮払消費税等を相殺したところ、20万円ほどの差額が出たという内容です。
売上規模は3億円ほどでした。
端数の差にしては大きすぎる金額でした。
内訳を確認したところ、原因は税区分の設定でした。従業員に支給していた通勤手当のうち、定期券の購入分について課税の税区分が付いていましたが、一部の科目で不課税として処理されていました。同じ性質の支出が2つの税区分に分かれていたことになります。
対応として、税区分を統一し、期首に遡って集計をやり直しました。修正後の差額は数百円に収まっています。
端数の差は必ず出るものですが、大きすぎる差は設定の誤りを示しているという点が、この事例から見えたところです。差額を雑損失で処理する前に、金額の妥当性を確認する手順を入れるようにしています。
よくある質問
決算で消費税の仕訳はどう入れますか?
相殺したときの差額はどうすればよいですか?
税込経理では、いつ損金になりますか?
控除対象外消費税額等とは何ですか?
繰延消費税額等はどう償却しますか?
免税事業者から仕入れたときの仕訳は変わりますか?
まとめ:申告で税額を確定してから仕訳を入れる
決算の消費税仕訳は、経理方式によって形が変わります。税抜経理では仮受消費税等と仮払消費税等を相殺して未払消費税等を計上し、税込経理では納付税額を租税公課として計上します。
相殺したときの端数の差は、必ず出るものです。会計では取引ごとに計算し、申告書では課税標準額と税額に切捨てが入るためです。この差は雑収入または雑損失で処理します。ただし、売上規模に対して差額が大きすぎるときは、税区分の設定を確認してください。
作業の順序としては、申告書で税額を確定させてから会計の仕訳を入れるのが確実です。会計から税額を求めようとすると、切捨ての処理で必ずずれます。
課税売上割合が95パーセントを下回る期には、控除対象外消費税額等の処理が加わります。資産に係るものについては、課税売上割合が80パーセント以上かどうか、20万円未満かどうかで扱いが分かれ、いずれにも当たらない部分は繰延消費税額等として60か月で償却します。初年度は2分の1までしか損金にできないという点は、条文を確認しておく価値があります。
インボイス制度が始まってからは、免税事業者からの仕入れで控除できない部分を本体価格に含めるという処理が加わりました。経過措置の割合は段階的に下がるため、会計ソフトの税区分の設定を期首に確認する運用をお勧めします。
税理士法人Light UPでは、決算作業と消費税の申告についてのご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第139条の4
- e-Gov 法令検索「消費税法」(昭和六十三年法律第百八号)第30条、第45条
- 国税庁「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(経理通達)
- 国税庁「法人税基本通達」9-5-1




