中古車の減価償却|耐用年数の見積り
「4年落ちの車を買えば1年で経費にできると聞きました」。決算前のご相談で、いまも定期的にいただく話題です。仕組みとしては誤りではありませんが、前提がいくつも抜けています。
結論からお伝えすると、この話が成り立つのは期首に取得して、定率法で償却して、事業に使っている場合に限られます。期の途中で取得すれば月割りになり、取得した月によっては半分も償却できません。
税理士法人Light UPでは、車両の取得についてご相談をいただいたとき、取得の時期と償却の方法を先に確認するようにしています。同じ車でも、この2つで結果が大きく変わるためです。
この記事では、中古資産の耐用年数を決める2つの方法、簡便法の計算式、4年落ちで2年になる仕組み、月割りの影響、資本的支出があるときの制限、そして事業に使っていることの説明までを整理します。
中古資産の耐用年数は2つの方法で決める
結論: 使用可能期間を見積もる方法と、法定耐用年数から計算する簡便法。原則は前者ですが、実務では後者が使われます。
条文の位置づけ
減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項は、使用された資産を取得して事業の用に供した場合の耐用年数について、「前二条の規定にかかわらず、次に掲げる年数によることができる」としています。e-Gov 法令検索で条文を確認できます。1号が使用可能期間の年数、2号が簡便法です。新品の法定耐用年数をそのまま使う必要はないという点が、中古資産の扱いの出発点になります。
1号の見積法
1号は「当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間…の年数」としています。あとどれだけ使えるかを見積もる方法です。ただし、見積りには合理的な根拠が必要で、実務では説明が難しくなります。専門家の鑑定や、明確な使用計画がなければ主張しにくいため、通常の中古車では使われません。使用可能期間を長く見積もれば耐用年数も長くなるため、納税者にとって有利になる場面も限られます。特殊な機械のように市場価格が形成されていない資産では、この方法によることもあります。
2号の簡便法
2号は、1号の年数を「見積もることが困難なもの」について、法定耐用年数から計算する方法を定めています。中古車のように市場に多く流通している資産では、使用可能期間を客観的に見積もることが困難とされ、この簡便法が使われます。計算式に当てはめるだけで年数が決まるため、実務では圧倒的にこちらです。中古車は同じ年式・同じ車種のものが多数流通しているので、その車だけの使用可能期間を客観的に見積もることはできません。この事情が、簡便法が使える前提になっています。
簡便法の計算式
結論: 法定耐用年数を全部経過していれば法定耐用年数の20パーセント、一部を経過していれば残りの年数に経過年数の20パーセントを足します。
全部を経過している場合
省令3条1項2号イは、「法定耐用年数…の全部を経過した資産」について、「当該資産の法定耐用年数の百分の二十に相当する年数」としています。普通自動車の法定耐用年数は6年なので、6年以上経過した車は6×0.2で1.2年です。ただし2年に満たないときは2年とされているため、結果は2年になります。10年落ちでも20年落ちでも、この計算では同じ2年です。経過年数がどれだけ長くても、2年より短くなることはありません。走行距離が極端に多い車でも、この点は変わりません。
一部を経過している場合
同号ロは、「法定耐用年数の一部を経過した資産」について、「当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の百分の二十に相当する年数を加算した年数」としています。式にすると、(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2です。残っている年数に、経過した分の2割を足し戻すという構造になっています。単純に残りの年数を使うのではなく、少しだけ長めに設定するという考え方です。経過年数が長いほど足し戻す分も大きくなりますが、残りの年数の減り方のほうが速いため、全体としては短くなっていきます。
4年落ちで2年になる計算
普通自動車を初度登録から4年経過した時点で取得した場合を計算してみます。法定耐用年数6年から経過年数4年を引いて2年、これに経過年数4年の20パーセントである0.8年を足すと2.8年です。1年未満の端数は切り捨てるため、耐用年数は2年になります。これが4年落ちの車が2年になる仕組みです。省令が定めた計算の結果であって、特別な制度ではありません。3年11か月であれば計算結果は2.83年で、切り捨てて2年になります。3年6か月なら3.2年で3年です。境目は、おおむね3年10か月あたりにあります。
経過年数は月単位で数える
経過年数は、初度登録から取得までの期間を月単位で数え、年に換算します。3年6か月経過していれば3.5年です。端数を切り上げたり切り捨てたりせず、月単位のまま計算に使います。この点を誤ると、計算結果が変わることがあります。車検証の初度登録年月から数えるのが確実です。
| 経過年数 | 計算 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 1年 | (6−1)+1×0.2=5.2年 | 5年 |
| 2年 | (6−2)+2×0.2=4.4年 | 4年 |
| 3年 | (6−3)+3×0.2=3.6年 | 3年 |
| 4年 | (6−4)+4×0.2=2.8年 | 2年 |
| 5年 | (6−5)+5×0.2=2.0年 | 2年 |
| 6年以上 | 6×0.2=1.2年 | 2年(2年未満は2年) |
※普通自動車(法定耐用年数6年)の場合。1年未満の端数は切り捨て。
1年で全額償却できる条件
結論: 耐用年数2年の定率法の償却率は1.000です。ただし期首に取得した場合に限られます。
定率法の償却率
定率法の償却率は耐用年数ごとに定められており、耐用年数2年の場合は1.000です。取得価額の全額が1年分の償却限度額になります。帳簿価額を全額償却できるという計算になりますが、備忘価額として1円を残します。この1円は、その資産を保有している限り帳簿に残り続けます。取得価額500万円の車であれば、1年目に499万9,999円を償却する計算です。売却や除却をした時点で、この1円も帳簿から落ちます。
月割りの影響が大きい
減価償却費は、事業の用に供した月から月割りで計算します。期首に取得すれば12か月分、期の中間で取得すれば6か月分です。3月決算の会社が3月に取得すれば、1か月分しか償却できません。取得価額500万円の車であれば、償却できるのは約41万円です。決算対策として期末に車を買っても、効果は限られます。
定額法を選んでいる場合
法人が車両について定額法を選定している場合、耐用年数2年の定額法の償却率は0.500です。1年目に半分、2年目に残りという計算になります。償却の方法によって、1年目に費用にできる額が倍違うということです。法人の車両は法定の償却方法が定率法ですが、届出により定額法を選ぶこともできます。自社がどちらを採用しているかを確認してください。
個人事業主は定額法が原則
所得税では、車両の法定の償却方法は定額法です。定率法を使うには、あらかじめ届出が必要になります。同じ4年落ちの車でも、個人と法人で1年目の償却費が変わるという違いが生じます。個人事業主が定率法を使いたい場合、その年の3月15日までに届出書を提出します。開業した年であれば、その年分の確定申告の期限までです。届出を出していなければ、自動的に定額法で計算することになります。
資本的支出があるときの制限
結論: 取得した資産に支出した資本的支出の額が取得価額の50パーセントを超える場合、簡便法は使えません。
ただし書の内容
省令3条1項のただし書は、「当該資産を個人の業務又は法人の事業の用に供するために当該資産について支出した…金額が当該資産の取得価額…の百分の五十に相当する金額を超える場合には、第二号に掲げる年数についてはこの限りでない」としています。簡便法の適用が外れるということです。この場合は、1号の見積法によるか、法定耐用年数を使うことになります。
車の場合に当たる場面
中古車を購入した後、事業に使うために大がかりな改造を行った場合が該当し得ます。冷凍設備の取り付け、車体の架装、内装の全面的な変更など、金額が取得価額の半分を超える工事です。通常の整備や消耗品の交換は資本的支出ではないため、この制限に当たることは多くありません。ただし、安価な中古車に高額な設備を載せる場合は確認が必要です。
判定の基礎になる取得価額
50パーセントの判定に使うのは、その中古資産の取得価額です。改造費を含んだ後の金額ではありません。取得価額100万円の車に60万円の改造を行えば、この制限に当たります。判定の分母を誤ると結論が変わるため、順序を確認してください。逆に、取得価額500万円の車に200万円の改造を行った場合は50パーセント以下なので、簡便法を使えます。金額の絶対値ではなく、割合で判定します。
事業に使っていることの説明
結論: 減価償却費が認められるのは、事業の用に供している資産だけです。使用の実態が確認できる記録が必要になります。
事業供用の要件
減価償却の対象になるのは、事業の用に供した資産です。取得しただけで使用していない資産は、償却を始められません。納車された日ではなく、事業に使い始めた日が起算点になります。年度末に購入して翌期から使う予定であれば、その期の償却費はありません。契約や支払いが済んでいても、使っていなければ償却は始まらないということです。納車の遅れで期をまたぐこともあるため、時期を見込むときは余裕を持たせてください。
使用の記録を残す
高額な車両については、事業に使っていることの説明を求められる場面があります。運行記録、訪問先の記録、走行距離。これらの記録があれば、事業での使用を示せます。記録がないと、私的な使用ではないかという確認を受けることがあります。とくに、事業の内容から見て車が必要かどうかが問われる場面があります。訪問先が多い業種であれば説明は容易ですが、来客中心の事業では説明の材料が薄くなります。日々の運行記録を残す習慣があるかどうかで、説明の負担が変わります。
私的に使う部分がある場合
個人事業主が事業と私用の両方に使う場合、事業に使っている割合で按分します。走行距離や使用日数など、合理的な基準で決めます。法人の場合、社長が私的に使う部分があれば、その部分は役員給与とされる可能性があります。法人で全額を損金にするなら、私的な使用がないことが前提になります。社用車として使う車を、休日に自宅で使っているという状態は珍しくありません。この場合、その部分については経済的な利益の供与とみなされる可能性があります。走行の記録を残し、社用と私用を区別できる状態にしておくことが備えになります。
リースとの比較
結論: 購入すれば減価償却、リースなら賃借料またはリース資産の償却です。資金の動き方が違います。
所有権移転外ファイナンス・リース
多くの車両リースは、所有権移転外ファイナンス・リースに該当します。この場合、税務上は資産の売買があったものとして扱われ、リース期間定額法により償却します。リース料をそのまま費用にできるわけではないという点は、会計の処理でよく問題になります。ただし、一定の要件を満たす少額のリースについては、賃借料として処理することも認められています。
オペレーティング・リース
リース期間の終了後に返却する形態で、ファイナンス・リースに該当しないものは、支払ったリース料が費用になります。中途解約の可否や残価の設定によって、扱いが変わります。契約の内容を確認しないと、どちらに当たるかは判断できません。契約書に記載された名称ではなく、実質で判定します。リース期間、中途解約の可否、リース料の総額と資産の価額の関係。この3点を見れば、おおむね区分がつきます。
判断の材料
購入すれば資産として計上され、償却資産税の対象にもなります。リースであれば、契約の形態によって処理が変わります。税務の扱いだけで決めず、資金繰りと使用期間で判断するほうが実態に合います。数年で乗り換える前提ならリース、長く使う前提なら購入という整理が出発点です。中古車を購入する場合、簡便法で耐用年数が短くなる分、費用として計上できる時期が早まります。この点は、リースにはない利点です。一方、まとまった資金が先に出ていくため、手元の資金に余裕があるかが前提になります。
実務で間違えやすい点
結論: 期末の取得、経過年数の数え方、そして償却方法の確認漏れ。この3つです。いずれも購入の前に確認できることばかりで、後から取り返しがつきません。とくに取得の時期は、償却費の額をそのまま左右します。
期末に買っても効果は限られる
決算の直前に車を購入しても、月割りにより1か月分しか償却できません。取得価額の全額が損金になるという理解で購入すると、想定と大きく違う結果になります。償却の効果を見込むなら、期首に近い時期に取得する必要があります。資金は先に出ていくため、時期の判断は資金繰りにも関わります。翌期の期首まで待てるのであれば、待ってから購入するほうが償却の面では有利です。ただし、その間の事業への影響も含めて判断することになります。
経過年数を年単位で数えてしまう
初度登録から3年8か月経過している車を、3年として計算すると結果が変わります。3年8か月であれば3.667年で、(6−3.667)+3.667×0.2=3.066年、切り捨てて3年です。3年として計算しても同じ3年になりますが、境目の月数では結論が分かれます。車検証の初度登録年月から、月単位で数えてください。
償却方法を確認していない
法人の車両は定率法が法定の方法ですが、過去に定額法の届出をしている会社もあります。個人事業主は定額法が原則です。自社がどちらを採用しているかで、1年目の償却費は倍違います。購入を検討する段階で、この確認をしておく必要があります。償却方法の届出は、資産の種類ごとに行います。建物は定額法、車両は定率法というように、種類によって違う方法を選んでいる会社もあります。固定資産台帳を見れば、これまでどの方法で償却してきたかが分かります。
事例:期末に4年落ちの車を購入した会社
3月決算の会社から、決算後にご相談をいただきました。3月中旬に4年落ちの車両を約480万円で購入されていました。
耐用年数は簡便法で2年です。
定率法の償却率は1.000でした。
ここまでは想定どおりですが、償却費は月割りになります。3月に使用を開始したため、1か月分です。480万円×1.000×1/12で、その期の償却費は40万円でした。
購入の時点では、480万円が全額損金になると考えておられました。実際には40万円です。残る440万円は翌期の償却費になります。
翌期は12か月分の償却ができるため、残額のほとんどが損金になります。時期がずれただけで、損をしたわけではありません。ただし、その期の税負担を抑える目的で購入したのであれば、狙いは外れています。
償却費の月割りは、取得の時期がそのまま結果に出ます。期末の設備投資では、この点を必ず確認してください。
よくある質問
4年落ちの車は1年で経費にできますか?
中古車の耐用年数はどう計算しますか?
経過年数はどこから数えますか?
改造した場合はどうなりますか?
個人事業主でも同じですか?
事業で使っていることをどう示しますか?
まとめ:時期と方法で結果が変わる
中古車の耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条が定める簡便法で計算します。(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20パーセント、1年未満は切り捨て、2年未満は2年です。普通自動車を4年経過した時点で取得すれば、2.8年となり切り捨てて2年になります。
耐用年数2年の定率法の償却率は1.000なので、計算上は1年で償却できます。ただし、これが成り立つのは期首に取得した場合だけです。減価償却費は事業に使い始めた月から月割りになるため、期末に取得すれば1か月分しか償却できません。
もう1つの分岐が償却の方法です。法人は定率法が原則ですが、定額法を選んでいる会社もあります。個人事業主は定額法が原則で、定率法には届出が必要です。定額法の償却率は0.500なので、1年目に費用にできる額は半分になります。
制限もあります。取得した後に支出した資本的支出の額が取得価額の50パーセントを超えると、簡便法は使えません。安価な中古車に高額な設備を載せる場合は確認が必要です。
そして、減価償却の対象になるのは事業の用に供している資産だけです。運行記録などで、事業での使用を示せるようにしておいてください。
税理士法人Light UPでは、車両の取得にあたっての時期と方法のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。
出典
- e-Gov 法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和四十年大蔵省令第十五号)第1条、第3条、別表第一、別表第十
- e-Gov 法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第48条の2、第56条、第132条
- e-Gov 法令検索「所得税法施行令」(昭和四十年政令第九十六号)第120条の2、第123条
- 国税庁「中古資産の耐用年数」




